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2ヶ月間で北海道を一周した話-1日目 羊蹄山-

午前4時。

私はフェリーから小樽に降り立った。
正確にいうと、車を運転してフェリーから降りた、だが。

約10年ぶりに降り立つ北海道。
小樽なんて全然きてなかったのに、妙に懐かしい気持ちになる。

自分が自分であることにちょっとだけ気づけた土地。

そんな感慨が少しだけ心を掠めるけれど、そんな悠長なことは言っていられない。後ろから次々と下船した車に追い立てられるのだから。

追い立てられて下船した後に向かう先はそう、羊蹄山である。

コースタイムを考えると、6時には登り始めないと明るいうちに降りられないかもしれない。

そんな焦りもあったため、北海道に降り立った感慨もそこそこに、できるだけ早く移動できるよう、気持ち強めにアクセルを踏み込んだ。

羊蹄山に向かうまでの道のりはさすが北海道、という感じで道も広ければ人も少ない、ドライブをするには格好の道路だった。

ゴールドペーパードライバーの方は、NOCをかけた上で北海道をレンタカーで回ることをおすすめしたい。

なぜNOCが必須なのか?
それは野生動物との接触が多いから。
私も羊蹄山に向かう途中で、鹿がなん度も道路を渡ってきた。
目端に映れば減速したり、避けたりすることもできるが、ゴールドペーパーの方は衝突する可能性もあるだろう。

なので、衝突することを前提にして、被害を最小にする準備をしておいた方が良いだろう。

そんなことを考えながら運転をしていると、
山のアップダウンを超えて、羊蹄山が見えてくる。

蝦夷富士、とも呼ばれるのも納得するほどの雄大な、裾野の広がりがあり、全てを包んでくれるような雰囲気のある、壮大な懐の深い山。

それが私が羊蹄山を見て思った印象だ。

富士山と同じで、近づけば近づくほどスケールがデカすぎて何がなんだかわからなくなってしまう。

ちょっと離れた丘の上から見るくらいが、鑑賞にはちょうど良い。

私が今回選んだのは倶知安コースと呼ばれる、羊蹄山登山の中では比較的メジャーなルートだ。

大体コースタイム9時間くらい。
普段から山登りに慣れている人であれば日帰りできる範囲かつ、難易度の高い道でもないらしい。

ただ、結論からお伝えすると、私はこの登山で盛大にコケ、その瞬間に左の中指の靭帯をおそらく痛めたと思う。
旅初日だったこともあり、医者にかかるのが面倒だったのと、診断が下されるのが怖かったのだ。

ちなみにこの中指の痛みは1ヶ月ほどは続き、旅を終えた今でも若干の違和感が残る状態になっている。

ここから得た教訓は、「違和感を感じたら必ず病院に行け」である。

ただ、こんな苦い気持ちも一部味わった。
だが、羊蹄山登山は頂上近辺にたどり着いた時の開放感と幸福感が今までの登山と比較にならないくらい大きかった。

初めて北海道で行ったソロ山行だったからかもしれない。

もしくは、熊の恐怖に駆られながら登ったからかもしれない。

何が原因かは全くわからなかったのだが、ふと空がひらけたとき、他のどのやまでも感じられなかった、爽快感があったのだ。

もしかしたら、北海道まで来れちゃった自分に酔っていたのかもしれない。

でも、誰がなんと言おうと、私にとって羊蹄山は清々しさを感じられる山になったのだ。

今後、辛い、しんどい、投げ出したい。
そんな気持ちになった時は、あの羊蹄山で感じた風と、清々しさを思い出したい。

ほんの少しだけ、そんな嫌な現実が風に流されていく。そんな気分になる。


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