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ジーザス・クライスト=スーパースター観劇記@刈谷市総合文化センターアイリスホール


劇団四季の『JCS』こと『ジーザス・クライスト=スーパースター』を見てきた。
キリストの最後の7日間を描いたミュージカルだ。

ホールは刈谷市総合文化センターアイリスホール。1ヶ月前に東宝の『ロミオ&ジュリエット』でお邪魔したばかりである。
↓その時の記事がこちら。

ここのホールは大変利便が良いし大きさもちょうど良くて好きだ。これからもこの劇場で色々な作品に触れたい。聞こえますか四季の偉い人、アイリスホール大好きですよー。

今回は四季なのでちゃんとキャストボードもある。

「ハイどーもー!キャスボですゥー」

私は物心ついた頃から浅利慶太氏に作品主義を叩き込まれて育ったのであまり演者で左右されない観劇スタイルだが、ユダ役の佐久間仁氏を数年前にデビュー直後の段取り感溢れる状態で拝見して以来の観劇になるのでとても楽しみにしていた。聞こえてくる評価もいいので尚更である。
初めてお目にかかる演者さんも多くて楽しみだ。
こういう演者の成長が追いかけられたり、違う演者で見ることで作品への解像度を上げられるのは同じ演目をコンスタントに上演してくれる劇団四季のいいところだと思う。

開演前に客席から舞台の撮影が可能だった。

私の座った席、下手前ブロックからの景色がこちら。
額縁前のセットのない部分の床と上手袖がよく見える席だったのだがいざ始まると照明でその部分が全く見えなくなっていたのでさすがだと思う。素晴らしいエンタメの影には職人の技が欠かせない。

照明については今回の観劇で『JCS』は照明の力が舞台を大きく担っていることをつくづく思い知らされた。
荒野の表現、ユダの心象風景、熱狂と静観の対比、日照りの暑さなど、多様な表現を照明が担っている。すごい。照明担当の方にジーザスボーナスとかあげたい。銀貨チョコとかでいいだろうか。

『JCS』はとにかく熱狂とパワーが肝要で、客席まで演者の熱が届かないとうわっ滑りで見ていられなくなるのだが今回は全くそんなことなく引っ張り込まれ、終始没頭できた。とにかく熱い。そしていつどこでどの演者さんを見ても同じ熱量でそこにいる。力強い筆致の大きな絵画を見ているような迫力があってとても良かった。
兎にも角にもアンサンブルが非常に大事な演目だと思うのだが、一人一人にストーリーがあってジーザスに臨んでいる、そのドラマが見えたように思う。
小さくふにゃふにゃとした集合体がジーザスという依代に好き勝手に気持ちを乗っけて強大で暴力的な民意として膨れ上がっていく。そのグロテスクさがいい。ボロボロの衣装で跳ね、拳を突き上げ、顔を歪ませて大きな声で叫ぶ群衆からバシバシ伝わってくる。

私は特に市場のシーンの動きが好きだ。
まだ理性的な人が集う始まりから「まるで盗人の巣じゃないか」とジーザスが激昂するまでの狂乱っぷりになるところで、体に近い動作だったものが次第にものを高く持ち上げる、長いものを振り回す、という空間を大きく使う動きに変わっていくのを見るたびに「感情の起伏の見せ方ってやっぱり構成だなぁ」としみじみ思う。
あのシーンは歌がふくよかながらソリッドな和音なのも好きだ。あんな音どうやったら思い浮かぶのか全然分からない。神の御業なのだろうか。そうなんだろうな。
そういう演出やナンバーの妙とアドリブを楽しめるという理由で市場のシーンはついつい堪能しようという気構えて見てしまう。ついつい力が入ってしまうので肩がガッチガチになったが今回もとても良かった。

演者もそれぞれバランスが良かったし、どのキャラクターもとても作品に忠実な演じ方だったと思う。

ジーザスは、序盤にユダが「あなたまでが自分のことを神の子だと信じるとは」と歌っているが、本当に自分のことを神の子だと信じていたようなジーザスだった。
ゲッセマネで本当に父なる神の声を聞こうと「示してください、その叡智を」と問う。そして虚にその声を聞こうと視線を投げるも何も聞こえず「いいだろう、死のう」と続く。
神永氏のジーザスは前にも拝見したことがあるがこんなふうに演じているのは今回初めて見たのでたまげた。
「みてくれ、私の死に様」のあとはラストまで父なる神に見捨てられたショックで自暴自棄になっていたように見える。
純粋に神を信じていた、そういった面では確かに神の子のようなジーザスだったと思う。

ユダはジーザスをどうにか助けたい、どうにか打破したい、という一心でカヤパのところに来だけれど思ったよりも自分は覚悟が決まってなかったし、いざジーザスが捕まるのを目の当たりにして初めて「そうか、罪人にしてしまったのか」と事の重大さみたいなものに気づく、感情で動いた後に現実が付いてきて後悔がすごいユダだった。
ユダについては自殺前に歌う「どうして愛したのか」をどう解釈して演じるかがひとつの核だと思うのだが、佐久間氏のユダはジーザスへの思いを見て見ぬふりして責任感とか奉仕精神のような違う感情で塗りつぶしていたように見えた。そして「どうして愛したのか」で初めてジーザス個人への愛情をフワッと認めて吐露し、自殺していったのが美しかった。
自殺のシーンは気持ちを見せなきゃいけないし段取りは多いし、タイミング間違えると怪我をするのでつくづくユダは大変な役だなと思う。ここに限らずユダが一人芝居を打つシーンは音響がユダの芝居をそこそこのボリュームで担っていると思うのだが、今回も絶妙な匙加減で見せてくれてとても良かった。

マリアが私の見た中で一番若そうなマリアだった。ジーザスのことを愛している娼婦、というところがとてもピッタリである。そして強さがある。ユダに咎められても香油を塗るし、自分がいいと思えば冷たい水で頬を冷やすしジーザスと真っ向から見つめ合う。これは間違いなくユダに嫌われている。
ペテロに「あの人は死ぬわ、あなたのせいよ」と詰めていて、そういう若さがいいなぁと思った。そこで「捕まりたくなくてェ」という感じで打ちひしがれていたペテロも良かった。なんなら今まで見た中で一番良かった。

司祭のシーンもいい。あまり演者で見ないと言った矢先にこんなこと言うのもアレであるがワイスアンナスがとにかくいい。こんなに丁度いいことあるかというくらいしっくりくるアンナスである。
しかし今回は他の司祭のズもだいぶ丁度良かった。佇まいに隙がない。キャラクターの見せ方がうまい。うまい人は他の作品でもお目にかかりたくなる。この先の観劇でご縁があるといいなと思う。
あと全体を通してちょこちょこ歌詞が変わっているジーザスだが、司祭のシーンは初演から一切変わってないように思う。もうしっくり完璧なのだろう。いい。

ピラトもユダとは違うベクトルでジーザスをただの人に戻そうとしているのが分かりやすくて良かった。無罪にしようと言質を取ろうとするがジーザスは何も語らず最後には「あなたの力も知れたもの」と言い放つ。その時に諦めた感じがよく出てたのと、手が血で染まるシーンで動揺してたのが良かった。
「だが望むなら鞭で打とう」のところで民衆から石が飛んでくるのがとてもいい。
足のところに飛んできたのを「おっと危ない」というような動きをしながら「だが望むなら鞭で打とう」って言ってたから暴力に屈しているようで良かった。

そしてシモンである。
私はあのシモンナンバーが好きだ。鬱屈した熱気に浮かされた民衆と、諦観するジーザスとジーザスも民衆もいい方へ向かうと信じて疑わないシモンのバランスが絶妙である。
「とこしえの栄光と力を得たのです」のところの民衆の動きがだいぶ好きだ。熱を持って歌うシモンもいい。今回熱量が物凄かったので珍しくこの場面で泣いてしまったくらい良かった。

『JCS』は一度見ると何度も見たくなる。本当にあの舞台に圧倒されてしまう。なんというか、感情をタコ殴りしてくる。例えるなら承太郎のオラオララッシュである。またジョジョの話するやん。

まだ全国ツアー中なので近くに来たら観に行けたらいいなぁと思う。

そして浅利慶太氏と劇団四季の強火担なのでここに『JCS』のチケット情報をダイマして〆ようと思う。↓

ジーザス・クライスト=スーパースター[エルサレム] 全国 | 料金・スケジュール | 劇団四季 https://www.shiki.jp/sp_stage_schedule/?aj=1&rid=0032&ggc=9999

そして書き足らなかったのでもう一本書いた↓


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