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名曲⁉︎コンセントピックス『顔』解説

皆さんはコンセントピックスというバンドをご存知だろうか。
知らないなら今すぐYouTubeに行って今すぐ聴いて欲しい。
今すぐ「コンセントピックス 顔」と調べるんだ!

よし聴いてきたな?じゃあ、その曲の魅力について語ろうではないか!

この曲にはとてつもない破壊力がある。
特にサビの部分で繰り返される「顔がキライ」という歌詞は衝撃的。
この曲を聴いて「もしかしたら、オレもあの人にそう思われてるかもしれない⁉︎」なんて顔を気にした男性もいるかもしれない。

しかし、この曲は「せっかくいい男なのに、顔だけがなぁ」と嘆いているものでないのだ。
では、彼女たちはこの曲を通して何を伝えたかったのだろうか?
歌詞と共にその真意を探っていこう!

コンセントピックス
作詞・作曲:よしだみつぐ

あなたはとてもいい人ね
性格だって悪くない
お茶もごちそうしてくれるし
悲しい時はなぐさめて
話題が豊富で新鮮
いつも笑っていられる
少しまがぬけてるけど
気を使わないですむから
だけどいつもうつむくだけの

何も言えない私だから…

※顔がキライ 顔がキライ
アンタの顔が きらいなだけ
ごめんね 君はとてもいいひと
だけど 顔がきらいなの

ゆうべ一人のベッド あなたの夢を見たのよ
そして眠れず朝まで ひつじ数えて1.2.3.4
会いたいわけじゃないのに なぜか毎日会うのは
きっとそういう運命なの 思い込んではみるけど
だけど私自信がないの
あなたの顔をまともに見る



あなたはとてもいい人よ 足は長いし手も長い
着てる服はみな高級 おまけに金のネックレス
グッとしびれるハスキーボイス
灼けた素肌細い腰
いつも肩を抱かれるたびに 恋の予感を感じるの
街の灯り 喫茶店のドア
映る顔を見てトリハダが…


以上がこの曲の歌詞である。
確かに、初めてこの曲を聴いた時は、「この男性、他はいいのに、顔だけが許せない」と嘆いている歌だと感じるだろう。しかし、これではいけない。
なぜなら、この曲のジャケットにメッセージが隠されているからだ。

これがそのジャケットだが、実は真ん中の部分が銀色で構成されており、反射するような仕掛けになっている。まるで鏡を模したようになっているのだ。
これはどういう意味か?

これを踏まえた上で、よく言われる解釈を見てみよう。
それは、人の顔にケチつけてばかりいる女性に対して「人の顔に文句言ってねぇで自分の顔見てみろ!このタコ!」と批判しているのではないか、という解釈である。
確かに、友達が「あの人、面白くて性格もいいんだけど、顔がなぁ、、、」なんて自慢げに話してきたら、すぐさまソイツに鏡を見せてやりたい。「お前はそんなことを言えるご身分か?」そう尋ねながら、そのまま鏡で引っ叩いてやりたいぐらいだ。

しかし、この解釈もまた間違っている。
なぜなら、それでは歌詞全体との整合性が取れないからだ。
もしウザイ女への批判、そして、「人を顔で判断するのは良くない!」と主張したいだけであれば、徹底的にウザイ女を叩きのめし、「人を見た目で決めつけるな!」という方針で歌詞が綴られればよい。
しかし、この歌ではその方針とは全く関係ないような、男性に対しての心情表現が細かくなされている。

『ゆうべ一人のベッド あなたの夢を見たのよ
そして眠れず朝まで ひつじ数えて1.2.3.4
会いたいわけじゃないのに なぜか毎日会うのは
きっとそういう運命なの 思い込んではみるけど』

特にこの部分、これは明確に恋心を歌っている。
ウザイ女の恋心を描いているとでもいうのか⁉︎いや、そうではない。

じゃあ、純粋に「大好きな人だけど、顔だけが納得いかない」と捉え直した方が良いのだろうか?
いや、やっぱりそれではジャケットの鏡の意味はがよく分からなくなる。
では、どのように解釈すれば良いのか?

実に明快に、この曲を理解する解釈がある。
それは、「キライな顔は、男性の顔でなく、私の顔である」という解釈だ。
つまり、「顔がキライ」の矛先は男性でなく「私」に向いているのだ。
では、なぜそのように言えるのだろうか。

注目したいのは、サビ前の歌詞である。三つ並べてみよう。

『だけどいつもうつむくだけの 何も言えない私だから…』
『だけど私自信がないの あなたの顔をまともに見る』
『街の灯り 喫茶店のドア 映る顔を見てトリハダが…』

まず、初めの二つの歌詞について。
ここでは、ある男性に対する恋心を歌った後に「だけど」という逆説表現を挟み、自分の自信のなさ、ハッキリとものを言えないモジモジした、私の性格が描かれている。
そして、三つ目の歌詞では、ドアに映った顔を見る、という描写を挟んだ上で、「顔がキライ」というサビに繋がっている。もし、仮に男性の顔がキライなのであれば、わざわざ「映る顔みてトリハダが…」なんて回りくどい言い方をしなくてもよい。だって、目の前にいつでもキライな顔があるはずだから。
したがって、これらの歌詞は、「自分の顔に自信が持てないという思いを描いている」と気づくわけだ。
そしてこの解釈は、「ジャケットの鏡が自分の顔を映している」ということに対しても納得である。

このように「意中の男性と恋をしたい」という感情と、「それでも自分に自信を持てない」という感情の対立が見事に表現されている。
私は彼が大好きだけれど、あの人と比べると私なんて不釣り合いに感じる。でもやっぱり好きだから、一緒に喫茶店に行ってみる。喫茶店へ向かう途中、彼と共に過ごす時間が楽しくて、夢中になりながら歩いていた。彼のスタイルはバツグン。話も面白いし、声もカッコいい。それまでは最高に幸せだったのだろう。しかし、その店のドアに映る自分の顔を見るなり、「ハッ!」と我に返される。自分の大キライな顔がそこに立ち現れるからだ。
この曲は、そういう私と彼との不釣り合いなもどかしさを全力で歌う、自己嫌悪の歌であるのだ。
「顔がキライ」という破壊的な歌詞は、同時に、主人公の繊細さも表現している。そして、ジャケットの仕掛けに気づかなければ、真意を理解できないというのも魅力的だ。

最後に、これを踏まえた上で、もう一度この曲を聴いて欲しい。
きっと彼女の叫びがあなたにも響くだろうから。。。

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