-Return-で私が考えていたこと(中編)

 今回は演技の振り返りの中編ですね。前編の続きとなっておりますので是非ご覧ください。今回は2019年5月〜2019年12月までの内容となります。

1.最強の技を考えろ!

 前回までで(1)の「3シガーの面白い技を考える」は概ね突破でき、次は(2)の「4シガーへの派生を考える」段階に入りました。ここで大事になってくるのは「分かりやすさ」です。これは、3の要素が如何に含まれているかが見えやすいか、難易度が伝わりやすいか、などに細かく分類できます。ここではこの時期に開拓し、後に使うことになる技のうち4つを紹介し、それぞれ採用されるに至る良さについて説明します。(ここで技を説明することで後の説明を楽にしたいという意図もあります)新しい技の考え方、技の良し悪しを計る参考にでもなってくれれば幸いです。

(i)DSI(デュアルセルフアイドリング)

1つ目はこの技。この技はアイドリング要素を4シガーに持ち込めてる+自身が考えた2-2ファウンテンの派生ということで、今までの技の上位互換であることを示しやすくなっております。実は元のファウンテンと根本的にやり方や意識すべきところが変わるのでファウンテンから入ることの難しさがあります。

(ii)スペシャル3

2つ目はこちら。先ほど説明した2-2ファウンテンは、実はフィニッシュがしにくいのですが、この技はアイドリング要素を交えつつ気づいたら挟み込みの形に持っていけているので考えた時は相当優秀だと思いました。

(iii)ライン4

3つ目はこちら。今まで自由の女神、アイドリングの片方のみを紹介する技ばかりでしたが、この技により両分野を横断することの良さを出せるようにしました。さらに、後半は4シガーでは珍しい並べる形のフィニッシュであり、今までのシガーボックスにない貴重な終わらせ方になってます。

(iv)スペシャル2

そして、最後がこれです。こちらも自身が考えたハーフシャワーのバランスにピルエット要素を組み込みつつ、オリジナルの自由の女神の形でフィニッシュという要素満点の技となっております。

 また、この時期から(2)の作業とともに(3)も本格的に進めていました。何故かと言うと、5シガーの技は当然とんでもない難易度であることが想像でき、早い段階から準備する必要があるからです。5シガーの技としてはハイダイヤ、バランスカスケードを考えていましたが、前者の技はストールを利用して4→5に入れること、後者の技は2019年9月頃に終わらせ方が解明されたことにより一気に採用が現実味を帯びてきました。これにより、3でストール×アイドリング系の分野横断された技を考える必要が出てきてまた1つ技を詰める作業が大変になりましたが…


2.MJF2019,JJF2019,駒場祭2019を経て 〜次の演技の目標〜

 こんな感じで(2)、(3)の要素が着実と開拓され、あとは技の安定化の練習をひたすら試みる段階に入ってきました。そんな中、JJF2019がやってきます。この年はマラバリスタから(広く見れば)5組本選に出場するという大金星の年でした。しかし、空前絶後の台風が東京に突撃することが予想され、安全のために初日のプログラムと共にCSが無くなってしまいました。僕としては彼らが報われて欲しいという思いが強くあったのでとてもやるせない思いでした(本人達が一番その思いをしているのは間違い無いですが)CSがなくなり、落胆している人達をなんとかしたい、と思った人が恐らくいたのでしょう。CSの代替となる「スペシャルステージ」が3日目に行われ、マラバリスタ5組は全員そのステージに出ることになりました。私ももちろんそれを見たのですが、まーーー良かったですね。やはり頑張っているところをずっと見てきた人間がステージ上で輝いている姿を見るのはとても気分の良いものです。とりわけ同じ道具でも自分とはかなり違った系統ができ、演技についても良く見てきた(助言をした、という意味では無いです)松永先輩の演技を見てとても感動しました。松永さんは同じ演技をMJF2019でもやっており、圧倒的実力で優勝し、私もジャグリングを見て初めて我を忘れる思いに至ったのですが、それ以上の感動がそこにはありました。

 思えば2018年の矢口さんのCSでも私は感極まって半泣き状態でした。そして、これらのステージを経て悶々と感じる日々が増え、自分は周りの優秀な人たちのおかげで感動する機会に恵まれてるな、と思うようになりました。じゃあそんな人たちに私は何ができるのか。そう、

今度は自分の演技でお世話になった人たちを感動させる番だ

と思ったのです。これが次のルーティンの技以外の主なコンセプトとなり、演技タイトル-Return-が決まります。ポケモンの恩返しって技は英語訳だとReturnなんですよね。それと、2018年の挫折、苦悩を乗り越えて帰ってきたよ!という意味もこめられています。また、このコンセプトはシガーボックスのバランスだったりじっくり技を見せるスタイルと比較的相性が良いので、このコンセプトでいこう!と決心しました。
 さらに駒場祭では、同期の大住君がそれまでにない荘厳な曲を使い、水平では高難易度な3ディアに挑み、縦ディアでは彼なりの新しい演技スタイルを立ち上げる、これまでの彼の集大成のような演技をしてくれました。彼の技や身体使いの良さもあり、駒場祭当日の彼を見て私は人生で2回目の「ジャグリングを見て我を忘れる」経験をすることで、この思いはさらに深くなっていきました。

 この-Return-の考えはお世話になった人に止まらず、「どうしたらシガーボックス界に貢献できるか?」も同時に考えていました。演技を通して貢献するためには誰もが真似できるもののほうが良い、それでも真似できる演技はオリジナルのものでは無い…という葛藤に少し悩まされましたが、そこへの解答はすぐ見つかりました。「問題ない」です。
 今回の演技はアイドリング、自由の女神といったオプションと、4のオリジナルの定常状態の2重の新奇性があります。そのうち前者は私のアイデンティティとなり、後者を後進の人が辿る、という形をとれば自身のオリジナリティを保ちつつ他の人が別の演技を作れます。後進の人達は自分の定常状態をもとに別のオプションを加えてやることでまた新しい演技になるし、近い将来のシガー界はそうなる。と、私は思いました。

3.現実はそんなに甘く無い〜見えない出口〜

 2019年10月の段階で新ルーティンに向けて何をしたいのかが決まり、それに向けて考えている技を安定化させる時期に入ったわけなのですが、まあそんな自身の思いだけで技ができるようになるほど甘い世界ではありません。卒論もやりながら毎日練習していたのですが、実力が向上する気配は中々見えません。そもそもの練習強度が高すぎて、練習後は毎回身体が灰になったような感覚と共に絶望感に浸っていました。考えてみればこの時期が一番キツかったですね…自分のやってるフィールドに誰も人が居ないので、安定することが可能なのかさえ分からないですし誰かを参考にしたり助言を求めたりすることもできないんですよ。それを考えると一点特化で第一線を走ってるジャグラーの方々は本当にすごいし私は尊敬しています。僕はどちらかというと幅広いジャンルで高水準なスキルを持っていることをウリにしてきたので初めてこの苦しみを知りました。

 そのような修羅の中自分は何をしたか、考えをまとめ、、、られたら苦労しないですよね。ここまで見てくれた方々に何か有益な情報を言えたら、と思ったのですが「とにかく練習する」「技のコツや足りないポイントなどをメモする」「目標を細かく分解する」くらいのありきたりなものしか言えないですね。一応最後については、具体的に私は2019駒場祭に出場することで途中の目標を設定しました。3シガーもアイドリングにボディースローを取り入れたり、五月祭の反省も兼ねてシークエンスの中に自然に取り入れる試みをし、さらに1であげた4つの技のうち3つは実戦投入しております。本ちゃんの演技に向けてはあと3,4技足りてない、くらいの段階ですがここを中間目標として練習してましたね。それでも大分背伸びしたルーティンでしたけど。(本番は雨で演技を全て変えたのでリハの動画を置いておきますpass:komaba2019)


駒場祭の反省は、特にないですね。ぶっちゃけると技の安定化の途中目標としての演技だったので「これからも技を頑張るしかない」のフィードバックに尽きます。

今回はこんな感じで絶望にうちのめされながら終わりとなります。果たして、演技は間に合うのか。終編では具体的なルーティン作りについて話していこうと思います。

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