-Return-で私が考えていたこと(前編)

こんにちは。今回は新作-Return-の経緯について説明していこうと思います。私が何を考えどのような道筋を辿ってきたかを説明することで、誰かしらの演技作りの参考になるのでしたら嬉しい限りです。この記事では発端となった2018年10月から、2019年5月までの話を書いていこうと思います。

1.JJF2018の反省〜私の弱点〜

私に詳しい方はご存知かもしれないですが、私はJJF2018のチャンピオンシップ(以下CSと略します)に挑戦し、予選落ちしました。その当時の全力で挑んだ結果でしたので、本当に悔しくて頭が真っ白になってましたね。CS本選も順位発表の時だけ会場外に出てウダウダ言ってたのを思い出します。
結果が出た当初は勿論こんな感じで悔しがっても良いとは思うんですけど、ちゃんと反省していくのも大事です。JJF中に私に話しかけてくれた大御所の方や、ルーティンの感想を返してくれた方の話から、以下のように反省点をまとめました。

・撮影の角度が良くない。
・振り付けが不慣れである。
・技術的な稚拙さから完成度が低い。
自分と言ったらこれ!といったものが他の人に比べて薄い
3と4の関連性が低く、4も定常状態をチョロっとやっただけで展望を感じられない。結果として何をやりたいかが良く分からない

1つ目はすぐ改善でき、3つ目は永遠の課題であり、2つ目については後ほど話すので置いておくとして1番大事だと私が思ったのは最後2つの項目です。私は2018年の演技では箱を片手に2個ずつ持った状態の可能性を探り、色々な定常状態を紹介するというのをメインの見せ所としていました。ただ、当たり前なんですけど私のこの2-2スタイルは4シガーにすることで初めて成り立つ構造をしていて、3シガーに対応するものがありません。そのため、3と4で一貫性を取るのができずに、そこまで上手くない3パートの存在意義が薄くなってしまいました(その対策として裏手レインボーとか自由の女神とかで一貫させようとしてましたが、努力不足でした)
この手の問題を解決するべく、次の演技では以下のことを念頭に置きました。

(1)3シガーで面白い技を考える。その技は汎用性が高くそこから系統付けることができ、3シガーのメイン足らしめられるものであることがベスト。
(2)さらに、その3シガーの技は今自分が持っている4シガーの、特に自分が2018年で紹介した基底への拡張が容易にできる。
(3)今やってる4シガーの技を5に拡張する。派生まではできなくても十分な説得力があると判断し、定常状態の練習をする。難しいのでこれは努力目標

上記のことができれば、新しい系統を軸に3,4で一貫性を取る事ができると判断しました。

2.新系統との出会い、そして学生大会へ

それからしばらくは上記を目標としながら技開拓を進めていました。そんな都合の良い技あるのかよ、と思っていたのですが幸運なことにそれは思いの外早く見つかりました。そう、シガーボックスアイドリングです。この技は考えてみると様々な派生が思いつきますし、言ってしまえばバランスの仕方を変えた、というだけなので4シガーのバランス系の技にも簡単に取り入れることができます。この系統は単発で箱を弾くタイプのものは既存だったのですが、バランスを定常状態としたところまで踏み込んだ人はまだ居なかった(ですし、それは1年前やろうとして挫折しました)ので難易度も担保されつつ新奇性を確保できると確信し、3シガーはこの分野と心中することにしました。これが大体2018年11月頃です。
さて、これからを共に歩むパートナーは無事決まったわけですが、流石に1回の新しい演技で(1)〜(3)を全て達成することはできません。そのため、(1),(2),(3)それぞれに分けて、そこに主眼を置いた演技を作っていくのが妥当と判断し、当面は(1)を詰めていくことを目標としました。それを元に生まれた演技が関東学生大会やどひあ杯ゲストステージ、五月祭2019で披露しました、「The 1st step to imaginary paradise」です。ここまで読んでくださった方なら演技タイトルの意味はお分かりになると思います。年内は技を作ることに精一杯で演技を作れるかどうか確証が無かったので、関東学生大会への出場を決意できたのは年明けからとなりました。大会当日は2019年3月なので、わずか2ヶ月で新分野の演技を作らなければいけません。(私は演技を作るときは半年前にはコンセプトが決まっていてそこから長期間かけて技を安定させにいくスタイルをとっていたのでこの期間はとてもとても短いものに感じられました)
さて、演技構成を早急に考えなければいけないわけなのですが、今回は新しい技をメインにするということ、さらに慣れないうちはバランス技が重めの演技しか作れない、ということで「技をじっくり見せる、技を軸にした演技を作る」ことをベースにしました。今までは第1回関東シガーボックスコンテストだったり駒場祭2018だったりと、どちらかというとアップテンポな曲でスピーディーに技のラッシュをしていくような演技スタイルでしたので、従来とは真逆の新しい試みでした。

3.学生大会のフィードバック、そして次のステージへ

そんなこんなで学生大会当日をむかえました。僕の気持ちとしてはここで結果を残せば自身の取り組んでいることが正しいことの裏付けになると思っていたので勝ちたい思いは強くありました。
しかし考えて3ヶ月のいわば付け焼き刃の系統で本番上手くいくはずがありません。結局やりたい技のうち最初、2つ目、最後しかまともに決められずに終わってしまいました。悔しくて控えで大の字になって突っ伏していた気がします。当日の演技の様子はこちらに上がってます。

そして結果ですが、以下のようになりました。

・完成度 33.5/50 6位
・難易度 43.5/50 2位
・構成 33.5/50 5位
・エンタメ性 14.5/25 5位
・新奇性 21/25 1位
・総合 146/200 5位/13人

( ゚д゚)思ったより高い!!が率直な感想でした。特に新奇性は25点満点の項目で2位の人に5点差をつける圧倒的な結果となりました(50点満点の項目ですらここまで差のついた項目が無かったのは自慢したい)構成や完成度が控えめな順位ではありますが数多のドロップやミスを考えればむしろ高いくらいでしょう。
さて、ここまで高評価を私がいただけた理由を考えましょう。なんかこれ自慢大会みたいでアレだな。

・技を丁寧に紹介することができており、見やすい演技であった
 これが一番の要因だったかなあと思っております。技を丁寧に紹介する演技は、僕の心の師匠であるなごつきさんの記事が有用なので
詳しくはそちらをご覧ください。ここでも端的に表現すると、「技に統一感を持たせること」「演技中、要素を小出しにしていき段差をつけていく」この2つが丁寧さを出す上で主に重要になってくると私は考えています。今回の私の動画を見ていただければ分かると思いますが、技は勿論統一感があり、後者についても最初の1分で

前奏で単発の弾く技をやり(0:52〜1:36)、そこから面白い派生をやる(1:02,1:36)

単発で弾いていた技を今度は連続でできることを説明(1:36〜1:46)

さらに、そこから面白い派生技があることを説明(1:50)

という形で段差をつけることができています。この段差付けにより、後半部分に難易度があることのアピールができているわけです。

・新しい定常状態を提示できていたことに新奇性や難易度があり、そこからさらに新奇性や難易度の上塗りができていた
 これは前の項目と若干被るのですが段階をつけて技をこなしていくことができたので、新奇性や難易度が次々と更新されていく演技が作れていました。そのおかげで、たとえ最後までやりたい技ができなかったとしてもそこに至るまでの(つまりはシガーボックスアイドリングができている、ということの)新奇性や難易度の評価をちゃんとされたのではないか、と思います。

審査結果以外からも自分の感じたこと、他人の感想から得られた知見をまとめておきます。

・今までやってこなかった遅い曲だからこそ意識できることがたくさんあった
 今までは曲の速さに半分振り回され、技をこなすので精一杯で姿勢などを気にすることができなかったんですけど、遅い曲を選択することで演技中に技以外の要素へも意識を回せることが分かりました。この気付きにより、後回しにしていた反省点の2つ目「振り付けが不慣れである」も幾分かマシなものにできるのではないか、という望みも生まれました。これは今まで自分がやらなかった演技スタイルをとることで初めて気づけたことだったのでこの演技を作って本当に有意義だったと思います。

・今回の演技スタイルが意外に自分に合っていた
 これは自身の感触としてはNoで今までの演技スタイルの方が性に合うかと思っていたんですけど、周囲の人からの感想は概ね良く、自身の印象というものは自分ではなく他者が決めるものなので彼らの感想を信じても良いかな、今回の演技スタイルもまた1つの武器にしていこうかな、と思うようになりました。

・アイドリング系が技ありきになってしまっていた
 これは五月祭(学生大会と同じことをやった)まで経た上で感じたことなんですけど今まで考えていた技って全部「アイドリング上で何をするか」なんですよね。そこが個人的には領域としては狭いし、見た目としても小さい技だらけになってしまうな、と思いました。そこで、「シークエンスに違和感なく箱を弾く要素を入れる」ことでより汎用性を説明したり見た目も大きい技ができるのでは無いか、と考えこれからはシークエンスベースの技も考えよう、と思うようになりました。

こんな感じで優勝こそならなかったものの学生大会を経て大きな手応えを得ました。技も演技スタイルも決して間違ってはなさそうだ、と確信しました。その上でこれからは(1)を確実なものにしつつ(2)「4シガーへの派生」を考えていこう、というフェーズに入っていきます。

キリが良いので今回はここまでにします。元々1つの記事にしようと思ったんですけどまさかここまで長くなるとは思いませんでしたね。中編に続きます。

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