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製造業におけるサーキュラーエコノミー

1 サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミー(以下、CE)とは持続可能な形で資源を利用する経済モデルのことです。その原則は「廃棄物と汚染をなくすこと」「製品や原材料を循環させること」「自然を再生させること」の3つです。これは廃棄物の発生を前提としない点において従来のリニアエコノミーと大きく考え方が異なります。

図 1 サーキュラーエコノミーのイメージ図
出典:環境省「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書(令和3年度版)」

2  製造業におけるCEの実例

製造業におけるCEの実例は、「製品設計」「生産活動」「サービス運用」の大きく3つのアプローチに分けることができます。

① 製品設計
製品設計において、軽量化設計・コンパクト設計・リサイクルが容易な原材料の選定等を行うことで、新規の資源投入量を低減することが可能になります。また、耐久性やメンテナンス性に配慮した製品設計を行うことで、投入された資源を効率的に活用することも可能になります。

② 生産活動
工場での生産活動において、廃材のリサイクルを行うことで資源投入量を低減することができます。また、先進的な事例としては工場の排ガス(CO2)を回収し、メタンを生成して再利用する試みがあります。

③ サービス運用
サービス運用においては自社製品のレンタル化の事例があります。レンタル化は製品メンテナンスの適切な実施よる長寿命化と、使用期間終了後の回収・リサイクルの容易化という点で環境負荷の低減に対して有効です。

表1 サーキュラーエコノミーの事例

3 国内外のCEの動向とこれから

CEについては、紹介した事例以外にもISO/TC323等における規格化の検討など国際的な取り組みが行われています。これは、CEが大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした旧来の経済活動を見直し、持続可能な社会を実現するために取り組むべき重要なテーマであるという共通認識によるものです。

我が国のGXの推進においても、生産活動における資源や排出物の循環活用やビジネスモデルの見直しはCO2の経済効率的な削減を実現するキーパーツとなり得ます。当然ながら、これらは日本の製造業において不可避の課題であり、経営者はもとより社員一人一人にもCEと自社の事業を結び付ける柔軟な発想が望まれます。

(執筆者:中産連コンサルタント 中西 渉)
 高知大学出身。大学卒業後、大手ガス機器メーカーにて勤務。
 省エネ高効率製品やIoT製品の開発に従事し、2022年10月に
 中部産業連盟へ入職。
 製造業を中心に現場改善・CN・DX・BCP等のコンサルや研修業務に従事。


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