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大切な人と家で食べるごはん 『きのう何食べた?』

『SUITS』のシーズン5の途中まで見て、なんだか疲れてしまいました。騙し騙され虚勢を張り戦う世界も見ている分にはおもしろいですが、あまり続くと一息つきたくなりますね。

そこで、『SUITS』の視聴は一旦中断し、前から見たいと思っていた『きのう何食べた?』(2019年)を見ました。
シーズン1(12話)と正月スペシャル2020(3話)がNetflixに上がっています。

これが、期待以上におもしろかった。(あらすじは公式サイトをご覧いただければ、と)

BLといえばBL、でもロマンティックやエロティックなシーンは皆無です。キスシーンすらありません。それでもしっかり二人の間の愛が伝わる、あえていうならヒューマンドラマ、ということになるかもしれません。コメディでもあるし、テレビ東京的には「飯モノ」のひとつでもありますね。

ご飯は美味しそうだし、簡単に作れそうで作ってみたくなったりします。
私、近頃本当に家事が嫌で、できればやりたくなくて、もちろん料理もしたくないのですが、これを見たら、自分でご飯を作って、大切な人と向かい合って、おいしいねって言いながら食べるのってやっぱりいいなと思ってしまいました(作ってもらえるならその方が断然いいのですが)。

このドラマでは、弁護士の筧史朗(西島秀俊)通称シロさんが、毎日6時に仕事を終えて帰宅し、後から帰ってくる美容師の矢吹賢二(内野聖陽)通称ケンジと自分のために毎晩夕食を作ります。彼の縛りは材料費。食費は月に25,000円までと決めています。その範囲で買い物をして、作れるものを作る。これはすごく高度な技です。計算ができて料理のセンスがある人しかできません。

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現在放送中の『ホメられたい僕の妄想ごはん』の理生(高杉真宙)もシロさんに似ていて、彼の場合は、材料費はできるだけ安く、でもいくつかこだわりのポイントはある(干し椎茸はたとえ高くてもどこどこ産、みたいな)。

シロさんや理生のようなセンスがない私は、毎日の責務のように感じて嫌になっていたわけです。

料理って、しなきゃならない(=義務)と思うと、面倒だし時間取られるし、なんでいつも自分だけしなきゃならないの? とか、毎日毎日もう何が食べたいかわかんないし、食べさせる人に何がいい?って聞いて「なんでもいい」って言われると絶望に近い気持ちになるわ、とかネガティブスパイラルに入ってしまいます。私だけかもですが。

でもそのネガティブな感情って、私の場合、よく考えるとほとんど「自分が規範的になっている」ことから起こっているんです。
何時に食べさせなきゃ/食べなきゃならないとか、栄養素がどうとか、食べさせる人の好みに合うようにしなければならないとか。

そこでこれを思い出しまして。

料理も同じだなと思ったんです。
何事においてもブレーキがかかる一つの要因として、「規範的になる」ということが挙げられます。少なくとも自分の場合はそうです。

だから、料理をしなければならない(/したい)のにできない(/やる気が起こらない)のであれば、千葉雅也氏の言い方で言う「料理しないで料理する」のがいいんじゃないかなと思ったんです。そう思うと、もう少し楽にできるような気がしてきました。

完全に話が脱線してしまいました。

このドラマ、シロさんとケンジのカップルだけでなく、小日向大策(山本耕史)と井上航(磯村勇斗)のカップルもおもしろいです。山本耕史さん、めちゃくちゃおもしろい。沈黙が素晴らしい。そして、磯村勇斗さんも出てたんですねえ。ここでもハッとするような表情を見せてくれました。
そして大好きな梶芽衣子さんや、青年団の今はなき志賀廣太郎さんも出演していて嬉しい。

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シロさん役の西島秀俊さんって、不思議な俳優だなあとつくづく思います。
5月から先日まで放送していた『シェフは名探偵』でも、濱口竜介監督作品『ドライブ・マイ・カー』でも、本作でも、西島さんは西島さんとしか言いようがない。全部西島さんで、どこが違うのかわからないのですが、それが良くないかというとそうではなくて。西島さん出演作の監督さんたちに、西島秀俊という俳優について聞いて回りたいくらいです。ちょっと出演作を追ってみようかなあ。

あれこれとまとまりがつかなくなってしまいましたが、本作は、シロさんとケンジの日々の食卓を中心に、二人のあたたかい関係を描いている、落ち着いた大人のドラマです。なんだか疲れちゃってる人にお勧めします。

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