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身近な“空気”からカーボンニュートラルを考える

空気を賢く使えば、燃料コストが下がる

わが社は有害な薬品を使っていないから、有害な排水やばい煙を出していないので、カーボンニュートラルなどの環境問題と無縁である、と感じる人たちが多い。

そう思っている企業でも、石油やガスを燃やし、お湯を作って材料を温めたり、生産ラインで製品を自動で搬送していたりしていれば、かならず使っている物質があります。それは、「空気」です。

私たちは、空気はタダと思っています。
しかし、実際はその空気を使えば、多大なコストを費やすことになります。

今回と次回の記事で、
 ①空気はなぜ必要なのか
 ②空気の使用とは何を意味するのか
 ③空気をムダにしているかどうかはどのような数字で判断できるのか
 ④空気をムダにしないと、コストがどれくらい減るのか  
を説明します。

まず、今回は、石油やガスを燃やしている企業のケースを取り上げます。金属を溶かしたり、食品の材料を温めたりするのに熱を使っている企業があてはまります。

空気が必要なのは、空気には酸素が含まれているからです。
その酸素で石油やガスに含まれる炭素を酸化させる。これを燃焼といいます。だから、空気の使用とは、そこに含まれている酸素を燃焼に使うことです。

空気、つまり酸素がムダになっていないかどうかは、燃焼が終わった後、排出されるガスの中に、燃えずに残っている酸素の濃度(空気比*という)から判断できます。モノを温めるのに必要な分だけの酸素を入れれば、余分な燃料を使うことがなくなり、コストを下げることができます。 

 *簡易空気比=21%÷{21%-酸素濃度(%)} 
       ・21%とは空気に含まれる酸素濃度

具体的な事例で説明します。
段ボールを製造しているある企業は、石油代が年間1億4百万円かかっていました。段ボールを貼りあわせるのに必要な糊を作ったり、貼りあわせる段ボールを湿らせたりするために温水や蒸気が必要だからです。そのためにボイラーで水を熱する必要があります。
そのエネルギーコストを何とか下げたいと経営者は悩んでいました。

筆者は、まず大気汚染防止法で必要とされている排ガス濃度測定報告書を見せていただきました。なぜなら、その報告書には、排ガス中の酸素濃度(空気比)の測定結果が記録されているからです。
その空気比は1.7でした。排ガスにまったく酸素が残っていない場合は、空気比は1となるので、この企業は0.7も余分に燃料を、排ガスとして外に出してしまう空気を温めることに使っていたことになります。

そこで、省エネ法で目標とする1.2まで空気比を下げるために、業者に空気の量を調整してもらうことにしました。1.7から1.2に下げると、この企業の場合、燃料は2%削減できます(削減率は燃料の種類、排ガス温度で変わります)。
その結果、石油代は年間208万円削減することがでました。ボイラーの定期点検のときに調整してもらえれば、調整の費用はかかりません。同時に、酸素を燃焼する排出されるCO₂も削減されることになり、カーボンニュートラルにもつながることになります。

以上のようにムダのない空気の使い方を知れば、環境問題は企業のコストダウンのネタとなることが実感できます。

(執筆者:中産連 主席コンサルタント 梶川)

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