人前で泣いた日〜前編〜

私は人前で泣けない。

18年前

親友や当時の彼氏が参列してくれた

実父のお通夜でも、

16年前

新郎友人や恩師のスピーチを聞いて

新郎が泣いていた隣でも、

実母への感謝の手紙朗読でも、

結局は最後まで泣けなかった

結婚披露宴でも、

15年前

満月の夜に陣痛が始まり

約6時間かかって

やっとの思いで生まれてきて

おぎゃー！と泣く息子と、

私の頭の付近で感動して

泣いていた夫がいた

立ち合い出産でも、

6年前

私が退職する日に同僚たちの

寄せ書きやプレゼントを

手渡された時も。

小さい子どもが泣くのは

自然だと思えるけど、

人前で大人が泣くって

よっぽどだもんね。

遡ること約5年ほど前…

まだ小学生の息子は4年生。

いつも登下校は同級生や

上級生と下級生も一緒。

ひとりひとり、自分の家に

近付くにつれて集団だった人が

減っていく帰り道で事件が起きた。

帰宅してすぐ、

息子が

「首のここ、赤くなってない？」と

聞いてきた。

横から後頭部にかけて、

たしかにうっすら赤くなっている。

一応、携帯で写真に撮り

なぜそうなったか息子に聞く私。

言いづらそうな息子に、

焦らずにゆっくりと冷静に聞き出す。

結論から言うと、

集団登校の班長である6年生に首を

締められたと、やっと話してくれた。　

さらに「人を殺すなんて俺は

なんとも思わない」とその班長が

言ったと話す。。。

ちょうど『進撃の巨人』がTVで

流行っていた頃。

私は観ていなかったが

息子はハマっていた時期だったので、

私は一方的に彼のその言葉を聞いて

激怒りするなんて事は一切なく

TVや漫画の影響を受けやすい年頃の

男の子同士でふざけてて

エスカレートしたのかもとも思い

その上級生に何かした覚えはあるか

聞いたが、

息子は「何もしていない」と話す。

父親である夫はトレーナーとして、

ボクシングを遊びの延長で

昔から息子にもさせていたため、

息子はたぶん喧嘩しても

パワーや瞬発力がある方だ。

ただし、

むやみに人を傷付けたり、

手を出してはいけない。

それを幼い頃から

しっかりと教えた上で、

父子のコミュニケーションツールの

ひとつとしてボクシングを続けていた。

心は優しく身体は強く。

そんな風に育てて来たつもりだ。

話は戻って、息子はなぜ

私に話し難そうにしていたのかと言うと

「親や先生にチクッたら

どうなるか分かってるやろなぁ」と

その班長に脅されていたからだった。

今まで息子以外にも被害者は居て、

嫌がらせや暴力的な行為をされたりしても

誰も何も言えない状態だったようだ。

息子の首元を冷やしながら、

話し難い事を話してくれて

ありがとうと伝えた。

我が家は息子が1年生の時から

地域の子ども会に入っていて、

班長さんのお家も入っていたため

そのお母さんの連絡先を知っていた私は

夫にも相談の上、連絡した。

シングルマザーのそのお母さんが

お仕事からまだ戻っていないのは

分かっていたので

電話じゃなく文章で、内容は２点。

班長さんに首を絞められて赤くなっていた事実と、

息子は「何もしていない」と話すが、

もしかしたら班長さんの気分を

害した事をしたのかもしれないから

ちゃんと本人からも話を聞かせて欲しいという点。

〜後編につづく〜