企業型DC、改正で恩恵拡大
「企業型の確定拠出年金(DC)の制度変更についての相談が増えてきた」というようです。
会社が原則掛け金を出し、自分の運用次第で将来の年金額が変わる企業型DCは、掛け金を積み増せる加入可能期間が、2022年5月から5年延びて70歳未満に変わり、転職や再就職でも使いやすくなっています。
ただいったん受給すると、延長の恩恵を受けられなくなることはほとんど知られておらず要注意のようです。
1.最大70歳未満まで加入可能に
DCには自分で掛け金を出す個人型(iDeCo)もある。
2021年2月時点の企業型DCの加入者は約750万人で、iDeCo(3月時点で約194万人)を大きく上回る。
運営管理機関連絡協議会によると資産額は2020年3月時点で約13兆6000億円だということです。
まず企業型DCの改正内容ですが、現在、企業型は原則60歳未満の厚生年金被保険者が対象となります。
しかし会社が規約に定めれば、60歳前と同じ会社(場所などで異なる事業所ごとにDC加入を管理している場合は事業所)で引き続き働く場合に限り、65歳未満まで加入できます。
規約をそのように決めているのは2021年3月時点で企業型DCの導入会社の3割だってようです。
転籍などに伴うグループ内の別会社勤務だったり、いったん退職した後の再就職だったりすれば「同じ会社(事業所)で引き続き働く」にあたらないため不適用になり、対象がかなり限られており、来年5月以降は規約で加入可能と決められる内容が「70歳未満」までに延長になるほか「同じ事業所で引き続き働く」という制限もなくなり、厚生年金被保険者なら勤務先の規約しだいでグループの別会社でも、転職やいったん退職して時間を置いた後の再就職でも最大70歳未満まで企業型DCに加入できるようになります。
2.受給すると再加入できず
要注意なのは、いったん企業型DCを受給すれば再加入ができないことです。
企業型DCの受給を開始できるのは原則60歳で、一時金でも年金でも受給でき、60歳で定年になった後に働き続ける場合も収入が大きく減るのが一般的なので、60歳になって企業型DCを受給し始める人は多いです。
しかし受給すると、規約で60歳超まで加入できる事業所でその後に働く場合も、企業型DCへの再加入はできず、「いったん割った貯金箱は使えなくなる」というイメージです。
では60歳で企業型DCの加入が終わり、将来の再加入の可能性を残しておきたい場合はどうすれば良いのでしょうか?
受給せずに従来の資産の運用だけを続ける「運用指図者」という立場になっておけば、その後に60歳超の加入可能な事業所で働く場合、再加入は可能です。
もちろん企業型DCは会社が原則掛け金を出すため、会社に財務的な負担が生じてしまいます。
確定拠出年金教育協会の2020年の調査では、将来延長を検討しているのは1割弱と少なく、企業型DCの資産を受給せずにいても、結局は将来、60歳超で加入可能な会社で働くようにならないケースもあり得えることです。
ただし「今回の改正や高齢者雇用延長の動きをうけ、加入延長の規約変更をする会社は今後一層増えていく可能性がある」と確定拠出年金の専門家は指摘しています。
「当面の資金に余裕がある一方で、将来の企業型DC再加入も視野に入れたい場合は、受給しないでおくのも選択肢といえる」。
ちなみにiDeCoの加入者が60歳超になった時、iDeCoの資産の受給を始めていても、その後に60歳超で企業型DCの加入可能な事業所で働く場合は、企業型DCに加入できます。
iDeCoと企業型DCは「違う貯金箱」だからだ。
3.受給開始時期の選択肢も拡大
2022年4月には、受給開始時期の選択肢も広がり、現在は最大70歳になるまでに受給を開始しなければならないが、75歳までに延長されるということで、長く運用が可能になっています。
対象者は2022年4月時点で70歳未満の人で、ただ「受給の先延ばしや受給をするときの口座管理料が会社ではなく個人負担の場合は、金額などもチェックしたうえで判断したい」ところではあります。
このほか2022年10月には企業型DC導入会社でもiDeCoの併用が容易になり、現在は企業型DCの上限金額を引き下げてiDeCoを併用できるようにする規約変更が必要なため、企業型導入会社の数%しかiDeCoは併用できていない状況です。
しかし改正後はiDeCoとの併用が可能という規約がなくても、企業型DCの掛け金が毎月払われることを条件として、iDeCoなどの上限の範囲内で併用できるようになるようです。
今の中小企業の経営状況や日本の経済状況を考えると従業員が定年を迎える時にしっかり退職金を支払えるか?という不安を抱える中小企業も少なくはありません。
そして、従業員の方々も老後資金を金融機関へ貯蓄していても大した金利もつかないので、どう運用するかと頭を悩ませていることもあり、企業DCやiDeCoが脚光を浴びているのでしょうね。
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