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サル痘ってどんなもの? 症状は?予防は?免疫のある世代も

新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中、別のウイルス感染症「サル痘」が欧米を中心に急拡大しています。発疹などの症状が特徴で、患者は1万人を超えました。いったい、どんな病気なのでしょう。岡山理科大獣医学部の森川茂教授(ウイルス学)に、日本への影響や予防法を尋ねました。(馬場洋太)

サル痘とはどんなものですか。

 

根絶された天然痘に似た「サル痘ウイルス」に感染して起きる病気です。1958年にサルで初めて確認されたのでそう命名され、70年に初めてアフリカのザイール(現コンゴ)でヒトへの感染が報告されました。サルよりも主にリスやネズミなどのげっ歯類がウイルスを持っていて、かまれるとうつります。アフリカで散発的に感染者が出る程度でしたが、今年に入って欧米で急拡大しました。ただし、流行しているのは「西アフリカ型」という比較的弱いタイプです。

 どんな症状が出ますか。

 5~21日(平均14日)の潜伏期間を経て、38度台まで熱が上がります。顔や手に発疹が出たり、リンパ節が腫れたりし、2~4週間で自然に治ることが多いです。西アフリカ型の致死率はナイジェリアで3%ほどとされますが、先進国では今のところ死亡例はありません。


 主な感染経路は。

 ヒトからヒトへは、主に皮膚と皮膚の接触で感染します。発疹やかさぶたに触れたり、寝具を介したりしてうつります。今回の流行は男性同士の性的接触で広がったため感染者の大半が男性ですが、もちろん女性も感染します。子どもや妊婦は重症化のリスクが比較的高いとされています。ただし、天然痘や新型コロナウイルスと違い、せきやくしゃみによる飛沫(ひまつ)感染は起きにくいです。通常の生活では、ヒトからヒトへの感染はまれだと考えていいでしょう。

 日本で感染者が出る可能性はありますか。

 避けられないでしょう。潜伏期間中で発疹などの症状が出ていない感染者に入国されると検疫で防げません。かといって、入国者全員に検査や待機をさせるのも現実的ではありません。

かつて天然痘ワクチンを接種した人は、サル痘にかかりにくいのですか。

 ウイルスを構成するタンパク質がほぼ一緒なので、天然痘ワクチンはサル痘にも効きます。1962年以前の生まれで3回接種した人、62~68年生まれで2回接種した人はほぼ感染しないか、感染しても非常に軽症でしょう。69~75年生まれで1回接種の人も免疫がある可能性があります。天然痘ワクチンの接種(種痘)は76年に終わったため、40代半ばより若い人は免疫がありません。

対策や予防法は。

 日本では一般の医療機関ではサル痘かどうか判別できません。PCR検査で調べられるため、全国で検査体制の整備が進められています。治療薬は米国や欧州連合(EU)で承認されましたが、日本はまだです。患者が出たら、医師主導の臨床研究という形で、濃厚接触者に予防的に天然痘ワクチンを打つことが考えられます。
 ただ、天然痘のワクチンは副反応が強いため、一般には使えません。より安全なワクチンができないか、議論されています。現時点で予防するには、患者との濃厚接触を避けることです。アルコール消毒やせっけんでの手洗いも有効です。服やシーツに付いたウイルスは洗えば感染力を失います。

 感染者が出た欧米を旅行したり欧米から来た人と接しても大丈夫ですか。

 あまり心配ないですが、握手などで皮膚と皮膚が直接、接触することを避けるといいでしょう。