オーバー・フェンス(2016年/山下敦弘監督)を観ての感想
映画ファンの一部から、めっちゃ高い評価を得ていると評判だった『オーバー・フェンス』をようやく観る事ができた。@Amazonプライムビデオ
監督は、山下敦弘監督。
彼の作品としては、一番有名なのは『リンダ リンダ リンダ(2005年)』だろう。
自分が観たなかで一番好きなのは『苦役列車(2012年)』。 森山未來にたまげた。お薦め!(この作品は以前はアマプラでは見れたものの今は見れない。残念)
さて。
本作だが、"一部"で評判になっているわけがよーくわかった。
あくまでも一部であって、普遍的には評判にならないわけがちゃんとある。
ネタバレがない範囲で説明すると、
この話は2つの軸があって、
1つは、激しい女と、受け身のようでいて頑なな男の化学反応の話。
もう1つは、函館という、大都会でも田舎でもない土地の、職業訓練校という特殊な環境に集う、バックグラウンドの異なる人々のなかにうごめくものの話。
大きな事件など起こらず、普通の人達の、普通の話。
そう言ってしまえばそれまでだが、そんな普通な話だからこそ、メリハリをつけて、きっちり映画として成立させている監督の手腕が際立っている作品といえる。
普通の話は、なかなか普遍的に面白く思ってはもらいにくい。しかもこの映画は、普通の話じゃなさそうな空気が流れているから、肩透かしのように感じる人も多そう。ここが好みが別れそうな最大のポイント。
蒼井優演じる女性のキャラクターも好みが別れそう。なかなか強烈ではあるから。自分自身は、蒼井優はかなり好きな部類の女優さんだが、今まで見たことがない彼女を見れて楽しかった。
もう1つ好みが別れそうなのは、ラストの描き方。細かくは触れないが、自分としては驚きがなく、もう一捻り欲しかったなあという気が。
* * *
自分が一番興味を惹かれたのは、職業訓練校という舞台。
年齢も、バックグラウンドも、通っている目的もバラバラの面々。
子どもではないので、多少周りに気を使いつつも、完全な大人でもないため、他のメンツに対してマウントをとりにいく生々しい面もあったりする。大事件が起きるわけではないが、なんとも不穏な、見ていて少し息がつまる空気が常に流れていて、そこから目が離せなかった。
職業訓練校での主人公の同級生を演じるキャストも良くて、特に、元営業の松田翔太と、ちょっと若手の松澤匠。人当たりの良さもありつつ、時によっては主人公に対してプレッシャーをさらっとかけてくるキャラクターがハマっていた。
函館というロケーションもいい。海が近くに感じられて、坂もあって。
自転車の使い方も上手い。DVDジャケットやチラシでも使われている、2人乗りのシーンも印象に残る。
「山下敦弘監督、良い仕事しますな~。」
観終わったあとに、ゆっくり反芻しながらほくそ笑むことができる映画だ。
もちろん、缶ビールを飲みながら(この映画を観ると確実に缶ビールを飲みたくなる)。
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