霧の中から現れた島 Alert Bay 美しい自然と先住民の歴史 / バンクーバー島探検その6
Port McNeilからフェリーで30分ほどで行ける小さな島。そこにAlert Bayという小さなコミュニティがある。
Port McNeilのInformation Centreに立ち寄った時、Alert Bayのチラシを見てなにか惹きつけられるものを感じた。受付のはつらつとした若い女性に聞くと、正味2、3時間で町を観光できるという。小さなトレイルもあり日帰りのピクニックにぴったりだ。とびきりの笑顔でフェリーの時刻表なども渡してくれ、こちらも嬉しくなる。カナダでのこういうちょっとしたやりとりがほっこりする。
朝11時ごろのフェリーに乗る。
駐車場の仕組みが今ひとつわからず、他の観光客も
「お金を入れたけど駐車券が出てこない。支払いができない」
と困っているが、それはカナダ。なんとかなるさ、と1時間分だけ前払いして車を停めた。なんか言われたらあとで超過料金を払えばいい。
これが、のちにちょっとしたトラブルになる。
このせいで出航が遅れたのだろうか?
だが、これほどの濃霧もまた面白いので、フェリー乗り場を観察しながら過ごす。客は、観光客らしい人たち、地元の人、引率された小学校低学年ぐらいの子供たち。夏休みなのでDaycareのDay tripなんだろう。
遅れて到着したフェリーから車が次々と降りてくる。救急車や大型のバスやトラックなど、生活物資を運ぶんだろう。面白かったのが、いずれの車の運転手も女性だった。日本は女性の救急隊員は少ないがこちらではよく見かける。
ようやく出航だ。視界があまりないので、霧笛を鳴らしながら進む。
こんなの初めて見たわー。と大喜び。
徐々に霧が晴れてくる。
すると、突然フェリーのすぐ傍に、黒っぽい無数の何かが浮かんだり沈んだり。まるで大きな泡がぶくぶくしている感じなのだが、よく見るとそれはラッコの集団であった。
こんな至近距離で野生のラッコ初めて見たわ!
と、大興奮。だが、フェリーがあっという間に彼らのそばを抜き去っていった。
そこにはラッコが、ケルプとともに浮かんでいたのだった。(ラッコは基本集団で過ごしているらしく、離れオスが集団から少し離れたところにいるそうだ)
息子は一緒に盛り上がってくれないので、一人ニヤニヤしていると、おっさんが(失礼)話しかけてきた。おっさんは、これからAlert BayのMuseumでWaving(かごあみ)をやるそうだ。
この近くの島に住んでるそうで、島の歴史とかを話してくれた後、
「姉がボートに乗ってたらシャチが寄ってきたんだ。その動画を見せてあげる」
といって、確かにシャチがボートのすぐそばにきている。なんでも、この湾で遭遇したとか。さすが、アイランダー。女性でもボートを所有してるのか。やっぱ私も買わないとだな、ボート。
結局、おっさんがなんのためにWavingをやりに行くのかは聞けないまま、彼は車を下ろすために去っていった。ちなみに、日本の縄文時代にも籠や敷物などの「編み物」は多数存在した(はず)。分解してしまうので実物はほとんど残っていないが、編み方の研究をしている人たちもいて博物館などでは編み物講座をよく開催している。私は、あんまり興味はなかったが。
霧が晴れると、島は目の前に迫っていた。
Board Walkの行き止まりに博物館がある。
この島は、First Nationの居住エリアと非First Nationの居住区があるが、観光化されているので「ここから先立ち入り禁止」の看板はない。
Victoriaの博物館にBig houseが展示されているが、First nationの土地に建てられているものは初めて見た。中が博物館になっている。
中のほとんどの遺物が撮影禁止。しかし、儀式用の木製の素晴らしいヘッドドレスや衣類などが数多く展示されている。カナダ政府がFirst Nationのポトラッチを野蛮なものとして禁止した際に没収したヘッドドレスが返還され展示されているのだ。技巧が凝らされており、まさに芸術品なのだが人口も減って文化の継承も困難ななか、技術を受け継いでいる製作者はもう少ないのではないだろうか。
この博物館は、私が今までBC州で見てきたなかでは一番まとまった展示品がある。(BC博物館、UBC人類史博物館は展示中止中だったため)また、First Nationの土地にあり彼らによって運営されている点で非常に意義があると思う。
博物館ではかごあみ講座をやっていて、Ferryで会ったおじさんも参加していた。イベントとして踊りの披露もあるようだが、時間が合わず見れなかった。
博物館の目の前には、オレンジシャツが。
ここには、大規模なresidential schoolがあったのだ。建物は取り壊されて跡形もない。
館内にもResidential schoolに関する展示や説明があるものの、あまり生々しい記述は見られない。語り部も減ったり思い出すのも辛いのだろうか?
あるいは、このアウシュビッツを彷彿とさせる風景は観光にはそぐわないのだろうか。
クルーズ客もあたりを散策している。ボートで遊んだり、フェリーに乗ったり。湾内はヨットやボートが行き交っている。釣り船も多数。
帰りのフェリーも遅れたので、少しだけ街をぶらぶらする。
時間があまりなかったので、島一周はできなかった。
町、博物館、トレイル全部回ったら丸一日かかるだろう。
暖かい日で、のんびりゆったりできた。
霧や島や山々、海、船。写真ではなかなかお伝えできないものがある。
ラッコや運が良ければシャチなどは、BCferryに乗ってさえいれば見られるだろう。ラッコは、TofinoでWhale Wachingに参加した時よりも至近距離だった。あの海域にいつでもいるらしい。
もし、Islandにこられる機会があれば、実際に訪れて欲しい場所の一つだ。