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【シエルの注目映画】2021年12月公開作品

12月になりました。すでに公開開始されているものも含め、気になる作品をピックアップしてみました。

『偶然と想像』(12月17日公開予定)

2021年製作/121分/PG12/日本
配給:Incline
監督・脚本:濱口竜介
プロデューサー:高田聡
撮影:飯岡幸子
出演:古川琴音、中島歩、玄理、渋川清彦、森郁月、甲斐翔真、占部房子、河井青葉
公式サイト:https://guzen-sozo.incline.life

第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞した本作は、「偶然」をテーマにした三作からなる濱口竜介監督の初めての短編集です。
古川琴音さん、渋川清彦さんは好きな俳優だし、ほかの出演者はまだよく知らないのですが、予告で見る限り魅力的です。

濱口竜介監督の作品は、前々から観たい観たいと思っている『ハッピーアワー』を何度も見逃していて、『寝ても覚めても』と『ドライブ・マイ・カー』しか観ていないのですが、この二作はどちらもよくて、本作にも期待します。

『夜空に星のあるように』(12月17日公開予定)

1967年製作/101分/イギリス
原題:Poor Cow
配給:コピアポア・フィルム
日本初公開:1968年11月16日
監督:ケネス・ローチ
製作:ジェセフ・ジャンニ
原作:ネル・ダン
脚本:ネル・ダン、ケネス・ローチ
撮影:ブライアン・プロビン
編集:ロイ・ワッツ
音楽:ドノバン
出演:キャロル・ホワイト、テレンス・スタンプ、ジョン・ビンドン、クイーニ・ワッツ、ケイト・ウィリアムス
公式サイト:https://yozoranihoshi.com

貧困や人種差別などの社会問題を取り上げ、社会の底辺で苦しむ“普通の人々”に寄り添った作品を多く生み出しているケン・ローチ監督の長編デビュー作が53年ぶりにリバイバル上映されます。

泥棒で生計を立てている男と成り行きで結婚して妊娠、やがて夫は逮捕され、次の男も逮捕される… という、大筋だけを見るとダメンズウォーカーの話のようですが、観たらたぶん抉られる気がする。

注目作品の記事では通常日本初公開作品を紹介していますが、本作は気になりすぎるのでここに載せました。旧作の上映機会があったら観にいきたい監督の一人です。

(東京では新宿武蔵野館での上映なので、小柄な方は座席選定を慎重に)

『ただ悪より救いたまえ』(12月24日公開予定)

2020年製作/108分/PG12/韓国
原題:Deliver Us from Evil
配給:ツイン
監督・脚本:ホン・ウォンチャン
撮影:ホン・ギョンピョ
音楽:モグ
出演:ファン・ジョンミン、イ・ジョンジェ、パク・ジョンミン、白竜、豊原功補
公式サイト:https://tadaaku.com

本をジャケ買いしがちな私は、映画のタイトルやポスタービジュアルに惹かれがちです。ノワール系でこういうタイトルはありがちなのかもしれませんが、つい惹かれてしまいます。英語のタイトル『Deliver Us from Evil』をこう訳すとノワールっぽくなるのか。笑

予告を見るともうなんか、でかいナイフというか小さな刀? で戦ってるし、エグい血みどろ必至でしょうね。
日本人ヤクザがコレエダっていうのは是枝監督へのオマージュでしょうか。笑

日本人俳優が海外の映画に出演するのを観ると、日本語の発音の平板さ深みのなさを痛感します。もうこれどう表現していいかわからないのですが、声に深みが感じられないんです。原因の多くは日本語そのものにあると思います。
本作のイ・ジョンジェさんなんか、うわーイケボだなーと。
ま、この手の話は好みの領域ではあるんですけれども。
今思ったのですが、國村隼さんが海外映画にピタッとハマるのは、もちろん演技もそうでしょうが、あの深みのある声も一役買っている気がします。声って大事です。

『ラストナイト・イン・ソーホー』(12月10日公開予定)

2021年製作/115分/R15+/イギリス
原題:Last Night in Soho
配給:パルコ
監督:エドガー・ライト
製作:ティム・ビーバン、ナイラ・パーク、エドガー・ライト、エリック・フェルナー
脚本:エドガー・ライト、クリスティ・ウィルソン=ケアンズ
撮影:チョン・ジョンフン
美術:マーカス・ローランド
衣装:オディール・デイックス=ミロー
編集:ポール・マクリス
音楽:スティーブン・プライス
出演:アニャ・テイラー=ジョイ、トーマシン・マッケンジー、マット・スミス、ダイアナ・リグ、シノーブ・カールセン、マイケル・アジャオ、テレンス・スタンプ、リタ・トゥシンハム、ジェシー・メイ・リー、カシウス・ネルソン
公式サイト:https://lnis.jp

ホラーはほとんど観ないのですが、本作はまずポスタービジュアルに惹かれました。そして60年代のロンドンとアニャ・テイラー=ジョイさん。Netflixの『クイーンズ・ギャンビット』で知りました。

そして本作には、リアル60年代の『夜空に星のあるように』に出演しているテレンス・スタンプさんが出演してます。すごい。

パク・チャヌク監督と多く仕事をされ、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』以降、ハリウッドでも活躍されているチョン・ジョンフンさんが撮影担当。

『ジョン・コルトレーン チェイシング・トレーン』(12月3日公開)

2016年製作/99分/G/アメリカ
原題:Chasing Trane: The John Coltrane Documentary
配給:EASTWORLD ENTERTAINMENT
監督・脚本:ジョン・シャインフェルド
製作:スペンサー・プロッファー、ジョン・ボーグ、スコット・パスクッチ、デイブ・ハーディング
撮影:スタン・テイラー
編集:ピーター・S・リンチ2世
音楽:ジョン・コルトレーン

私のようにジャズをよく知らない人でも名前だけは知っているであろうサックス奏者ジョン・コルトレーンの生涯を紐解くドキュメンタリー。
わずか40歳で亡くなっているんですね。

ミュージシャンものはできるだけ観るようにしています。ドキュメンタリーとフィクションが同時期に公開されるパターンが結構あるのですが、本作は今のところなさそうです。両方見ると視点が異なるのでおもしろいです。
ジェームズ・ブラウンやホイットニー・ヒューストン、ジャニス・ジョプリンなどについては、過去にはてなの方にちょっと書いてます。

ビリー・ホリデイ、アレサ・フランクリンについてはnoteに書こうと思いつつ書けずにいます…

『世界で一番美しい少年』(12月17日公開予定)

2021年製作/98分/スウェーデン
原題:Varldens vackraste pojke
配給:ギャガ
監督:クリスティーナ・リンドストロム、クリスティアン・ペトリ
製作:スティーナ・ガルデル
撮影:エリック・バルステン
編集:ハンナ・レヨンクビスト、ディノ・ヨンサーテル
音楽:アナ・フォン・ハウスウルフ
出演:ビョルン・アンドレセン、池田理代子、酒井政利
公式サイト:https://gaga.ne.jp/most-beautiful-boy/

ルキノ・ヴィスコンティ監督に見出され『ベニスに死す』で一世を風靡したビョルン・アンドレセンの半生を描くドキュメンタリー。

長い間、男女ともに金髪碧眼が美の最高峰とされていて、それは今も変わらないのかもしれません。特に日本においては絶対的な基準です。
多様性の尊重が叫ばれる現代ではそのあたりを変えようとする動きも多々見られますが、そういう動きが必要ということ自体、この基準の揺るがなさを物語っています。そもそもはその稀少性が要因でしょう。個人的にはもっといろんな美があると思っています。

そうはいってもビョルン・アンドレセンさんは美しかった。でも『ベルサイユのばら』のオスカルのモデルだったとは知りませんでした。言われれば納得します。
“美しい彼”はドラマを生み出す誘因となるのです。

しかしその美や名声が、個人の人生にとって幸福をもたらさないことも往々にしてあります。本作では彼の経験した苦しみについても言及されるでしょう。

『街は誰のもの?』(12月11日公開予定)

2021年製作/98分/日本
配給:Trash Talk Club
監督・撮影・編集:阿部航太
整音:鈴木万里
出演:エニーボ、チアゴ・アルビ、オドルス、中川敦夫、ピア
公式サイト:https://www.machidare.com

ブラジルのストリートカルチャーを、デザインと文化人類学的視点から捉えたドキュメンタリー。ストリートカルチャーに関心があり、南米(どちらかというとスペイン語圏の、ですが)にも興味あるので、これはもう絶対観たいです。

ストリートカルチャーに関心があるというのは、そうなんですが、もっというと街そのものに興味があるんです。知らない街が好き。
今は知らない街になかなか行けないから、街を撮った作品は貴重です。

(ちなみに、知らない街が好きだけど、出不精なので観光旅行は好きじゃないです。めんどくさい)

『彼女が好きなものは』(12月3日公開)

2021年製作/121分/PG12/日本
配給:バンダイナムコアーツ、アニモプロデュース
監督・脚本:草野翔吾
原作:浅原ナオト
エグゼクティブプロデューサー:成宏基
撮影:月永雄太
照明:藤井勇
録音:齋藤泰陽
美術:安宅紀史
出演:神尾楓樹、山田杏奈、前田旺志郎、三浦りょう太、池田朱那、渡辺大知、三浦透子、磯村勇斗、山口紗弥加

これは2019年にNHKでドラマ化された『腐女子、うっかりゲイに告る。』の原作である浅原ナオト著『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』の映画化とのこと。NHKはずっと見ていなかったし、ドラマを見始めたのもこの1年くらいのことなので、このドラマも知りませんでした。
しかし本作はドラマの劇場版という位置付けではなく、キャスティングも新たに、別の作品として製作されたようです。

現在『顔だけ先生』で高校教師役をしている神尾楓樹さんが高校生役で、同じく生徒役をしている三浦りょう太さんと本作ではクラスメイトです。

腐女子がゲイの男の子を好きになるって、現実でも結構ありそうな気がします。
本作の話を全く知らないので、どういう展開になるのかもわからないのですが、わからないまま観に行きたいです。

『なれのはて』(12月18日公開予定)

2021年製作/120分/日本
配給:ブライトホース・フィルム
監督・撮影・編集:粂田剛
整音:浦田和治
音楽:高岡大祐
デザイン:千葉健太郎

マニラの貧困地区にひっそりと住む「困窮邦人」と呼ばれる高齢の日本人男性たちの姿を追ったドキュメンタリー。
元暴力団員はなんとなく想像がつきますが、元警察官の方もいる。当たり前かもしれませんが、色んな人がいるんですね。
広い意味での街ものとしても興味深いし、もちろんそれぞれの人生のそれぞれの事情にも関心があります。

2013年に同様のテーマで本が出ています。

また、ちょっと別の視点からはこういう著作もあります。

『The Hand of God』(12月3日公開)

2021年製作/129分/PG12/イタリア
原題:E stata la mano di Dio
監督・脚本:パオロ・ソレンティーノ
製作:ロレンツォ・ミエーリ、パオロ・ソレンティーノ
製作総指揮:リカルド・ネリ、エレナ・レッキア
撮影:ダリア・ダントニオ
編集:クリスティアーノ・トラバリョーリ
出演:フィリッポ・スコッティ、トニ・セルビッロ、テレーザ・サポナンジェロ、マーロン・ジュベール、ルイーザ・ラニエリ、レナート・カルペンティエリ、マッシミリアーノ・ガッロ

「グレート・ビューティー 追憶のローマ」などで知られるイタリアの名匠パオロ・ソレンティーノが、故郷ナポリを舞台に、運命と家族、スポーツと映画、愛と喪失のエッセンスを散りばめながら1人の少年の成長を描いた自伝的作品。3日から劇場公開、15日からNetflixでも配信されます。

映画.com

トレーラーを一見して、まず映像が美しいと思いました。それだけでも観る価値がありそうです。

Hand of Godとは、主人公の少年が住む街にやってくるマラドーナにもかかっていつつ、何かそういう、主人公の啓示的な経験みたいなものも語られているのかなと想像します。

* * *

以上、映画10本をピックアップしてみました。
見落としあるかもしれません。良い作品があったらぜひ教えてください。

それではみなさま、よいご観賞を。


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