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Roja

Rojaは1992年に公開されたタミル語映画。インド国内で三つの賞を受賞したのみでなく、モスクワの映画祭でもノミネートされた。また、2015年にもロンドンで開かれたインド映画祭でも公開されるなど成功を収めた。

あらすじ

ロジャはインド南部の村出身の女性。ロジャの姉のお見合いのためにマドラス(現在のチェンナイ)からリシクマル(リシ)という男性がやってきた。実際に姉と対面して会話を交わしたのち、彼が結婚の相手として選んだのは姉ではなく妹のロジャだった。二人は結婚し、リシの仕事の関係で紛争状態のカシミール地方へ向かった。ある日、リシがカシミール地方で活動するテロリスト集団に誘拐されてしまう。

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インドのお見合い結婚

インドではお見合い結婚が主流。結婚の条件としてカーストや宗教など様々なことが絡むことから、両親が個人的なコネクションやマッチングサイトのようなもので見つけてくることが多い。本作品でもロジャの姉との対面の機会であったのに訳あってリシが選んだのは妹のロジャだった。日本人からすれば「断ればいいのに」という考えになるが、インドでは(特に村では)結婚というのは個人同士の関係性でなく家族と家族の繋がりを意味するので家族が「いいだろう」となると本人は「嫌だ」とは言いにくいようである。この過程はスピード感があるのである独身の男性が数ヶ月後に結婚しているということもよくあること。

カシミール地方の問題

カシミール地方は作品の時代背景のみならず現在も多くの問題を抱えている。カシミール地方には「ジャム・カシミール解放戦線」というインド、パキスタン両国からの独立を目指した組織があった。作中に組織の名前を見ることがなかったがもしかしたらこれをモデルにしているのかもしれない。現在でもこの地域はインドとパキスタンで領有権を巡って争いが続いており、2019年にインド政府が自治権を剥奪したことでパキスタン側が反発した。インドの駐パキスタン大使を国外退去にしたり直行電車の停止、インド映画の上映禁止など多くの影響を与えている。

武力行使が唯一の手段なのか?

テロリスト集団に拉致されたリシは彼らの目的、そしてその手段に対して問いかけていく。「なぜ人の命を奪わないといけないのか」「対話で解決できないのか」と勇敢にもテロリストを説得しようとする。勿論、テロリストにも彼らの考えがあるのだが、そうした会話も考えさせられる場面。そしてロジャもヒンディー語が話せないにも関わらず必死で夫を救出するようにインド軍の高官に訴えかけていく。すると「夫を解放するためには40人以上を殺してきたリーダーを解放することになる。彼を捕まえるために失った命が無駄になる」と、とても現実的な答え。そうした物語のあちこちに考えさせられるメッセージが散りばめられており、それが現在でも人々に愛される理由だろうか。

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