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サイダーランド・イン・カナダ 番外編

5月のカナダのサイダー旅行記を書いた際に、1つだけ書かなかったことを遅ればせながらですが、今ご紹介します。
というのも、訪問後に私自身がこちらのサイダーを輸入したいと思っていたこともあり、この訪問記を公開した時点では情報解禁が難しかったのが理由です。
ただ2023年の収量がとても少なく、残念ながら輸出はできないとお断りされてしまったので、1サイダリー情報としてご紹介出来たらと思います。

その名もシドルリー・デュ・ミノ。
モントリオールから車で約1時間南東に行ったヘミングフォードにサイダリーはあります。

サイダリーの入口

元々フランスのブルターニュ出身のデモイ家は1970年代にケベックに移住。ボルドー大学で醸造学を学び、エノロジスト(醸造家)だったロベールはケベックでワイナリーやサイダリーにて働き、一方1983年にケベックに戻ってきたジョエルと合流し、1988年ヘミングフォードに初のサイダリーを設立。ケベックの初のアーティザンサイダリーとして、酒類管理委員会SAQにて彼らのサイダーが一番最初に販売されました。
現在は両親の功績を息子アランと娘オードレンヌが引継ぎ、3つの果樹園に14,000本の食用とサイダー用リンゴを栽培し、家族経営にてその品質を保っています。一番栽培しているのはマッキントッシュ。

サイダリーに飾られた品評会でのメダルたち
アラン(写真右)と訪問時に試飲した生産する全アイテム。

現在は16種類のサイダー(シードル)を造っており、特筆すべきはアイスサイダー。
冬のマイナス20℃~30℃の中、従業員全員6人で防寒着を着用し、1個1個凍ったリンゴを手摘みして収穫するという。
で、収穫された冷凍状態のリンゴを6時間かけてゆっくりプレスして、果汁を得るという。アラン曰く、毎年命がけの収穫って感じするよねと。

これが凍ったリンゴをプレスする専用プレス機。

この果汁を使用して造られるのは、アイスサイダーが3種類とアイスサイダーを加え甘口スパークリングサイダーの全部で4種類。
試飲をした際に、衝撃を受けたのがクレマン・ド・グラス、つまりはスパークリング・アイス・サイダーです。

クレマン・ド・グラス 375ml

これは、マッキントッシュ、コートランド、エンパイア、リバティ、トレントの果汁を凍らせて、濃厚果汁を取り出しゆっくりと6~8週間定温発酵させ、その後瓶内二次熟成を施してあります。生産本数はわずか2,000本。
黄桃のシロップ付けのようなアロマとはちみつのような濃厚な果実味があり、そして、何よりクリーミーな泡が濃厚な果実と溶け合い優しく、今までに味わったことのない甘美でエレガントさを感じました。
幸せのため息が出る美味しさで余韻の長さにただただひたすら頷いておりました。

これを試飲しながら、日本のサイダーラヴァーの皆様にぜひ紹介したい!と思いたち、いきなりその場で交渉を始めました。正直当初の目的は違うアイテムで訪問したのですが、カナダが最初にアイス・サイダー生み出した国であることを考えたら、このスパークリング・アイス・サイダーもあまねく広めていくべきなのではないかと思い直したのです。

シドルリー・デュ・ミノの畑。ピンクの花はジェネバ。

試飲の後、畑を見て歩きましたが、ちょうど花が咲き始めていました。アランに農法のことを尋ねましたが、80%オーガニック農法だけれど、100%にするにはカナダの気候には厳しいと思うと。この先もっと別の方法が見つかれば試してみたいと意欲的な話をしていました。

余談ですが、ミノが所有する畑の一部はお隣アメリカに隣接しており、木が成長し、枝が国境を超えることもたびたびあるという。その国境を越えてついたリンゴの実はアメリカ産になるため、収穫できないという。何とも皮肉な出来事だなと耳を傾けて話を聞いておりました。

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©2023Marie Tanaka
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