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年金制度の欠陥が遂に限界に…だけど政権与党はこの議論をしない???(2022年4月から年金支給額の引き下げが…。

年金額を実質的にカット

 今年4月から、公的年金の支給額が0・4%引き下げられます。

 保険料を支払っている現役世代の賃金が減少したことにあわせたものです。

 引き下げは2年連続で、過去10年間で見ると'14年の0・7%に次ぐ引き下げ幅になっています。

 一方、「マクロ経済スライド」は昨年に引き続き発動されなかった訳です。

 こちらは現役世代の負担を軽減するため、'04年の年金改正により導入された制度で、聞いたことがある人も多いでしょう。

 社会情勢に応じて年金額を「自動的に調整」する仕組みなのだが、この言い方はいかにも役所的で、要は年金額を実質的にカットする仕組みです。

 通常、前年に比べて2%の物価上昇があった場合、本来的には年金支給額も2%引き上げないと、実質的な支給額は目減りするというカラクリになっています。

 ところが、マクロ経済スライドを発動する場合、年金支給額を物価上昇と同じ2%分増やすのではなく、一定の調整率を差し引いた割合でしか引き上げないということだそうです。

 たとえば、調整率を0・9%とすると、2%から0・9%を差し引いた1・1%がマクロ経済スライド発動時の引き上げ率となります。

 実質的に、0・9%分の年金を削減しているのと同じ効果があるのです。

 まさに言葉のマジック! ごまかしでしょう。

 この仕組みを理解していない受給者からすれば年金額は「名目的に」1・1%増えているので、損をしたという実感を持つ方は少ないでしょう。

 そもそも、マクロ経済スライドという言葉の響き自体が、削減というイメージを想起させにくいでしょう。

 受給者の不満を回避するよう考え抜かれた仕組みと言えるでしょう。

 もっとも、'04年にマクロ経済スライドが導入されて以降、発動されたのは過去3回('15年度、'19年度、'20年度)しかありません。

 なぜなら、「物価や賃金の上昇幅がマクロ経済スライドの調整率より小さい場合、もしくはデフレによって物価や賃金がマイナス(▲)の場合には、マクロ経済スライドを発動しない」というルールがあるからです。

 マクロ経済スライドの調整率を先程と同じ0・9%と仮定しましよう。

 マクロ経済スライドを厳密に適用する場合、賃金の上昇率が0・2%にとどまった場合は0・7%分、賃金の上昇率が▲0・2%の場合は1・1%分の年金を引き下げる必要がありますが、前述のようにこうしたケースの場合はマクロ経済スライドは適用されないのです。

 引き下げ額は「名目額」が前年度を下回らない範囲内にとどまり、なおかつ引き下げ率も賃金・物価の下落率分が限度になります(4月からの0・4%という引き下げ率も、過去3年間の名目賃金の変動率の▲0・4%と揃えたものだ)。




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