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カーボンニュートラルをどう実現するか

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カーボンニュートラル達成は、国の宣言(2050年達成)により各企業にとって取り組まざる得ないテーマになりつつあります。 「ものづくり企業ではどのようなことから取り組めばよいか?」… もっと読む
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記事一覧

GXによる新製品・新サービス開発投資への支援

1. 省エネによるコストダウンから新製品開発のための設備投資へ省エネ法は、40年以上前に、石油などのエネルギーを効率的に使用することいわゆる(省エネ)を企業に求めるために成立しました。我が国経済が、輸入の大部分を占めていた中東からの石油の高騰に大打撃を受けたからです。その主旨にしたがって、設備投資による省エネを促進するためのいわゆる「省エネ補助金」が、毎年数千億円支出され、企業の省エネ活動を大きく支援してきました。 このように長い間、わが国企業のエネルギー使用効率化に大きく

省エネ法の改正

今回は、特に省エネ法改正との関係についてお話しします。企業はカーボンニュートラル達成のために、再生可能エネルギー導入を真剣に検討する時期が来ています。 1. CO₂排出量算定まずは、自社のCO₂排出量の算定についてです。企業の敷地内で発生しているCO₂排出量は、日本商工会議所が無料で提供している「CO₂チェックシート」を使用して算出できます。 参照:日本商工会議所「CO₂チェックシート」 自動計算してくれるのでとても便利です。中でも、0.5CO₂-kg/kWhという数

製造業におけるサーキュラーエコノミー

1 サーキュラーエコノミーとはサーキュラーエコノミー(以下、CE)とは持続可能な形で資源を利用する経済モデルのことです。その原則は「廃棄物と汚染をなくすこと」「製品や原材料を循環させること」「自然を再生させること」の3つです。これは廃棄物の発生を前提としない点において従来のリニアエコノミーと大きく考え方が異なります。 2  製造業におけるCEの実例製造業におけるCEの実例は、「製品設計」「生産活動」「サービス運用」の大きく3つのアプローチに分けることができます。 ① 製品

排出量取引制度の比較分析:キャップ&トレードとベースライン&クレジットの特徴 ~日本と欧州におけるカーボンクレジット価格比~

1.日本国内における排出量取引制度について日本政府は排出量取引制度における知見・経験の蓄積と事業者の自主的な削減努力の支援を目的に、平成17年に環境省主導による自主参加型国内排出量取引制度(JVETS)を導入し、試験的運用を試みてきました。 その後、国内排出削減・吸収プロジェクトにより実現された温室効果ガスの排出削減・吸収を促進するためのオフセット・クレジット(J-VER)や先進対策の効率的実施によるCO₂排出量大幅削減事業(ASSET事業)、工場・事業場における先導的な脱

環境価値(クレジット・証書)の概要

1. カーボン・クレジットの定義「カーボン・クレジット」は、「ベースライン&クレジット制度」と「キャップ&トレード制度」とに大別されます。 「ベースライン&クレジット制度」とは、ボイラーの更新や太陽光発電設備の導入等のプロジェクトを対象に、それらが実施されなかった場合の排出量及び炭素吸収・炭素除去量(以下「排出量等」という。)の見通し(ベースライン排出量等)と実際の排出量等 (プロジェクト排出量等)の差分について、MRV(測定・報告・検証)を経て、国や企業等の間で 取引でき

SBT(Science Based Targets)の概況および新ガイダンス

1. SBT(Science Based Targets)とはSBT(Science Based Targets)とは「科学的根拠にもとづく目標設定」と呼ばれており、パリ協定が求める水準と整合した、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標のことです。 SBT認定を取得・コミットする企業・団体は、世界全体で年々増加し、国別では82カ国から6,380社が参加、3,730社が認定されています。日本では参加企業677社、認定企業601社、うち中小企業435社となっています(20

工場の二酸化炭素排出量の見える化

1.二酸化炭素排出量の見える化のニーズとライフサイクルアセスメント地球温暖化に対する関心の高まりや、親事業者からの要望を受けて、自社工場の二酸化炭素排出量を見える化したいという問い合わせが増えています。 ライフサイクルアセスメント(LCA)とは、製品やサービスのCO2排出量等を算定し、環境負荷を評価する手法です。LCAを実施する上で、工場の各生産工程における消費エネルギーの算定が必要となってきます。 始めは何をどうしたらいいか分からないですが、自社で消費しているエネルギー

国内外のカーボンニュートラル事情について

今回はLCA(Life Cycle Assessmentライフサイクルアセスメント)及びその手法を利用したCFP(Carbon Foot Print カーボンフットプリント)について最近の動向を紹介いたします。 1.LCA・CFPについてLCAについては自組織内での製品(サービスを含む)比較を前提とし、自社の新旧製品や複数の製品の比較、マーケティングでの利用が想定されます。 工程や製法の違い、二次データの精度の違い、機能単位やシステム境界の違い等から、他組織の製品の比較は難

【2023年】 国内外のカーボンニュートラルに関しての動向を紹介

企業の取り組みに役立つ カーボンニュートラル(CN)に関する国内外の動きを紹介します。 1. 国内における動き省エネ法が40年ぶりに根本的に改正され、企業は今年度の再生可能エネルギーの利用状況を来年度に報告することになりました。これは、企業に対する、工場や事務所から排出されるCO2抑制の間接的な要請です。 企業の自主的取り組みとして、GX(グリーントランスフォーメーション)リーグが発足し、我が国排出全体の40%を占める企業が参加して、自主的なCO2削減目標を立て、

続々.身近な”空気”からカーボンニュートラルを考える

空気の熱を賢く使えば、節電できるエアコンがないと最近の夏は乗り切れないけど エアコンがないと、最近の日本は夏を乗り切れない…いつ頃だったでしょうか、名古屋の最高気温が37℃となり、猛暑日が連続1週間も続くようになったのは? エアコンがなかったらと想像するだけでも、おそろしい…とエアコンに感謝しながら、近頃はカーボンニュートラルということで、節電や省エネが叫ばれていることが気になります。では、なるべく使わないようにしようとすると、テレビでは、「熱中症の防止のために、エアコンの

続.身近な”空気”からカーボンニュートラルを考える

空気を賢く使えば、電気代が下がる今回は、大気から“無料”の空気を調達して、その空気を圧縮して使用している企業を取り上げます。燃焼に空気を使っている企業より数は多いです。そうした企業では、圧縮された空気により、生産ラインでシリンダーを動かすことで部品を移動させたり、金属切削後に部品に残った切粉をエアで飛ばすのに使ったりします。  空気はタダなのに、なぜ空気を使うときにエネルギーが必要なのでしょうか? こうしたエアは大気圧(0.1MPa)を圧縮することで、何倍(例:0.7MP

身近な“空気”からカーボンニュートラルを考える

空気を賢く使えば、燃料コストが下がるわが社は有害な薬品を使っていないから、有害な排水やばい煙を出していないので、カーボンニュートラルなどの環境問題と無縁である、と感じる人たちが多い。 そう思っている企業でも、石油やガスを燃やし、お湯を作って材料を温めたり、生産ラインで製品を自動で搬送していたりしていれば、かならず使っている物質があります。それは、「空気」です。 私たちは、空気はタダと思っています。 しかし、実際はその空気を使えば、多大なコストを費やすことになります。 今