陽は落ちきってない

午後10時20分。星々のスイッチはとうに押されたこの時間に、響く音は虫の声、一定のリズムで鳴る車の音。帰宅を急ぐ自転車のチェーン。そのひとつひとつが大きな風船に入っては割れ、夜の音と化す。

不意に窓を開けたくなる時間。遠くの海ではこれからだと言わんばかりに漁の準備を始める人達の姿が見えなくもない。ほんの何千キロも先に揺れる船。

そのまたずっと先では、日が昇り始める。その場所ではまだ夜は明けていない。一周して戻ってみると、こちらでもまだ日は堕ちていなかった。

おやすみ、おやすみなさい。数々の小さな光の中で、愛し合う人達のコミュニティが閉ざされる。

おやすみなさい。またあした。

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