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チョコレートの裏側

チョコレートやカカオについて学んでいく中で、避けては通れない問題の児童労働や人身取引です。"Fine Cacao and Chocolate Institute"という団体の創設者でもありハーバード大学で"African and African American Studies"(アフリカとアフリカ系アメリカ地域研究)の教授でもある、Carla D.Martin氏の講義などを参考にチョコレートの裏側について調べてみました。

カカオの生産地はなぜアフリカ?

カカオの歴史から見ると、カカオの生産地は100%中南米でした。しかし、現状はアフリカが世界のカカオの70%以上を生産するカカオ生産中心となっています。実は、それは自然なことではなく、世界の大手チョコレート製造会社が儲けるための仕組みなのです。カカオの生産地についてあまり知らなくても「ガーナ?アフリカ?」という日本人が多いのではないかと思うのですが、それも、このチョコレート製造会社が儲ける仕組みから生まれた思想だったんです。

カカオ生産地2019


カカオ豆は15世紀の大航海時代にスペイン人によってヨーロッパに伝えられました。18世紀頃までには、チョコレートは「異国の特別なドリンク」として貴族や富裕層の人たちに飲まれていました。しかし、チョコレートがヨーロッパの庶民レベルで大量に消費されるようになったのは、19世紀の産業革命からでした。アフリカ大陸の奴隷制のもとで大量にカカオ豆が生産され、輸出されるようになったことがヨーロッパでのチョコレートの普及に繋がりました。

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例えば、ガーナでのカカオ豆の生産も19世紀から英国の植民地支配のもとで本格化しました。それまではガーナをはじめとしたアフリカの人々にとって、カカオ豆はまったく馴染みのないものだったのです。それがこの植民地支配の中で、アフリカの人たちはカカオ豆を消費することなく、その生産だけを担わされ、利益の多くを英国が吸い上げる仕組みが完成しました。そして悲しいことに、その不平等な仕組みは現在でも続いているのです。

現代の奴隷制とチョコレートの関係

奴隷制から受け継がれたこの不平等な関係が、現代のカカオの生産の児童労働や人身取引などの問題に繋がっています。実は、私たちが食べている大手チョコレート製造会社のチョコレートの金額のうち、カカオ農家はその3%の利益しか手にしていないのが現実なのです。例えば、スーパーで売っている100円のチョコレートのうち、3円だけということになります。カカオはそのままでは食べられないため、カカオからチョコレートを生産するための費用もかかります。そして何より、利益の43%はチョコレート会社の利益となっているのです。

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カカオ生産地の児童労働

とても手間がかかるカカオの生産をどのようにして、そんなに低い賃金に抑えているのかというと、それが児童労働や人身取引の問題に繋がります。カカオ豆の世界の生産の約60%を占めるコートジボワールとガーナですが、危険な労働を余儀なくされる18歳未満の児童労働者は、156万人に上ると言われ、このうちコートジボワールは79万人、ガーナは77万人です(2020年、シカゴ大学)。

カカオ豆の栽培や生産には、カカオの収穫、発酵、乾燥などの工程で人手が頼りで大量生産化できない工程が多いため、多くの労働力が必要で、児童労働が蔓延しやすい環境にあります。この人の手間がかかる労働力を担っているのが家族単位の小規模な農家の人たちですが、安価な価格で取引されるカカオのために労働者を雇うことができないため、子どもが重要な労働力となってしまっています。

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子どもが行う農作業は、刃渡りの大きななたを使った農園の開墾や下草刈り、収穫したカカオの実やカカオ豆の運搬などがあります。子どもの力だけで持ち上げることができないほどの重さの荷物を頭に載せて運搬したり、鋭利な刃物を使った労働、害虫駆除のための消毒薬にもまみれる危険労働を子ども達が行わなければなりません。このような過酷な労働は子どもたちの成長の妨げとなるだけではなく、働いている子ども達は学校に行けないことが殆どのため、将来必要な教育を受けることができず、なかなかこの悪循環のサイクルから抜け出すことができません。

子どもの人身取引とチョコレート

親の仕事を手伝うだけではなく、借金のカタとして、または誘拐されて、売り飛ばされてきた子どもも多く、これは人身取引という更に深刻な問題です。米国務省によると、コートジボワールでは、カカオ産業で10万人以上が無給労働や性的虐待などをともなう「最悪の形態の児童労働」のもとにあり、このうち約1万人を人身取引の犠牲者と試算しています。その「調達先」は国内だけでなく、マリやブルキナファソなどの周辺国からも、日本円に換算して一人当たり5000円ほどで売られてきているとみられます。

残念ながら、チョコレートは歴史的にも、現状にも、不平等な構造で成り立っています。そのビジネスモデルは、今でも多くの子どもたちや弱い立場にある人たちが犠牲になっています。私たちは「美味しいから」という理由だけで、その現状を無視してチョコレートを食べるのではなく、まずはチョコレートの裏側を知り、少しでも改善するために私たちにできることは何なのか考え、行動に移していかなければいけないと思いました。






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