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【2023年】 国内外のカーボンニュートラルに関しての動向を紹介

企業の取り組みに役立つ カーボンニュートラル(CN)に関する国内外の動きを紹介します。

1.     国内における動き

省エネ法が40年ぶりに根本的に改正され、企業は今年度の再生可能エネルギーの利用状況を来年度に報告することになりました。これは、企業に対する、工場や事務所から排出されるCO2抑制の間接的な要請です。

企業の自主的取り組みとして、GX(グリーントランスフォーメーション)リーグが発足し、我が国排出全体の40%を占める企業が参加して、自主的なCO2削減目標を立て、削減を図る排出量取引も始まりました。

また、カーボンフットプリント(CFP)として、企業が提供する製品やサービスのCO2排出量についても、その情報を公開する取り決めが発表されました。そのCO2排出量の算定法についても、できるだけ実測値を使用するなど信頼できることが求められています。

以下、それぞれのテーマについて述べます。

(1)改正省エネ法の実施

2022年に改正された同法は、2023年4月1日より実施されています。
主な改正点は次の3つです。

①エネルギーの定義に、化石燃料以外のエネルギー(再生可能エネルギー、バイオマス、水素、アンモニアなど)が追加されました。

②こうした非化石エネルギーの利用向上が努力目標になります。とりわけ、4つの業種(自動車産業も含まれる)について、非化石エネルギーの利用率の目標値が設定されたことは、関係企業にとって大きなインパクトになっています。
たとえば、自動車製造業(自動車部品製造業は除く)は、2030年までに、購入電力のうち非化石電力の割合を、59%を目安として目標を設定することが努力義務となりました。

③ディマンド・リスポンス(DR)の積極的利用を促しています。
このDRとは、電力の需要が大きくなる真夏の昼間に、電力会社から買う電力を使わずに、夜間に電力を使ったり、蓄電池にためておいた電力を使ったりする。または、再生可能エネルギーによる電力が電力会社に多く供給され、過剰が予想される冬の晴れた日などに、電力会社からの電力をより多く購入するといった活動です。

(2)GXリーグによる排出量取引市場の発足

GX-ETS(排出取引市場)が4月から始まりました。2026年に本格稼働が予定されています。2030年度の排出量を2013年度対比46%削減する、という政府の目標に沿って、企業は自主的な削減目標を立て削減しなければなりません。その排出量削減計画や実績については、民間の第三者認証が義務付けられる予定です。

(3)カーボン・フットプリント(CFP)製品の政府調達

政府は、2023度より原材料調達から廃棄までに排出するCO2の量(CFP)を表示した製品を公共調達で購入するようになります。
まずは、床材のタイルカーペットが対象で、来年度はコピー機が予定されています。
CO2算定の際に使うデータも、二次的に業界の平均値を使うのではなく、できるかぎり実測やシミュレーションなどによる一次データを収集することが望まれます。

2.     国外における動き

我が国で開かれたG7サミットにて、新しい温室効果ガス(GHG)削減目標設定が合意されました。2035年までにGHG排出量を2019年比60%削減となりました。
また、欧州では、2026年度のEUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)導入に向けて準備が始まっています。さらに、欧州におけるバッテリー規制については、2024年度にCFPの申告が義務化されます。

(1)  新しい削減目標設定の合意

G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合(2023.4)の共同声明で、2035年までにGHG排出量を2019年比60%削減と発表されました。2013年から2019年に日本のGHG排出量は14%削減されていますので、この2019年比60%削減は、2013年比で66%削減に相当します。2030年度までに2013年度比で46%削減という我が国の従来の目標より、20%も削減量が増えることになります。

(2) 炭素国境調整メカニズム(CBAM)の段階的導入

この制度は、EU域外から輸入される製品が、EU域内の同種の製品と比べてライフサイクルにおけるCO2排出量が多い場合、その分を関税として徴収することを可能にします。域外からCO2が域内に漏れ出しているのは、競争上不公正という理由からです。2023年10月には輸入業者に報告義務が課されます。

(3)バッテリー規制の段階的導入

この規制は、ライフサイクルで、蓄電池などのバッテリーのリサイクルを求める規制です。
2024年7月から、製造者や製造工場の情報、バッテリーとそのライフサイクルの各段階での二酸化炭素(CO2)総排出量、独立した第三者検証機関の証明書などを含む、カーボン・フットプリントの申告が始まります。
モバイルバッテリーに関しては、2023年末までに45%を回収する義務が製造者に対して課せられます。

出典:https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/12/47bc18d866bce008.html (JETROビジネス短信)

以上の国内外の動きに対応して、中産連では無料相談、CN診断、省エネ診断、LCA支援、SBT認定取得支援を行っています。

(執筆者:中産連 主席コンサルタント エネルギー管理士 梶川)
自動車部品製造業・産業機械製造業・廃棄物処理業を中心に、温室効果ガス排出量算定・削減、省エネ診断、環境法令順守コンサルティングを行っています。

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