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土地の相続は登記申請漏れはペナルティに…

はじめに

 所有者不明の土地が増えていることが、たびたびメディアなどで取り上げられている。
 「相続で不動産を取得 (もしくは相続する予定) した」という人もいるだろう。そのような人は、相続登記をしっかり行っているだろうか。

 「これまで登記変更をしていなかったけれど、行政から何もいわれていないし、周りの人も同じようなものだから、このままで大丈夫だろう」と思っていたとしたら、大間違いです。
 実は、「所有者不明土地問題」を解決するための法律が令和3年4月に成立し、相続登記が義務化されました。
 罰則も規定されたので、「これくらいなら大丈夫」と思って放置しておくと、本当に痛い目に遭うでしょう。

所有者不明土地の解消に向けた法改正の内容

 「所有者不明土地」とは、不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地、もしくは所有者が判明しても所在不明で連絡がつかない土地のことを言います。
 所有者が亡くなった際に相続登記がされないと、登記簿を見ても持ち主がわからない状況に陥ります。
 この問題は東日本大震災の時に顕著に表面化しました。
 復興事業の用地取得の際に、数千件の所有者不明土地の権利移転の問題などで調整が難航したのです。
 また、土地が管理されずに放置されるケースが多く、老朽化やゴミの不法投棄など近隣への悪影響も問題になります。
 そこで、所有者不明土地の「発生の予防」と「利用の円滑化」を目的に法律が改正されましたが、令和3年4月21日に成立した「民法等の一部を改正する法律」と「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」であります (公布は同月28日) 。

改正のポイントは以下の3つだ。それぞれの概要を見ていこう。

1.「発生の予防」の観点から不動産登記法を改正

 平成29年の国土交通省調査によると、所有者不明土地の割合は22%に上り、発生原因の66%は相続登記の未了、34%は住所登記変更の未了です。
 これまで相続登記の申請は義務化されておらず、申請しなくても不利益を被ることは少なかったため、申請しない人が多かったのです。
 そこで、これまで任意とされていた相続登記や住所等変更登記の申請を義務化し、それらの手続の簡素化・合理化策を盛り込んでいます。
 不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請を行うことを義務付けています。
 正当な理由のない申請漏れには、過料が科されます。

2.「発生の予防」の観点から新法を制定

 近年は土地利用ニーズの縮小などにより、土地を相続しても手放したいと考える人が増えており、それが土地の管理不備を招いています。
 そこで、相続などによって土地の所有権を取得した者が、その土地の所有権を国庫に帰属させる制度を創設しました。
 法務大臣の承認を受けた上で10年分の土地管理費相当額を負担する必要はあるものの、国家帰属という選択肢を用意して、所有者不明土地の増加を未然に防ごうとするものです。

3.「利用の円滑化」を図る観点から民法などを改正

 民法などを改正し、所有者不明土地の管理に特化した所有者不明土地管理制度を創設するなどの措置を講じました。
 この制度では、所有者不明土地・建物については、裁判所が管理命令を発令し、裁判所の許可があれば売却することも可能になります。
 管理不全土地・建物 (所有者が適切な管理をせず他人の権利が侵害される恐れがある場合) については、管理人の選任を可能にします。
 また、不明共有者がいる場合も、共有物の利用・処分を円滑に進めることが可能になる仕組みを創設しました。

登記をしないと痛い目に遭う

 前述のとおり相続登記の申請が義務化され、相続登記をしない場合の罰則も設けられました。
 正当な理由がないのに、相続を知ってから3年以内に相続登記の申請をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。
 これは「この法律が成立する前から所有している不動産」も対象となるため、注意が必要になります。
 では、いつから義務化されるのでしょうか。
 具体的な時期は今後決定されるが、相続登記の義務化は令和6年に開始する予定です。
 また、相続登記の申請については制度開始から3年間の猶予期間があります。
 そうはいっても、その間に予期せぬ相続が発生して問題が複雑になったり、書類を集めることに手間取ったりすることも考えられています。
 できるだけ早めに対応しておいた方が良さそうです。

相続した不動産がある場合は注意が必要

 ここまで、所有者不明土地の解消に向けた法改正のポイントや、注意点などについて解説してきました。
 相続登記の申請はこれまで義務化されていなかったが、今回の法改正で令和6年から義務化される予定です。
 ある程度の時間的猶予はあるが、相続した不動産を所有している場合は、早めの対応を心がけたいものです。
 まずは、相続の際に登記を行ったかどうかをあらためて確認しよう。



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