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公的年金限界、万国の悩み 若者急減で老後資金は自助に…

はじめに


 戦後の1950年、世界の平均寿命は男性45.4歳、女性48.4歳でした。
 2060年予測は男性76.2歳、女性80.6歳と30年余り延び予想である。

 長くなる老後を誰が支えるのだろうか?
 世界の備えはあまりに心もとない状況です。

「年金天国」イタリアに見る危うさ

 「年金天国」、高齢化率が23%超と日本に次いで高いイタリアで、その厚遇ぶりに拍車がかかっています。
 21年までに受給開始年齢を67歳に引き上げる予定だったが、コンテ前首相が棚上げしました。
 19年4月に62歳からの支給を認めてしまったのです。

 先進国は少子高齢化を背景に、受給開始年齢の引き上げやシニアの就労期間延長に踏み切ってきました。

 米国やドイツは67歳、英国も68歳への引き上げを決めました。
 イタリアはこの流 れに真っ向から逆らい、結果、公務員ら11万人以上が駆け込みで早期退職の道を選んでいます。

 イタリアの公的年金の給付水準は、現役時の8割弱で日独の約2倍です。
 確たる財源がないまま年齢引き下げまで認める大盤振る舞いと言えるでしょう。
 「主要43カ国で最も持続性が危うい」とみています。

 日本を含め先進国の公的年金は、現役世代が引退世代を支える世代間扶養の方式が主流でしょう。
 高い出生率に支えられ、若い世代の人数が多いうちは問題がなかったが…。

 ところが少子化が加速し、高齢世代が多い逆ピラミッド型になると機能不全に陥ったことになります。
 年金額を維持しようとすると、現役一人あたりの保険料負担がどんどん重くなりますが、現役世代の負担増をやめれば年金減額につながることは間違いないでしょう。

 国民皆年金が達成できていない新興国はもっと深刻です。
 例えば25年に65歳以上が総人口の2割を超えるタイでは、約1400万人いる正規労働者でも2割しか年金制度に入っていない状況です。

「老後危機克服」へのヒントがオランダに

 今後、世界人口が減って経済が長期停滞局面に入れば物価や金利の上昇圧力はおのずと弱まることは間違いないでしょう。
 インフレを前提にしてきた世代間扶養のメリットも次第に薄れ、安定的に運用益を稼ぐことにさえ黄信号がともる状況です。

 老後危機克服へのヒントはオランダにあるかも…。

 平均寿命が延びると、年金を受け取る年齢も自動的に上がる仕組みを採り入れ、少子高齢化の影響を和らげてきたのです。
 「世界で最も安定した制度」との評価に安住せず、低金利時代に対応すべく企業年金改革も急がないてはならないでしょう。

 23年度の導入を目指す新制度は、いわば企業年金を「共助」から「自助」へと近づける内容です。
 将来の年金額を約束する確定給付型から、運用次第で年金額が変わる確定拠出型に移行していきことは間違いないでしょう。
 若い世代が納めた掛け金が上の世代の年金に回る状況を防ぐということになります。

 年齢別に掛け金を管理し、若年層の掛け金は株式など高リスク投資で高い運用益を狙うことになります。
 引退が近いシニアは安全資産で運用するが、こんな対応も想定しています。

 人口減の世界の未来図で、世代間で支え合う年金制度に大きく依存するのはもはや危険な状況です。
 「個人の資産形成や、企業年金などの私的年金を税制優遇などで支援する重要性が高まっていく」。
 自助への仕組みを強化しつつ、テクノロジーも活用して人々が長くいきいきと働ける環境をどうつくり出すかが焦点になるでしょう。
 危機が現実になる前に世界は手を打つ必要があるのではないだろうか。




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