蒼天航路と塩野七生
Facebookで流行っている7days Book Cover Challengeという7日間毎日好きな本の表紙を写真にとってUPするというバトンが回ってきた
とうとう回ってきたか。
これは流行らせて裏でマーケティングでもやってるのでは?と思いつつ紹介する本でその人の個性が出るのが面白い。この手のバトンは普段は乗らずに自分のところでストップさせてしまうのだけれども乗っかってみることにした。
好きな本というのは人に進めた時に貸してしまいそのまま帰ってこないことが多い。なので好きな本ほど手元にない。きっと後半はネットで拾ってくることになるだろう。
コメントしないで写真だけあげるのがルールらしいがせっかくなので選んだ理由も書いておこうと思う。
日本で歴史好きという人と話すと大概語り出すのは「戦国時代」「幕末」「三国志」の話。他の国の歴史にも興味がある自分としてはヨーロッパ史などに話をふると途端にアウェーな雰囲気になってしまいもやもやすることが多い。
最近はどうなっているのかは知らないが自分の学生時代は高校から日本史組と世界史組にわかれてしまうので日本史組はなおさらだった。少し偏見になってしまうが世界史に触れる機会の少なかった人ほど価値観の多様性に関しての視野が狭いことが多い気がしてしまう。
DAY1で紹介するのは塩野七生の「ローマ人の物語」
自分の中でこの本のポジションは漫画の三国志で例えると「蒼天航路」
青春時代に「三国志」好きが最初にとおる漫画はきっと横山光輝のものだろう。あの作品が儒教的な倫理観の理想にしあげた劉備玄徳を主人公にした「正史」だとすると「蒼天航路」は曹操視点から代表的なエピソードを極端に違う解釈で描いている。
「ローマ人の物語」はというとギボンの「ローマ帝国衰亡史 」がキリスト教の倫理観をもとに解釈したローマの正史だとすると、キリスト教の倫理観を排除してローマ通史を描いたらどうなるかという試みだったのだろうと思う。
正史寄りの知識が多かった身としてはこれを読んでなるほどこういう解釈もあるのかと勉強になった。学生時代に出会えてよかったと思う一冊、いやシリーズだった。
歴史を通じて社会の成り立ちを知ることは、今生きている時代を俯瞰で見るために必要だと思う。この作品も歴史学者からはツッコミどころが色々あるらしい。しかし多様な歴史解釈の視点を持つという意味の置いてこの作品は自分に影響を与えた。
読みながらローマ史からはずれてキリスト教的倫理観から国民国家を作っていったフランス革命以降の欧米諸国と西洋的国民国家の体裁は取り入れながらも儒教的倫理観が色濃いアジア諸国で国民国家の性質が違うことなどにも思いを馳せた。
そのあたりは今度この間監督インタビューを行なった「愛国者に気をつけろ!鈴木邦男」の紹介をする時にでも書こうと思う。