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天国はどんなところですか?

2ヶ月前、父が亡くなった。
その日は珍しく、夜遅くに母親からのに電話が鳴って、電話越しに泣いていたから、なぜかすぐ察しがついた。

生前父は、「俺ももう長くないと思うんだよな」って言ってた。でもさ、自殺はないよ。長くないと思うんだよな、って、自分で短くしただけだよ。最初は受け入れられなくて、何してくれてんだって気持ちでいっぱいだった。葬儀が落ち着くまでの1週間、数え切れないほど色んな人に会った。周りを散々に悲しませる父が憎かった。今どんな顔でどんな気持ちでそっから見てんだ?って空睨んでみたりしたこともあった。

兄と母だけが、自殺の現場を見てたから、引け目があって上手に泣けなかった。悲しんでいいのかわかんなかった。それに父は私のこと、「元気印」ってよく言ってたから、泣いてやるかって思ってた。
1週間、泣いてる母を見て辛かったり、お通夜で言葉をかけてくれる友人や恩師に対して気持ちが溢れて泣いたことはあったけど、父のために流した涙はなかった。ただ、なんかよくわからない意地を張り続けてた1週間だった。
お葬式が終わって、兄と母が心配な気持ちはあったけど、すぐに一人暮らしの家に戻った。卒論が佳境に入る時期だったし、もう意地を張るのも限界なことに気づいてたから。

帰ってきて、一人になって、泣いた。ひとしきり、泣いた。

もう会えない。もう声を聞けない。
父が映った写真を見返して、父が歌った歌を聞き返して、LINEの最後のやりとりを振り返って、最後の電話で冷たくしちゃったなとか思い返したりして、もう一生、なにがあっても、どんなに願っても、父とは会えないんだなとちゃんとわかって、涙が止まるわけがなかった。

死ぬ前は、何考えてたんだろう。
わたしたち家族の存在がありながら、死にたい気持ちの方が強かったのかな。
どうしてなのかな。何にも力になれなくて、そういう選択をさせてしまって、ごめんね。

父は、厳格で怒りっぽくて酒癖が悪くて、だけど正義感が強くて、頭がキレて、愛情深い人だった。納得いかなくて言い合いをしたこともあったけど、兄や私が第一優先で、何かあったら本気で守ってくれるって思えるような父親だった。
そんな私にとってただ一人の存在が、いなくなった。

父が亡くなってから、性格が少し変わった。
誰かの悩みを聞いても、生きてるから悩めるんだよ、生身の人間相手に悩めるだけまだマシだよ、と思ってしまう。他人の苦難を一緒に乗り越えてあげたいと思う自分はいなくなった。
もう大切な人を失うのが怖くて、周りを大切にすることをあたりまえにできなくなくなった。逃げているのはわかっていても、色々なところで気持ちにブレーキをかけては、父の存在に縛られているなと実感してしまう。

こんな自分も時間が経ったらまた、変わるのかな。
あと一回だけでも話せたらな、この気持ちも少しは軽くなるのに。
なんてまた、消化のできない気持ちに苦しんで、不可能なことばっかり思いつく今日を過ごしている。

パパ、ひとつだけお願い聞いてほしいな。
わたしがちゃんと前を向いて歩ける日まで、夢の中でもいいから、たくさん会話したいよ。

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