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『フタリノセカイ』飯塚花笑監督トークレポート(’22/06/05)

『フタリノセカイ』飯塚花笑監督トークレポート(’22/06/05)

6月5日上映後、本作の脚本・監督を務められた飯塚花笑さんをお招きし、舞台挨拶を開催しました!
とても気さくで、笑顔が素敵な飯塚監督。お一人お一人のお話に誠実にお答えする姿に、皆さんうなづきながら熱心に聞き入っていらっしゃいました。

トランスジェンダーの真也と、パートナーのユイの10年の愛を描いた本作。性別を変更するために日本では必要な手術や、取り巻く環境など社会的背景を描きながらも、悩み、迷い、ぶつかり合いながら紡がれるフタリの愛は、性別という区別や、人をカテゴライズする枠から解かれていく光をそっと届けてくれる。全ての人に届けたい作品です。

  1. 映画「フタリノセカイ」について

  2. 飯塚花笑監督アフタートーク

  • 映画製作の背景について

  • ご来場の皆様よりQ&A


1. 映画「フタリノセカイ」について

(C)2021 フタリノセカイ製作委員会

愛に性別なんて・・・
ただ一緒に幸せになりたいと願ったフタリの十年間。
結婚もできない。子どももできない。愛し合う二人の愛は可能か?

出会った時から互いに惹かれあった、ユイとトランスジェンダーの真也。 恋愛し、いずれ結婚して家族をつくり、共に人生を歩んでいきたいという願い。 だが、その願いを叶えるには、ひとつひとつクリアしなくてはならない現実があった。 時にすれ違い、別々の道を歩むが再び出会ったフタリ。愛を確かめあい、ある決断をする。 それはもしかすると常識を越えているのかもしれない。 だが、安らぎに満ちたフタリには、確かに感じる未来があった・・・。

監督・脚本を務めたのは、飯塚花笑。自身もトランスジェンダーの彼は、ぴあフィルムフェスティバル PFF アワード 2011 において自伝的作品『僕らの未来』で審査員特別賞を受賞、国内外で高い評価を受けた。
以降は、彼だからこそ描き出せる世界観で映画制作を続けている。ーHPより

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シネマ・チュプキ・タバタ】にて
 6月14日(火)迄上映中  17時15分~18時38分 
 
(2021年製作/83分/PG12/日本)※日本語字幕・音声ガイドあり
  『フタリノセカイ』 | Coubic

公式HP:https://futarinosekai.com
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飯塚花笑監督

2.飯塚花笑監督アフタートーク

飯塚花笑監督(以下「監督」)
本日はお越しいただきありがとうございます。
「フタリノセカイ」の監督を務めました飯塚花笑(イイヅカ カショウ)と申します。
短い間ですがどうぞよろしくお願いします。

<映画の製作背景について>

この作品は2019年の6月に撮影しまして、そもそもなんでこの映画を作ろうと思ったかというと、私自身がトランスジェンダーで20代の半ばにさしかかる時期になって、徐々に結婚を経験したり、子どもを授かったりする友人がちらほら出てくるようになったんですね。

そんな中で、なんとなく「結婚こそ、子どもを持つことこそ幸せ」というような同調圧力を感じるようになりました。

僕はトランスジェンダーなので、血のつながった子どもを授かることはできない、かつ今戸籍を変更すればトランスジェンダーの場合、異性のパートナーと結婚することはできますが、そうでない限り結婚できないということになるんですね。

今回の映画の真也もそうなんですけど。そうなったときに
「結婚もできない、子どもを授かることもできない、それでも二人なりの幸せを掴んでいく」
という、ある意味トランスジェンダーの幸せのロールモデルというか、今までなかったような形の幸せにたどり着くような映画を作りたいと思いまして、今日観ていただいた「フタリノセカイ」という作品を制作することになりました。

<ご来場の皆様よりQ&A>

Aさん)(監督は)女の人から男の人になったんですか?

監督)そうです。もともと生まれたときの性別は女性で、そこから男性に移行しました。

Aさん)自分の気持ちが女の子じゃないなとか、違うなとか、不思議だなとか、いじめが怖いなと思ったあったことはありますか?

監督)まず自分が女性としての肉体を持って生まれて、一番幼少期の記憶でいうと、男女の身体の違いって、大体幼少期にわかる経験があるかと思うんですよね。
ほかの子どもだったり、両親だったりの身体から、自分は女性の形をしているほうに属するんだということを認識したときに違和感を感じるというか、それが最古の性別に違和感を持つきっかけでしたかね。

それから中学、高校生となって、まだ当時はLGBTという言葉が全然浸透していなかったし、今ほど理解もなかった時代背景もあったので、やっぱり教員だったり、クラスメイトから差別的な言葉やイジメを受けた経験はありましたね。

・・・

Bさん)映画のシーンの中に(トランスジェンダーの真也のパートナー・ユイが、真也の母に対して)「何もわかっていないなら、私たちに知ったような口をきかないで!!」と言うシーンがありましたよね。
あれを見たとき、自分もわかっているようなつもりでいたけど、全然違うなと気づかされた。一般の人はどういう風に、少なくともこういう感じで接して欲しいとかあれば伺いたいです。

監督)もちろん差別的なことを言われれば傷つくし、それはLGBTであれそうでないシスジェンダー(心の性(性自認)と身体の性(身体的性)が一致している状態、人)の方であれ、どっちみち身体のことを何か言われることや、差別的なことを言われるのは嫌だというのと同じだと思うんですよね。
特別に何か気にすることでもないのかなという気がしています。
ただ、知らないと傷つけてしまうということはあると思います。ただ単に、最低限の知識さえみんなが持っていれば、それを伝えるのが教育機関なのかわからないですが、ちゃんとLGBTや性的少数者の存在があって、彼らがこの世の中がいるっていう前提の中で日常が回っていけばいいなっていう思いがあります。

・・・

映画シーンより、見つめ合う真也とユイ

真也役のキャスティングの理由、
当事者が役者として活躍していくために必要なこと

Cさん)これまで映画の中でトランス女性の方を男性の俳優さんが演じることが多かったと思うのですが、今回トランス男性を男性の方が演じるようにキャスティングされた理由は。
当事者がその役を演じられるようになったほうがいいという風潮があるかと思いますが、当事者側はどのようにオーディションに参加するとか、自分をアピールしていったらいいのかということに疑問を感じましてお聞きしたいです。

監督)今回シスジェンダーの男性がトランスジェンダーの男性を演じることになった経緯が、トランスジェンダーの中にも色んな身体の状態の方がいると思うんですね。
僕は治療をしているので初見でパッと会った方に、女性だと思われることはほとんどないんですよ。てなると、シスジェンダーの男性が演じるということも可能になってくると思う。身体の状況的には。今回当事者の男性をキャスティングすることも考えたんですが、実は(真也役の)坂東くんの提案があったときにすごく彼は、これは当事者間でしかわからない繊細な話になってしまうかもしれないんですが、ちょっとトランスジェンダーぽい声をしていたり、今は年齢が上がっているのでもう少し男らしいというか、見た目の様子も変わってきているんけど、当時まだ21、2歳とかで少し幼さゆえの中性的なニュアンスがあったので、彼だったらこの役と向き合ってトランスジェンダーを体現できるなと思って坂東くんをキャスティングさせていただきました。

後者の質問ですが、私自身、当事者の目線からいってもこれから当事者がキャスティングされていってほしいなという思いはあります。なぜならトランスジェンダーが身体的な特徴であったりハンディキャップによって、普段役をつかめない状況があったりするんですね。あとは昨今パワハラとか映画界の中で色んな問題があったりしますが、やっぱりセクシャルマイノリティにとっても非常に生きづらい業界であると思いながら僕も活動しています。
その中で徐々に、まず前提として女性が生きづらいっていうそもそもの男女二元論の中で言っても、この業界はまだまだ体質を改善しなければならないなと思いますし、セクシャルマイノリティにとっても、もっともっと生きやすい、風通しのいい業界になった上でちゃんとキャスティングされていくような仕組み作りがこれから必要かなと思っています。
次の作品もまたトランスジェンダーを描くことになっているんですけど、当事者のキャスティングができるように色々と奮闘している最中です。

・・・・

真也役の坂東龍汰さん

トランスジェンダーでもそうじゃなくても、
同じ世界に生きている人間。だから何も気にしなくていいんだ。

Dさん)娘が以前にこの映画を見て、その話しを聞いていい映画だなと思い今回娘とその友達と見にきました。話しを聞いただけでもっと観たいなと思ったのでこの田端の映画館で観られて、監督のお話しを聞けてよかったです。また次回の映画も楽しみにしています。

監督:ありがとうございます。ここまで生きててよかったです(笑)
   励みになります。嬉しいです。

監督:僕も最近びっくりするんですけど、子育てをしている友人がいるんですけど、なぜか大人のほうがLGBTの知識を持っているから男女というのを気にしなくなっていて、子どもだとなぜか、先生がいうのか周りの目を気にするのか、「なんで女の子なのに青が好きなの?」とか幼稚園でそういうことを学んでくるっていうんですよ。子どもを持つ友人たちが。この男女二元論みたいな話しはどこから湧いてでてくるのかなと思うですけど、徐々に当事者が声をあげるようになってそういう教育の部分でも活躍しているのも見ているので、変わっていくといいですよね。
僕も本当に女の子の友達ばかりで、男の子の中にいるといじめられちゃうからなるべく女の子の中にいて隠れて生きていた時期はあったんですけど、面倒くさいですよね(笑)色々女子特有のってあったりしますよね。
そういうのもなく、ただ趣味が共通していれば男の子女の子関係なく一緒にいられるとか、そういう風になっていくことを、映画を通してこれからやっていきます。

Eさん)最初坂東さんが好きで気になって観に行きました。LGBTについては知っていたが、映画をみてちょっと意識が変わったというか、もし友達とかにいたらもう少し気遣えるかなと思って。。。
とても感動し、みんな平等にいたいなと思い、そのことをお母さんに話しました。今回また映画を見て感動しました。

監督:「いいですね。親子でそんな話しができるってとても素敵です。」

・・・・・

会場はとてもあたたかな空気に包まれた時間となりました。
上映後のサイン会でも、皆さま監督へご感想や思いを伝えられ、笑顔いっぱい。映画がこれほど誰かの励み、救いになるということ。改めて映画の力を感じました。
ご来場いただいた皆様、そして飯塚監督、本当にありがとうございました!そして監督の今後の作品もぜひ注目していきたいですね。

ロビーの壁にサインを頂きました!



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シネマ・チュプキ・タバタ】にて
 6月14日(火)迄上映中  17時15分~18時38分  ※水曜休み
 
(2021年製作/83分/PG12/日本)※日本語字幕・音声ガイドあり
  『フタリノセカイ』 | Coubic

公式HP:https://futarinosekai.com
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