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短編小説集 『新しい風景』

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ショート・ショートを作品を収録しています。
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#鼻毛

鼻毛の王様(2) (2/2)

 気がつくと私は自室にいた。鼻に違和感を感じ、そこでハタと思い出す。そうだ、鼻毛が5mになったのだ。相変わらず鼻毛は私の鼻から垂れ下がっていた。つまり、これは先ほどの夢の続きなのだろうか。  ドン、ドン  不意にノック音が聞こえてドキリとする。ガチャリとドアが開き、息子が入ってくる。白衣を来た息子はおもちゃの聴診器を首から下げて非常に不機嫌な顔をしている。 「15番目だから、結構かかるよ」 それだけ言い残すと息子はさっさと部屋を出て行った。 15番目? どうゆうことな

鼻毛の王様(1) (1/2)

 日曜日の昼下がりのことである。私は鼻に違和感を感じ、スっと鼻に手を伸ばした。指に当たる鼻から伸びる一本の長い毛。そこで私は私の鼻毛の内の一本が、異様な長さになっていることに気が付いた。たぐり寄せてもたぐり寄せても続くそれの長さはおよそ5m。概算ではあるが、部屋の長さから考えても、明らかにそれは5m〜6mはあるのだ。  人間の鼻毛はそんなに伸びない。それは多分遺伝子レベルで決まっている。ではなぜ? 当然、考えてもそんなことはわからない。  私は深く考えるのをやめ、ハサミをも