【学校分析】洗足学園
神奈川県下トップレベルの進学校である洗足学園の入試問題の分析をご説明致します。
入試基本情報
試験日程
1回⇒2/1午前
2回⇒2/2午前
3回⇒2/5午前
試験時間/配点
算数⇒50分/100点
国語⇒50分/100点
理社⇒合わせて60分/合計150点
入試形式における特徴
それほど大きくなくとも傾斜配点です、算国が100点ずつ理社が75点ずつ。また理社を合わせて行うところなどは豊島岡女子学園と同じと言えます。
試験回数が3回ある中での複数受験の優遇は補欠繰り上げ候補への基準を、受けた試験の中でそれぞれの科目での最高点を採用してくれるというものです。
最も大きな特徴として合格者の80%をまず2科目で選考する(1・2回目のみ)という点です。残り20%を合格者以外の4科目受験者から選考するというやり方を取っています。
この選考を考えると洗足学園に合格するためにはどうしても算国の実力が求められます。
とはいえ、普通は洗足学園以外も受ける受験プランになるため算国だけで中学受験を組み立てることはお薦め致しません。また、実際に2科目受験志願者は4科目受験者に比べ圧倒的に少ないです。
修正
2023年度から学校のHPに2科目選考の記載が無くなりました。
2科目選考が無くなり、4科目選考のみになっている可能性もあります。学校に確認を行って頂けますようお願い致します。
得点について
大多数の合格者を選考する2科目での観点でお伝え致します。
受験者平均・合格最低点から考えると合格には受験者平均に+20点前後が求められています。平均すると算国で10点前後ずつ上回る必要があります。この結果から考えると受験者層に、いわゆる記念受験などの合格可能性が非常に低い層はそれほど受験していないことが考えられます(近年の安全志向がより拍車をかけているのかもしれません)。そうなると、比較的実力の近い中での勝負になることが想定され、より厳しい戦いになることが予想できます。
偏差値や算数の難易度・問題構成
偏差値(80%偏差 1回目を記載)
・SAPIX→57
・四谷大塚→65
算数の問題について
難易度:
女子向けにはやや難しいが標準的
構成
大問1⇒計算問題 2問
大問2⇒小問集合 4問
大問3⇒小問集合 4問
大問4⇒大問 3問
大問5⇒大問 3問
平成26年度まで大問が6つあり記述も3つあった構成がほとんどから、平成27年度以降上記の大問は5つで記述が4つに変更。記述は大問3(3)(4)と大問4・5に一つずつと固定。(この変化と同じタイミングで学校の授業時間も50分授業から65分授業へ)
問題分析
計算問題
標準的な難易度で特殊な計算問題などはほとんど出題されないです。
小問集合
大問2・3と分かれているのは、大問2が5点ずつ、大問3(1)(2)が7点ずつ(3)(4)の記述が8点ずつと配点が異なるためです(配点は学校にて公表されています)。学校としては難易度に差を作っているとしての配置なのだと思われますが、合格者のレベルなら難易度に大きな差は感じないはずです。
内容は多岐に渡る中、図形問題が毎年1・2問入ってきます。難易度としては塾のルーチンワークに組み込まれている一行問題集ぐらいから授業での教材レベルと言えます。合格点を取るためにはこの小問集合を満点取る実力が必須です。
注意!!
数年に一度、小問集合の中にかなりの難問が1問入っている時があります。
すべての回ではなく1〜3回の中の一つにだけ入っており、毎度同じ回に入っているわけではありませんので本当にランダムです。一見解けそうなシンプルな問いに見えますが、非常に難しいため本番では飛ばして良いです。小問集合8問全て解けるわけではないかもしれないと意識して取り組みましょう。
大問
扱われているテーマとしては速さ・水量・数の性質・図形の移動・食塩水などなど、色々とありますが頻度としてはグラフを用いた問いが多く出ている印象です。次いで食塩水の問題が出ていることが多く、食塩水は小問集合も合わせるとかなりの頻度で出題されています。
逆に純粋な図形をテーマとした大問はほぼ出題されていません、扱われても周期性の問いを図形を用いてや点の移動・図形の移動というぐらいです。個人的にとても珍しいと思っています、これは他の学校との大きな差ではないでしょうか。さらに立体切断の問いも出題されたことはなく、これは豊島岡女子学園とは大きく異なる点です。
また、数の性質は見ますが場合の数はあまり見かけないことも特出ではないでしょうか。大問として出題がほとんどないことは上位進学校の問題としては珍しいと思います。
難易度
巷の多くの洗足学園を説明する中で『洗足学園の算数は難しい』と言われています。しかし、私はそれは間違っていると思います。あえて言えば、洗足学園の算数は標準的です。正確には合格するための下準備を積んできた子供に取っては標準的なレベルの問題だと言えるということです。
いわゆる難問・奇問と呼ばれるような問いは非常に少なく、問いの一つずつを正確に理解し考えれば必ずどこかで練習したと思える内容ばかりを用意してくれています。そういう意味では図形の問いが少ないことも直感的に解くのではなく、ロジカルに論理を考えて解く練習を積んだ文章題を解ける子が学校側が欲しいというメッセージなのかもしれません。
合格への道
算数に求められる点数は年により変動しますが、大体70〜80点前後と想定できます。
この合格ラインに届くために必要な内容は下記になります。
SAPIX(6年生前期まで)
平常
・デイリーサポート実戦編A〜Dレベルまでを理解の上で確実に解ける
・デイリーチェック(レベルM以上)で毎回180点前後は取れている
土特
・分野別プリントを論理まで含めて完璧に解ける
・Sプリントもやれていると完璧
(6年生後期以降)
平常・土特
・不十分な単元のおさらいレベルになっている
SS
・TJプリントレベルまで解ければ十分(立体切断は志望校に応じて)
・SJプリントでも十分対応可能
※基礎トレは入塾以来毎日行っている・5年生までは計コンも4まで行うレベルが求められる
もちろん、この内容はあくまで大まかな話になりますので実際はもっと細かいレベルで確認する必要があります。
まとめ:洗足の算数で勝つために
洗足学園の問題を確認し、受験者平均点を見るとあぁ大体ここらへんは皆解けて、この問いは皆落としたんだろうな、そしてここの問いが合格者たちは正解していったんだろうなと大体感じ取れます。
つまり洗足学園の算数は解ける・解けないが比較的はっきりとしている形式の問題と言えるということです。
そういった問題では確実に解ける問いを正確に解ける力がまず最優先です。
その力を養うことに重要なのは、日々の授業の復習以外に小問集合系のルーチンワークの課題です。
SAPIX系教材なら基礎トレ、四谷大塚系教材なら計算(計算と一行問題用の問題集)です。
保護者の中にはこういったルーチンワーク系を軽視される方もいらっしゃいますが、算数の下地を強固に固めてくれることはこのコツコツとした地味な学習なのです。このクオリティが後々大きな差となって現れます、毎日行うことは当然としてどこまで突き詰めてやれているかどうかも重要です。
先程記載したとおり、合格最低点と受験者平均との差は約20点です。このうち、算数で仮に10点作るのなら約2問ぶんです。もし15点ならば大体3問ぶんになります。
何が言いたいのかというと、合格と不合格の差はこれだけ微妙な差になるということです。
まず2科目の選考ということを考えると、合格のためには平均よりも3問多く取れればかなり確実になります。その3問を作るために必要なことは上記の通りコツコツと積み上げてきた力です。
そしてこの差は微妙かもしれませんが、確実に存在し決して超えられない壁になってしまいます。
合格と不合格の差を生む本当の理由
何故なら、その差・壁は長い時間をかけて築かれるものだからです。つまり勝負は6年生後期の佳境で決まるのではなく、それ以前に決まっていると言えるということです。
非常によく誤解をされている点のため再度強調いたしますが、
6年生後期から大きくは変わりません
唯一変わるケースは、そこまでコツコツと積み上げてきても結果に繋がらなかったものが、ようやく夏期講習以降内容が繋がり結果に反映され始めるケースです。しかし、それも非常にレアケースと言えます。とても冷たい言い方になりますが、無理なものは無理なのです。
だから、私は合格と不合格の本当の差は
保護者が合格するためにきちんと考え準備をしてきたかどうか
だと思っています。
残念ながら、子供にはこういった判断は年齢的にまず無理でしょう。そのため、判断を下すのは保護者の役割になります。
現在の洗足学園は、神奈川県の女子進学校でもトップレベルです。首都圏と考えても上位校の一つとして考えられる学校です。そのレベルに合格するためには先手先手を打って準備することが肝要になります。
大事なことは、最後の瞬間ではなくその時までにどれだけ正しいやり方でコツコツと積み上げてこれたかです。逆を言うと、きちんと準備をしていれば洗足学園の算数は対処をしやすいのです。もちろん、他の学校にも共通していることではありますので、合格を真剣に考える方こそ早め早めの準備を心がけ下さい。それこそが確率を高めてくれることです。
私は洗足学園の問題は、きちんと積み上げてきた子供には解きやすい難易度だと思っています。
もしご家庭が、保護者が、子供が本当に洗足学園に合格したいと思っているのであれば、状況を俯瞰で考えられる保護者がまず率先し、合格できる環境作りを考えられるべきです。
算数で言えば6年生ではなく、5年生の頃から積み上げている方が、さらに4年生から勉強法をしっかり固めている子の方が明らかに強いです。是非、保護者は最後に焦らず、そのもっと手前から入試を見据えて正しい準備をお考え下さい。
合格に向けて
一番大事なことは準備を行っていることだと私は考えています。
最後に慌てて何かをしようとするよりも、もっと以前からゆっくり確実に準備を行うことの方が圧倒的に可能性は高くなります。
本気でお子様の中学受験を応援したい保護者の方には、是非早い段階でご検討頂けることをオススメ致します。