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そこに情熱はあるか? 3年・吉田賢人



2020年12月6日
この日は、中央大学学友会サッカー部が史上3度目に降格した日だ。
絶対に忘れないと自分の心に決め、スマホとPCの待ち受けもこの日の写真だ。
あの日、泣いていた選手はピッチにも応援席にもいなかった。
「ああ、このチームの勝ちに対する執念ってこんなもんか」と痛烈に感じた。
違和感を覚えながら毎日過ごしていたのに2年生だし、スタッフだしと遠慮して何もしなかった自分に後悔、いや失望した。


入部して以来、テレビやネットで全国大会の決勝を見ると、中大と戦った大学が勝ち進み優勝し、カップを掲げる姿を幾度となく見てきた。もはや別世界の出来事のように感じた。

大学ではスタッフとして「日本一」を獲ると決め、高校を最後に選手を辞めた。
辞めたことに後悔はないかと言われれば嘘になるし、うまくいかないと悩んでいる選手と話していると正直羨ましいと思ったりもする。
きっと自分がこの3年間悩んだりしたことは選手に比べれば大したことじゃない。
とはいえ入部してから3年間、自分の思い描いていた理想には程遠い。
今年こそ、様々な方の協力で学生トレーナーが形になったがそれまでの2年間、やりたいことは実現できなかった。本気で辞めてやろうと思うほど、このチームが大嫌いだったし、毎日グラウンドへ向かう脚も重かった。
それは自分自身に原因があるのに他人や環境にせいにしていた。だから自分が変わると決めたし、このチームを変えたいと思った。
その想いが自分を突き動かしている。

中央大学は日本一を2008シーズンを最後に獲っていない。関東リーグに至っては半世紀近く優勝していない。しかも今は関東一部にすらいない。

「本当にこのチーム、このままでいいのか?」

降格が決まったあの日に感じたあの違和感を今も拭えていない。
ただ1試合1試合を淡々とこなし、自分は悪くない、自分はいいプレーをしていた。
自分は出ていないから関係ない。応援に行って、目の前で仲間が戦っていてもまじめに応援することもできない。
私たちスタッフもそうだ。与えられた仕事だけをこなすだけでいいのか?勝てないことは自分に無関係か?
私はこんな他人事のチームうんざりだ。
人間というものは自分が一番かわいいものだ。結局、自分がその瞬間さえよければそれでいいのだ。だから最後に痛い目を見た時に後悔の念に苛まれる。私も決して例外ではない。
しかし、サッカーは少なくともピッチ上に立つ11人、あるいはベンチメンバー20人、もっと大きく言えば部員130人の人生の一瞬を共有している。その瞬間だけは、一人一人が持つ人生のストーリーに同じものが描かれる。
別に自分のために頑張ることが悪いと言っているわけではない。自分のために頑張ることは至極真っ当だ。ただ、そこには自分だけではない多くの想いが乗っかっている。そう考えるとこのチームが出す結果は決して他人事ではない。その自覚と責任がチームへの想いを強くする。そして「情熱」を生む。
今の中央大学サッカー部に最も足りていないのはここだ。

ではその自覚と責任が生まれれば日本一になれるのだろうか?答えは、NOだろう。
20年近く生きていれば多くの努力は報われないこと、夢はたいてい叶わないことを多くの人は知っている。そんなことが怖いのなら大学でわざわざ部活を選ばない。
だがそんな部活をやっている人だからこそ本気でぶつかれば少しだけ世界の見え方は変わることも同時に知っているはずだ。
その変化にこそ意味がある。変化しようとすれば、思い通りにいかないことだらけだ。
その時に自分が越えなければならない壁が見えてくる。
本当の勝負はそこからだ。
自分自身を越えなければ、その壁を越えられない。環境や他人のせいにして、現状を憂うだけではいつまでもそのままだ。変わろうと思うのも変われるのも自分自身だ。
中大サッカー部も同じだ。部員全員が本気で「日本一」を目指し、プレーもそして人としても変わらなければ過去の栄光という壁の前に屈する。
でも確実に中大サッカー部は変わろうとしてる。
今年の初めに「なぜ日本一を目指すのか?」という問いを自らに立てた。
そこに理由は必要か?究極結果なんてなんだっていいんじゃないかと考えた。
でもその問いの答えががほんの少しだけわかった気がする。
このチームを変えたい、良くしたいと思う人間が想像よりも多くいた。
現状を変えようともがき苦しみながら自分に向き合う者、ピッチ外でそこまで頑張るの?ってほど行動し続ける者。
その1人1人の想いがカタチになる瞬間は「日本一」を獲ってこそだと。
今は点と点で動いている想いたちが線で繋がったとき、過去の壁を越えるための手綱になる。
そんな綺麗事のようなものを愚直に信じて、本気でぶつかっていきたい。
そこに学年も立場も関係ない。
必要なのは少しの勇気と「情熱」だ。

最後に、昇格争い真っ只中のチームへ。
これから1試合の重みが何十倍にも膨れ上がる。うまくいかないことだってあるだろう。
そこでもう一度問いかけて欲しい。
目の前の試合、プレーの一瞬一瞬、行動の一つひとつ。

そこに情熱はあるか?

2021年10月30日
必ず昇格を掴み取ろう。
そして感情剥き出しで喜ぼう。

最後までお読み頂きありがとうございました。

◇吉田賢人(よしだけんと)◇
学年:3年
ポジション:トレーナー
前所属:福島県立安積高校

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