気象予報士と見る『気象庁の人々』#02
Netflixにて配信されている『気象庁の人々:社内恋愛は予測不可能?!』。
今回は第2話 体感温度 を見ていきたいと思います。
第2話では、5月の季節外れの寒波が取り上げられていました。浮気で凍る仲やら家庭内の温度差やら燃える恋心やらが描かれていましたね。
本筋のストーリーの感想・考察は他の方にお任せして、今回はこの寒波をもたらしたオホーツク海高気圧と、衛星画像について語っていければと思います。
※勉強中の身ですので、解釈や説明に誤りがあれば、バンバン指摘いただければ幸いです。
1.オホーツク海高気圧がもたらす冷たい北東風
第2話での寒波の一因となったオホーツク海気団とは、オホーツク海にできる冷たく、湿った気団のことで。春の終わりごろから夏にかけてオホーツク海高気圧と呼ばれる高気圧を形成することが多いです。
高気圧では、地表付近では時計回りに風が吹き出しています。そのため、オホーツク海高気圧が形成されると、気圧配置によってはオホーツク海から北海道や朝鮮半島に向かって冷たい風が吹き出すのです。
ちなみに風向きは、風が吹いてくる方向で表します。北東風といったら北東から南西に吹く風のことを指しています。
これは2018年7月6日の日本時間9時の天気図で、実際にオホーツク海高気圧発生したときのものです。オホーツク海は高気圧エリアになっています。
この時の風向風速をアニメーションで見てみましょう。緑色ほど風速が強くなります。
朝鮮半島の東岸にかけて日本海上を北東風が吹いているのがわかります。
オホーツク海高気圧は、気温が上がってきてもまだ海水温が低めの春〜夏にかけてできやすく、作中の記録的な低温は氷が浮かぶオホーツク海からの冷たい風がもたらしたものと思われます。
一方で作中のセリフや資料には違和感があった部分もありました。
①「オホーツク海気団なら西に影響を及ぼさないはず…」→南西にあたる朝鮮半島にも影響すると思う。
②「風が北西なら(オホーツク海気団だと)分かるが…」→北東の誤り?
③「オホーツク海から冷気が東に流れ込んでいます…」→朝鮮半島はオホーツク海から見て南西側です。
④状況の解説に500hPaの高層天気図が用いられていたが、海上の氷が原因なら高層ではなく地上天気図を見るのが良いのでは?
韓国語が分からないので、元々のセリフがどうだったか確認できませんが、日本語の字幕には??な部分がありました。
2.衛星画像から見る霧と海氷
第2話では、オホーツク海上の衛星画像の判別がポイントとなりました。オム先任がオホーツク海上で海霧だと思ったのは、実は氷だったのです。
この3枚の衛星画像は、2022年3月31日の同じ時刻の画像です。A,B,Cのそれぞれの領域に見えるのはいったい何でしょうか?
正解はAが上層の雲、Bが下層の雲、Cが流氷です。
左の画像は可視画像といい、雲や地表で反射した太陽光(可視光)を観測した画像です。可視画像ではA,B,Cとも白く映っていて、一見すると判別がつきませんね。
次に真ん中の画像を見てください。これは赤外画像といい、文字通り赤外線を観測した画像です。赤外画像には下層の雲や流氷は映らないという特徴があり、可視画像で見えているBやCは赤外画像では見えません。
最後に右の画像が日中雪霧画像と呼ばれる画像で、RGB合成画像というカラー表示技術が用いられています。この画像だと雪氷域は朱色に近い色で表現されますので、流氷と下層の雲の判別ができています。
このように、複数の衛星画像を組み合わせることで、写っているのが何か判別することができるというわけです。
また、動画で見ることで、流氷と雲を区別することもできます。同日の日中の動画を見ると、Cの領域の流氷は止まっていることがよくわかります。
オホーツク海に流氷が現れるのは1月〜3月ごろです。作中の5月だと、流氷の可能性を想像しづらかったというのと、流れていたのが細かい氷だったこともオム先任が判別を誤った一因かもしれません。
3.まとめ
第2話は予測というよりかは、実況(今の状態)を正しく把握することの難しさが表れていた回でした。
それにしても、職場で出会って間もない二人が店出て、キスして、そのままホテルとは…韓国ドラマを見ない私にはこの展開は予測できませんでした。