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社長が「社長」であることを誇示する儀式

私の勤務する会社の社長は創業者です。
会社登記上も代表取締役であるし、株式も8割もっているので、わざわざ「俺が社長だ」と言わなくてもわかるのです。
しかしながら、たまに主張したくなるみたいなのです。
今回はこの主張について考えてみたいと思います。

社員がつくる「事業部計画書」

うちの会社には「事業部計画書」というものがあります。次の半期何をするのか事業部の社員全員が参画して、自分たちで計画をつくります。
計画をつくったら、そのとおり実行して、チェックして改善します。
いわゆるPDCAサイクルです。社員が中心となって計画から改善までをまわす。とてもよい取り組みです。
そうです。このとてもよい取り組みが「社長の主張」を生み出す場となるのです。
それは一体なぜなのでしょうか?

各事業部がてんでバラバラに事業部計画書を作成してしまっては、会社の行く先もバラバラになってしまいます。するとどうしてもその計画を「承認する」という行為が必要になります。一般的に役職者の作った計画を普通の社員が承認するという行為はなかなかに難しいので(書きながら「あれ、少し面白いかも?」と思いました。逆承認。)会社のTOPである社長が承認することになります。

この「承認」という行為。作られた計画が「会社の方針に沿っているか?」「目標やスケジュールに整合性はあるか?」「成果が出るか?」など客観的な基準に基づいて承認されるものであると理解できれば、社員もやる気になるでしょう。旅行の計画を楽しく立てて、出発当日を待つ。そんなワクワクを感じることができます。

社長のための「事業部計画書」

しかしこの「承認」の意味が「社長自信が社長であることを自分と社員に対して認めること」となってしまうと厄介なのです。
うちの場合、作成された計画がどんなによいものであったとしても、一発で承認されることはありません。重箱の隅をつつくような指摘や煙に巻くようなダメな理由を言われ、突っ返されるのです。
それでも社員は素直なので考え再度提出します。今度は先ほどとは全く違うことを言われる。さらに混乱します。この混乱が煮詰まった頃ようやく承認が出る。承認されるのは「社長の計画」か最初に出した計画と同じものだったり・・・

すると社員はどうなるか?「社長から承認をもらうための計画」を作るようになります。上げたい成果も現状起きている課題も関係ありません。社長が好きそうな計画、社長の言葉が入った計画、作るのに苦労した痕跡がわかる計画(メモや付箋の数)が承認されるのです。
自分たちで行きたい場所、食べに行きたいお店、宿泊先をいくら計画しても承認されることはなく、「決められた旅のしおり」を押し付けられるだけ。ワクワクもしないし、きっと旅行も楽しくはないでしょう。

さらに社員は作った計画は計画のままで終わることを知っています。計画は社長自身の承認を満たした瞬間にその役目を終えるからです。

儀式は儀式として必要

ではどうしたらよいのでしょうか?
当時私は考えました。相当がんばりました。上長だけを集めて目標と方針を決め、メンバー全員で数日前からすり合わせをおこない、「よし!当日はこれでいこう!」と準備をしました。
しかし結果は変わりませんでした。むしろ「あれだけ準備したのに・・・」というムードになってしまい、私としては申し訳ない気持ちでいっぱいに。この失敗をなんどか繰り返し、そして悟りました。

「このイベントは、社長が社員に対して俺が社長であると認めさせる儀式なのだ」と。するとすべて合点がいくようになりました。
そうなのです。ナンバー2に必要なのは「社長の自己顕示欲を満たす場をつくる」ことなのです。そういう場をつくってこなかったのは私=ナンバー2だったのです。

入学式も卒業式も結婚式もお葬式も必要なのです。(私は小学生の頃から、なんで毎回こんな無駄な事してるのだろう?と不思議に思っていました)一体感を高める、ひとつの区切りになる、みんなに知らしめる、などなどいろいろと理由があるのだと思います。お葬式のお経も誰も何を言っているのかわからないけど必要なのです。そういうものが儀式や式典だと思うのです。

なので社長が何を言っているかわからなくてもいいのです。自分でもわからないのです。(あ、お坊さんはわかると思います・・・)うちの場合には先に述べたようなイベントになってしまいましたが、社長が主役となるイベントを何かしら用意してあげる必要があります。
社長が社長として脚光を浴びる機会をつくる。社長の自己承認欲求を満たす。これもナンバー2の大事な仕事なのかもしれません。

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