これから、”ディズニーアニメ映画”、をみる。/映画編#13


世界中がレリゴー旋風に包まれてはや9年(…9年!)、ディズニーのアニメ映画は本日も快調にひとびとを魅了し続けています。そんなアニメ映画ですが、一部の作品に"ピクサー"と呼ばれる制作会社が入っていることはご存知でしょうか。
ディズニー好きもそうでないひとも、早速ですがクイズです。

【問題】
次の内、ピクサー配給の映画では無い物はどれか。
a.『美女と野獣』
b.『トイ・ストーリー』
c.『カーズ』
d.『ミラベルと魔法だらけの家』

正解はaとd

このクイズの必勝法を教えましょう。主人公がプリンセスであり、途中でキャラが急に歌いだしたら、ディズニー映画です。逆に主人公が人間じゃない(例:虫、車、ウサギ、ロボット)うえにそいつが喋りだしたらピクサー映画です。

さて、今回はディズニー映画の入門におすすめな作品を紹介しましょう。

ところで、「お姫様系アニメ映画はちょっと…なんかみるの恥ずかしいし…」みたいな不安は、単に罠。ディズニー映画は全力で観ていいコンテンツなので、まずはノリ方を掴みましょう。

ちなみにディズニー映画は配信サブスクサービスDisney+でぜんぶ観れます。今なら初月200円とか。たしか。

●ここから入ろうディズニー映画

ディズニー映画に馴染みが無い方におすすめしたい楽しみ方は、"音楽をきいてみる"です。ディズニーのアニメ映画は、音楽・サントラがヤバいのです。

そもそもディズニー映画はその黎明期から、アニメーションと音楽の同期に命を懸けてきました。無声映画から音つきの映画、ミュージカル式の映画の確立、すべてディズニーの功績に他なりません。とりわけ90年代の「美女と野獣」のヒット以降は音楽重視の設計=ミュージカル映画化に拍車がかかり、お陰で少しも寒くなくなったわけです。(「君の名は。」の新海誠も音楽を偏重しますが、氏の作品内ではキャラ本人が歌いだしたりはしません。君の前前前世から僕は君を探しはじめた、りするのはあくまで野田洋次郎です。)


〇『美女と野獣』(1991)

中でも分水嶺となる作品は91年公開の『美女と野獣』。有名な主題歌がこれ。

言わずと知れた『Beauty and the Beast』です。劇中で使用されるのは別バージョンで、エンドロールで流れるのがこのセリーヌ・ディオンバージョン。で、まぁとにかく歌が異常に上手い。エンディングのセリーヌ御大バージョンを聴くためだけでも観ましょう。ジャケ写にもなっているダンスシーンが、ほんとうに、素晴らしい。歌い上げ系の名曲に浸る感じを楽しみましょう。

さて、注目してほしいのは使用されている音の雰囲気です。
ざっくり特徴を並べると→1.やたら声が響いてる、2.電子ピアノを使ってる、3.ノスタルジックな感じ。

こうした特徴を持つ音楽はAORと呼ばれ、80年代後半から90年代にかけてアメリカで死ぬほど流行りました(と整理すると音楽オタクから批判がきそうですが)。『美女と野獣』の主題歌は公開当時流行していた曲調を露骨に意識しているのです。
もちろん『美女と野獣』以前のディズニー映画も豪華な音楽を使って人気を博した作品はありました。しかし、企画段階で流行の音楽ジャンルを積極的に盛り込むような傾向は、ここから始まっています。その証拠に、89年公開『リトル・マーメイド』の人気曲『Part of Your World』は従来のオーケストラ調のミュージカル曲となっています。『Beauty~』にある電子ピアノの展開やノスタルジックな雰囲気はほとんどありません。以降、『ライオンキング』に楽曲提供したエルトン・ジョンはじめ、ディズニー映画は世間で流行している音楽を戦略的に取り入れていきます。

併せて注目したい流れが、執拗なまでのローカライズ。近年のディズニー映画は世界標準はもとより、公開するそれぞれの国に合わせた調整を施しています。『アナ雪』に至っては25ヵ国語ものバージョン違いを作成し、都度専門家と歌詞の変更まで行っていました。
こうした狂気じみたこだわりが、『アナ雪』の全世界的なヒットを実現しています。

つまり、ディズニー映画で流れる音楽とは【ディズニーの賢い人間たちが世界市場を分析して確実に売れるために設計された】ものであり、【各国の人間それぞれにチューニングされた】ものなのです。こんなのいいに決まってます。


〇『ミラベルと魔法だらけの家』(2021)

2つ目のおすすめは、2021年公開の新作『ミラベルと魔法だらけの家』。サントラがもう凄まじく良い。(いつもフワッと異世界設定でやっていたディズニーアニメ映画において、ほとんど初めてキャラクターの出自に現実の政治が絡む脚本も大概良いのですが。。)

サントラのテーマは舞台設定にも合わせたラテン調のポップス。ここ数年で急激に盛り上がってきたラテンシーンの音楽を取り込んでいます。サントラアルバム収録のどの曲も"強い"ポップスなので、超高品質高純度のポップスがたっぷり楽しめますよ。

『ミラベル』が驚異的なのは、そのサントラの売れ方に他なりません。映画が公開した2021年11月の1ヶ月後(=ホリデーシーズン)、Disney+で映画の独占配信が始まります。並行して各種サブスクにサントラが解禁されると、tiktokでのバズり&配信視聴の拡大によりサントラがメガヒット。アメリカのビルボードチャートで8週連続1位の快挙を成し遂げるに至ります(過去5年でこれに匹敵するのはテイラー・スウィフト『Folklore』の同じく8週。凄すぎて笑ってしまうレベル)。完全ネット主導のバズりでアナ雪に次ぐ成功を収めており、これまでの常識を覆す異常事態。

参考までに↓


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以上、入門向けディズニー映画でした。振り返っておくと、


1. ディズニー映画は単にクオリティが高いのでみるべき。
2. サントラの質がバカみたいに高いので音楽も楽しもう。
3. 最新音楽シーンはディズニー映画のサントラに詰まっている。


ところで、ディズニー映画を観るとき吹き替えか字幕で迷う問題があります。それはまたどこか別の機会で。

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