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過剰在庫の悪影響について

本日、ご相談企業から過剰在庫の悪影響について、ご質問を受けたので簡単に解説をしたいと思います。
事業や商品の特性にもよりますが、上記のようなメリットを享受し、業務を円滑に進めるためには、ある程度の在庫は必要です。しかし過剰にもってしまうと、下記に示すような悪影響も発生します。
(1)廉価販売や廃棄によって、収益が悪化する
売れ行き以上に生産してしまった製品は、過剰在庫として残ります。
その場合、値下げして廉価販売するか、それでも売れなければ廃棄することになります。
これでは当初見込んだ売上や利益が得られないばかりか、投入した資金の元本も回収できず、損失が発生し、収益の悪化を招いてしまいます。
(2)陳腐化や品質劣化によって、商品の価値が低下する
一般的には、在庫は保有しているうちに品質が劣化し、商品価値が低下します。
また、品質は変わらずとも、売れ残っている間に商品自体が時代遅れとなり(陳腐化と言います)、商品価値が低下してしまいます。
これも廉価販売か廃棄することになり、損失が発生します。
(3)保管スペースを多く必要とする、管理費用が発生する
当然のことですが、在庫には保管場所が必要となります。
いくら倉庫に余裕があるとは言え、在庫が増えて床や通路に置くようでは、作業性や管理精度が低下します。
在庫が置ききれず、ほかの倉庫を借りるようになれば、新たに管理の人員と費用が必要となります。
(4)付加価値を生まない無駄な作業が発生する
モノには必ず運搬がともないます。工場から倉庫へ、倉庫から販売店へ、また、売れ残ったときには販売店から倉庫への返品や、倉庫間の横もちも発生します。
しかし、在庫の運搬自体は付加価値のない無駄な作業です。
運搬以外にも、入れる(入庫)、出す(出庫)、数える(棚卸)といった付帯作業も必要になりますが、これらもやはり付加価値を生まない作業です。必要以上の在庫をもってしまうと、これら無駄な運搬や付帯作業が雪だるま式に増えていくことになります。
(5)在庫維持の費用が増加する
在庫には保管場所が必要ですが、倉庫の賃借料、光熱費、保険料、固定資産税などの経費がかかります。
また、在庫は運搬や付帯作業を伴いますが、そのための輸送費、人件費が必ずかかります。
さらに最終的に廃棄すれば、廃棄のための輸送費用、処分費用もかかります。
このような過剰となった在庫は、その生産に要した電力やそのほか資源、運送に要した燃料など、多くのエネルギー資源の浪費にもつながります。
在庫はいったんもってしまうと、それを維持・管理・処分するために、種々の費用が発生します。
こうして、在庫はただ置いておくだけで、気づかないうちに貴重な資金を使っていることになるのです。


図1 在庫コストのイメージ図


(6)キャッシュフローが減少する
在庫は棚卸資産であり、その企業の資金が形を変えたものです。
在庫を抱えるということは、自由に使える資金が減る、つまりキャッシュフローが減少し、その企業の資金繰りを圧迫してしまうことになります。
現金としてもっていれば、流動性も高く、他分野への投資や運用のチャンスもありますが、在庫として資本を固定化してしまうと、その資本からの利益率はゼロとなり、金利の負担がより重くなります。
企業の経営管理・経理部門としては、資本の固定化を避け、キャッシュフローを増加させることが重要な目的であり、そのためには、まず過剰な在庫を減らすことが、自社内ですぐに取り組むことができる、優先度の高い手段になります。
以上のように、在庫にはメリットもありますが、悪影響もあります。
とくに、在庫維持費用の増加やキャッシュフローの減少は現場ではあまり感じられないため、通常もっとも見過ごされている点です。
さらに在庫に頼ることで生産納期を縮めて最小の在庫で最適な運用をしようという現場の意欲を低減させてしまいます。
事業の維持・拡大を進める立場からは、ある程度の在庫を戦略的にもち、売上・利益の増加を図ることは必要です。しかし、企業を経営する立場からは、あらためて在庫をもつことの悪影響も認識し、会社としてどちらを重視するか、どの程度の在庫をもつか、方針を明確に決めておくことが重要です。
生産計画担当者としては、その方針に沿った形で、生産計画を立てていくべきでしょう。


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