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世間知らずの起業物語 その6

大きな体制変更があった2016年春。
その秋、IT事業部では海外視察を計画していた。そして、再来週出発することになっていた週の木曜日、出張の帰りの車の中で川上会長から電話を受けたのだった。
※この物語はフィクションです。

突然の電話

「ああ、佐藤さん、実はね」

少し申し訳なさそうな一言から、川上会長は話し始めた。

「再来週からの海外視察なんだけどね、やっぱり止めようと思うんですよ。再エネ事業部の太陽光発電所の工事が思っていた以上に時間がかかってね。私が行けそうもないんですよ。」

『え?あ、はい。そうなんですね。』

と、答えるしかなかった。

「それでね、IT事業部を少し縮小して上野くんと町川くんにも、太陽光発電所を作る方に戻って欲しいですよね。」

『え???あ、2人もですか?』

本人たちにも了承をとったということだった。

すぐに上野に連絡をし、工事部であった小林に状況を確認させた。

そして、聞いた内容は・・・。
工事のコントロールができず先月末の工事の納品もできていなかった。
そして、そのリカバリーで今月末に納品予定だった工事も間に合いそうもない。
さらに、他にも予定していた工事が計画段階で着手すらできていない。
ということだった。

単純に工事の遅れから、資金が足らなくなった。ということだった。

元々、我々が手がけていたのは、低圧という家庭向けの太陽光発電と同じ仕組みで作られる50kW未満の発電所であった。IT事業部で開発した監視システムも低圧の太陽光発電所向けに作られたものだった。

しかし、2016年は高圧の太陽光発電所を作ることに重きをおいていたため、低圧の発電所工事がほとんどなく、工事遅延等の状況を、監視システムを管理しているIT事業部から把握することができていなかったのだ。

低圧の発電所であれば、監視システムの設置業務をIT事業部で受け持つため、もう少し状況を把握できていたかもしれない。

『まぁ、低圧の発電所だったとしても、山田はそんなマイナスな情報は結局は隠してしまうか』

どちらにしても変わらなかっただろう・・・と思いつつ、会社に戻ればこの3ヶ月ほどかけて計画した海外視察ができなくなったことを、皆から問い詰められるんだろなと、重い心持ちで東京に車を走らせた。

『ヤレヤレ・・・」

結果、海外視察は延期された。
そして、翌年の春、ある事件とともに視察の計画自体がなかったこととなった。

度重なる体制変更

そんな出来事を通して、上野と町川の2人はIT事業部から再エネ事業に復帰した。
そこから、山田、上野の2リーダー制をとりながら、発電所作りは進み、2017年一杯での1年半で山田&上野のチームは約40基規模の発電所を作った。

相関図(〜2017年末)

更に、2018年の頭には、自社遠隔監視システムの開発がひと段落した僕も太陽光発電所の工事担当者として再エネ事業部に復帰。山田、上野、そしてもう1人の管理職である東野と、計4名で1年で約60基の発電所を作りあげた。

管理職といっても、部下のいない管理職。
私を含む4人の管理職が分担し、各々自分の手で太陽光発電所を作ったのだ。
これは、川上会長の方針であった。

2017年の春に大きな事件があり、それが体制にも大きく影響していた。
2018年の1年間は、それまで工事に携わっていたメンバーが会社を去っていった。
これまで多くの太陽光発電所の工事に携わっていたにも関わらず、急に担当を外され、全く異なる事業での再教育を言い渡されていたのだ。
あたかも、その事件の責任が彼らにあるような行為であった。
会長の方針だ。

唯一残ったのは、2016年に私と一緒にIT事業部に戻っていた町川だけでった。そして、入れ替わるように新しいメンバーたちが入社し、再エネ事業と、新たな事業に取り組むこととなったのだった。

相関図(〜2018年末)

そして現体制へ

激動の2018年を乗り越え、2019年の頭には、僕が再エネ事業部の責任者に復帰。

販売面以外の全てを僕が責任者として、引き継いだ。
山田は販売部門の責任者となって、別の事業の管理職であった桜田と一緒に顧客対応を進めることになったのだった。

そして、その半年後の今、新会社を作ることとなっている。

相関図(〜2019年夏)

こう振り返っただけで、体制変更が多い。
そのときそのときに、目の前で起こったことに対して、必要な対応だけをしてきたからだ。

しかも、管理職も異様に多い。
組織として計画的に体制をしっかり作り上げられなかったのだと反省した。
だから今、O&Mの責任者に頭を悩ますことにもなっているのだ。

週明け、管理職会議が開催される。
責任者に適任であるメンバーがほとんどいない、管理職会議である。

『きっと、また紛糾するんだろうな』

気が重くなるのを感じながら、業務に戻った。

つづく

※この物語はフィクションです。

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