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指示に従っただけなのに…誘導員の指示で事故発生時の責任は誰に…

誘導員に法的な権限はないが…

 誘導員の業務は法律で「人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し防止する業務」と定められています。
 ただし、この法律によって特別な権限が与えられているわけではなく、他人の権利や自由を侵害したり、正当な活動に干渉してはならないとも記されています。
 こうしたことを考えると、誘導員は強制的に車を止めることはできず、ドライバーもまた誘導に従う法的根拠はないということになります。
 つまり、車の誘導に関して万が一、誘導されたことが原因で事故が起きても、誘導員には責任が生じないことになります。
 最終的にはハンドルを握っているドライバーの責任になってしまうのです。

過失が大きい場合、誘導員の責任が問われるケースも

 とはいえ、路上で車や歩行者を誘導している以上、過失が大きければ、誘導員の責任が問われるケースもあるようです。
筆者は教官時代に、全国で発生した過去の交通事故の事例を学習しました。 
 誘導員のミスで車が歩行者に突っ込んでしまい、数人がケガをするという事例がありました。
 その事故では、誘導員の明らかな誘導ミスで負傷者が出たとして、誘導員とその誘導員が所属している会社が責任を問われるという結果になっていました。
 明らかな誘導ミスで数名の負傷者が出てしまったため、誘導員の過失が問われたと思われます。
 誘導員の指示に従ったドライバーに過失があるという判断はさすがにできなかったのでしょう。

誘導員を警察官と勘違いしてしまったケースも……

 教習所での卒業検定中にこんなことがありました。
 真夏の炎天下、信号機のある交差点で工事が行われていました。
 そこでは、誘導員が車と自転車、歩行者の誘導に当たっていましたが、あまりの暑さのためか、誘導員の確認がおろそかになっているように感じられました。
 その誘導員は、信号の確認を怠り、検定中の教習車に対して赤信号が出ているにも関わらず「直進してください」という指示をしてきました。
 教習生は、その指示に従い、赤信号を直進しようとしてしまい、検定員に補助ブレーキを踏まれました。検定では、補助ブレーキを踏まれると不合格となります。
 誘導員のミスでその検定は中止となってしまったのです。
 さらに、現場の誘導員は、誘導に従わなかった教習車に対して罵声を浴びせるなど怒りをあらわにしたのです。
 現場は騒然としましたが、検定員は信号が青に変わったタイミングで教習生に発進するように指示を出し、誘導員に対しては窓を開け、信号に従うのが義務なので、と告げてその場をあとにして事なきを得ました。
 その後にわかったことですが、教習生は誘導員を警察官と勘違いしてしまったようです。
 我々教官からしてみれば、警備会社名が書かれた蛍光色のベストを着用していたので、すぐに警察官ではないと判断できました。
 誘導員の指示に従うことは決して間違いではありません。
 しかし、誘導員の指示、信号や標識、標示に従い、最終的な安全確認をすることも忘れてはいけないと、考えさせられた出来事でした。
 とはいえ、誘導員の指示に法的な効力がないからと言って、指示に従わないことは極めて危険です。そこに誘導員が配置されているということは、何らかのイレギュラーがあり、危険が潜んでいるからとも言えます。
 誘導員に従った上で、最終的な安全確認を徹底ましょう。


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