ジブチ(アフリカ)の結婚式
フランス在住12年になる香田有絵ですが、最初に生活した外国はアフリカのジブチ共和国。
今回は結婚式について記憶をたどります。
ジブチの結婚式は、日本とはとても違う形で行われます。
大きく違う点は以下の3つ。
1)新郎新婦の到着時間が遅い
2)新郎側と新婦側とで別々に結婚式をすることがある
3)食事は出ない
貧困地区からシェラトン・ホテル、新郎の別荘でと、ジブチではいくつもの結婚式に参加しました。
はじめてジブチの結婚式に参列したのは、配属先の婦人会に着任3日目。
この時の結婚式が一番印象的でした。
会って3日目の同僚ジブチ人に「結婚式があるから、一緒に行きましょう」という誘われ、「着いた早々、なんてラッキー」とほいほいついていったのがはじまりでした。
新郎にも新婦にも会ったことがありませんでした。
結婚式がどこで行われるのかも知りません。
開始は夜7時くらいからとのことでしたが、待ち合わせは午後4時。
同僚とその従妹と一緒に、美容院に行きました。
そこで髪をカールしてもらったり、手にヘナで模様を描いてもらったりしました。
このときの写真は残っていませんが、ヘナは下の写真のような感じです。
美容院に同僚の従兄という人が迎えにきて、車で結婚式の会場となる場所まで連れていってくれました。この辺りから不安に。
「どこに行くのかしら」「帰りも送ってくれるの?」
地名を言われてもまったくわからず、辺りがすっかり暗くなっているので送ってくれるという言葉も信じていいものやら。
7時過ぎに会場に着きました。風船などで飾り付けがしてあります。
新郎新婦の席とおぼしきソファも。
と、その新郎新婦の席にわたしが案内されたのです。座るようにと。
7時に結婚式がはじまるんでしょ?新郎新婦はまだなの?
わたしがそこに座るのはなぜ?
まったくわかりませんがみなさんがそうしろと言うので、おとなしく座りました。
まだ人もそろっているようには見えません。
このときのわたしはまだ知りませんでした。
そもそも結婚式に新郎新婦が登場するのは夜11時ごろだなんて。
それからわたしは延々4時間、踊っているとき以外ずーーーっと新郎新婦席に座ることになりました。
ジブチのみなさんにとっては、待っている間の暇つぶしに外国人を見るのは、ちょうどよかったでしょう。
新郎新婦が来るまでの時間、なにをするかと言うと、おしゃべりと音楽に合わせて踊ることです。
食事はなし。飲み物は1人に付きコーラ1瓶。
世界で一番暑いと言われる国の真夏7月。昼間は50℃を超える暑さなので、食べ物を出さないのは賢明かもしれません。
でも着いたばかりのアフリカで、いつ来るかもわからない新郎新婦を待って見知らぬ人たちに囲まれて過ごすのは、随分体力を消耗する時間でした。
大音響で音楽が流れ、教えてもらいながら踊ったりもしましたしね。
この結婚式は新婦側。新郎側は別にするとのことでした。
結婚式は朝まで続くようでしたが、この日は新郎新婦が表れてまもなくの深夜になる頃、気力も体力も限界で帰らせていただきました。
下の写真は、上の結婚式にわたしを誘ってくれた同僚、ノラの結婚式。
ジブチには大きく分けて3つの民族がいます。
ノラはそのうちの一つ、ソマリ系です。現職のゲレ大統領と同じ。
他には少数民族アファル系と対岸イエメンから来たイエメン系の民族がいます。
ノラの結婚式のときは、知り合って1年以上経っていましたし、お母さんや友達、姉妹たちとも知り合っていたので、花嫁の身内の心境。
やはりこのときも現れたのは夜中でしたが、もう習慣を知っていたので覚悟して参加しました。
ソマリの音楽に合わせて、参列している子供たちと一緒にダンスも。
ノラはわたしのジブチ滞在中に子供も生まれたので、その件も改めてご紹介したいです。
次の結婚式は、ジブチのシェラトン・ホテル。
新郎は農業省勤務で日本にも来たことがあるタバレック。
彼の家に招かれたラマダンの食事でわたしは夫と出会ったので、恩あるキューピットです。新婦はタバレックの親友の妹。
シェラトン・ホテルということもあり飾りつけは豪華で、テーブルには何本ものナイフやフォークが並んでいましたが、基本は上の結婚式と一緒。
新郎新婦の登場は11時頃。料理はなし。飲み物はコーラ。
ナイフやフォークが出てちょっと期待しましたが、使うことはありませんでした。
ジブチ人として破格のホテル結婚式。贅を尽くしたウェディングドレス。
参列者もジブチ人だけでなく日本人の協力隊関係者やフランス人たちの姿もありました。タバレックの面目躍如というところです。
ところで、タバレック、通称タバちゃんの結婚式ではケーキ入刀もありました。そのケーキはこちら。
2人の理想の家を形作ったケーキでしょう。庭には池もあります。
この日も早い時間から待っていたのでケーキくらいは食べたいところでしたが、夜でも30℃を超える中、何時間も飾られていた生クリームのケーキを食べるのは心配なので諦めました。
「俺の自由な人生はもう終わり」と言葉とは裏腹に幸せそうに言っていたのが印象的でした。
次は不動産業社長ムハメッドの結婚式。彼の父親の別荘で行われました。
彼らはアファル系の人たち。
アファル特有の刀を使ったダンスも披露されました。
バカンスはフランスで過ごす彼らは、結婚式も洗練されていました。
ジブチの結婚式、いかがでしたか?
フランスでは結婚しないカップルが多いです。一緒に家を買い、子供が生まれても籍を入れず、結婚式もしません。
日本でも籍だけ入れて結婚式をしない人たちも増えているでしょう。
でも、振り返って結婚式っていいなと思います。
大勢が新しいカップルのために集い、祝福する。
カップルも心新たに新生活を始める。
何時間もかけて、大勢の人から自分の幸せを祈られる機会ってなかなかありません。
どんな平凡な人生もその日は主役。
ジブチでも結婚しないカップルは出てきているのでしょうか。
結婚式に限らず、日本を離れると自分の価値観が当たり前ではないことに気づくことが多くあります。
考えが広がり、人生に対する考え方のバリエーションが増えます。
今の自分からもっと自由になるために、日本を出るのもいいかもしれません。
今日は金曜日、あしたはなにをしよう。
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