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「日本円の実力」が“劇的に低下!   日本は、今ヤバすぎる事態に!

 円の「実力低下」がとんでもないことに
 円の実質実効為替レートが約50年ぶりの低水準に下落している。

 それが示唆するのは、わが国経済の実力が低下していることです。

 通常、米ドルと円など二国間の通貨の交換レートを表す名目の為替レートと異なり、実効為替レートはある国の通貨が、他の複数の通貨に対してどれだけ変化しているかを示しています。

 国際決済銀行(BIS)は1964年以降の円の実質実効為替レートを公表しています。

 その推移は、第2次世界大戦後のわが国経済のヒストリー=歴史と符合するのです。

 1990年代の前半まで、わが国では企業家のアニマルスピリットが高まり、ヒット商品が多く生み出されたことなどが経済の実力向上を支えた。

 それが実質実効為替レートの上昇に繋がった。

 しかし、その後、わが国の経済は長期の停滞に陥った。

 その結果として世界経済における日本経済の存在感は低下し、円の実質実効為替レートも下落基調にある。

 今後、わが国経済が実力を高めるためには、政府が構造改革を徹底して進め、民間企業の新しい取り組みを支えて産業構造の転換を実現することが不可欠だ。

 それがどうなるかが、円の実質実効為替レートの浮上に決定的影響を与える。

実質実効為替レートで確認する円の実力

 実質実効為替レートとは、各国との貿易量や物価水準を基に算出した通貨の実力を表す指標のことだ。

 円の実質実効為替レートは日本銀行やBISが算出し、特定の時点を100として指数化される。

 100を上回れば、その通貨の実力は高まっている。

 BISによると2022年1月の円の実質実効為替レートは69.81だった(ナローベース)。

 それは約50年ぶりの水準だ。

 BISのデータをもとに円の実質実効為替レートの推移を確認すると、その上昇と下落は、第2次世界大戦後から足許までのわが国経済の変化と整合的だ。

 1960年代から、1990年代前半まで円の実力は高まった。

 戦後、繊維など軽工業の輸出競争力向上によってわが国経済は復興を遂げた。

 その後、経済の工業化が進んだ。

 具体的には鉄鋼や石油化学分野で生産性が向上した。

 それは、家電や自動車など多くの工業製品の創出を支えた。

 それを象徴する企業として、ソニーグループ(ソニー)とホンダがあげられる。

 両社は戦後に創業した企業だ。

 1946年に創業したソニーは、トランジスタラジオによって成長を遂げ、その後は、“ウォークマン”、“トリニトロンテレビ”、“ハンディカム”など複数のヒット商品を生み出すことによって成長した。

特に、ウォークマンは世界のミュージック・ライフを一変させた。

ここへきて「日本円の実力」が“劇的に低下”…いま日本で起きているヤバすぎる事態

 また、1948年創業のホンダは二輪車の生産からスタートし、その後は四輪車や飛行機分野に進出した。

 1970年代にホンダは“CVCCエンジン”を開発した。

 それは当時、達成が困難と言われていた米国の排ガス規制(マスキー法)をクリアし、ホンダが高い成長を実現する原動力になった。

 そうした企業の創業経営者の存在が、世界経済におけるわが国経済の実力向上に貢献した。

 世界銀行のデータによると1987年にわが国の一人当たりGDPは米国を上回った。

 資産バブルの膨張も重なってわが国経済は成長し、円の実力も向上したのである。

下落が止まらない円の実力

 その一方で、1980年代には半導体など日米の貿易摩擦が熾烈化し始めた。

 1986年には日米半導体協定が成立し、わが国は市場開放などを受け入れた。

 1990年代初頭には資産バブルが崩壊し、株価や不動産価格の下落によって景気は減速した。

 不良債権処理の遅れから、景気の停滞は長期化した。

 その状況下、わが国企業は新しい取り組みを増やすよりも、雇用の保護などに傾注した。

 政府はいずれ景気は回復すると考え、1997年度まで公共事業関係費を積み増した。

 それには、建設業界などの雇用保護の意図もあった。

 しかし、需要が飽和した中で景気対策が積み増されても経済は成長しない。

 1997年11月以降は金融システム不安が発生し、その後はデフレ経済が深刻化した。

 海外では中韓などの新興国の企業が成長して国際分業体制が加速し、わが国企業の競争力は奪われた。

 リーマンショック、東日本大震災の発生はわが国経済に大きな負の影響を与えた。

 1995年4月に実質実効為替レートは143.17の過去最高を記録した。

 その後は基本的に下落基調だ。

 アベノミクスによる異次元の金融緩和は円の名目為替レートを押し下げた。

 それによって企業業績はかさ上げされた。

 しかし新しい産業を育成して新しい需要を生み出すという経済の実力向上に必要な改革は不十分だった。

 コロナショックが発生して以降は、世界的な物価上昇圧力の高まりによって米金利などが上昇し、円が減価している。

 わが国のデジタル化の遅れ、縦割り行政の弊害などは、景気停滞懸念を強める要因だ。

 そうした複合的な要因が円の実力を約50年ぶりの低水準に下落させた。

 その状況を脱するためには、岸田政権が労働市場の改革などを断行して個人や企業がより積極的に新しい取り組みを増やす環境を整備することが欠かせない。

 それが難しい場合、円の実力低下は避けられないだろう。





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