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飲んだときのアルコール検知器の数値は? 記者が試してみました

 飲酒運転がなくなりません。「酒は抜けていると思った」「仮眠を取ったから大丈夫だと思っていた」。摘発された人の多くはそう話すといいます。そもそも、酒気帯び運転の基準値「呼気1㍑当たり0・15㍉㌘以上」のアルコール分は体にどんな影響を及ぼすのでしょう。記者2人がアルコール検知器を手に酒を飲み、確かめてみました。(東山慧介、佐藤弘毅)

voicy中国新聞社チャンネル「聞いてみんさい!広島」では、取材した記者の生の声をご紹介しています。ぜひ聞いてみてください♪

缶ビールを飲んで測ってみたら?

 午後7時。記者の東山慧介(28)と佐藤弘毅(30)は、350㍉㍑入りの缶ビールのプルタブを開けた。用意した検知器は計測器大手「タニタ」製。専用のストローに息を吹き込むと、0・01㍉㌘単位でアルコール濃度を計測できる精密タイプだ。

ビールを飲む佐藤(手前)と東山

 東山は日頃、ほとんど酒を飲まない。1本を飲み干したところで頰がみるみる赤らんだ。測ると、基準値の4倍近い0・59㍉㌘。「1本でこんなに出るなんて」。ハンドルを握れば道交法違反容疑で即摘発される状態だ。約1時間15分で酎ハイ1本(アルコール度数3%)を含む3本計1050㍉㍑を飲んだ。

 一方、佐藤は週に4、5日は軽く晩酌する。数分で1本を飲み終え、測ると0・17㍉㌘。東山に比べると低いが基準値を上回った。1時間で東山と同じく3本計1050㍉㍑を飲んだ。数値は0・42㍉㌘まで上昇。「そんなに酔った自覚はない。自分の感覚は当てにならない」と佐藤はちょっと驚いた。

飲んだ後でジェンガに挑戦

ジェンがに挑む佐藤㊨と東山

 2人は飲むのをやめ、正常な判断や動作ができるかゲームで試すことにした。選んだのは、木製ブロックを積み上げる「ジェンガ」。すると、すぐに佐藤が失敗し、ブロックが崩れてしまった。「普段ならもっと慎重にブロックを抜き取る。酒で気持ちが大きくなっているのかも」と悔しがる。

 東山がタクシーで帰宅し、午後9時45分に計測してみると、数値は0・30㍉㌘。午前0時、5度目となる計測でようやく「0・00」と表示された。飲み終えてから4時間近く。「体を動かすのもしんどい」。起床後の午前7時の数値もゼロ。しかし、頭が重い。とても運転できる自信はなかった。

奈良漬とウイスキーボンボンを食べてみたら

 さて、酒かすで漬け込んだ奈良漬やウイスキーボンボンを食べた後に運転しても大丈夫だろうか。別の日に2人が試してみた。市販の奈良漬約50㌘(20切れ)を食べた直後に測ると、東山は0・07㍉㌘、佐藤はゼロ。個人差が表れた。

 続いてウイスキーボンボン。パッケージには1粒当たりのアルコール度数が「4・1%(標準)」とある。1粒食べて計測すると、東山は0・05㍉㌘、佐藤はゼロ。奈良漬と同じ傾向だ。東山がさらに5粒を食べると0・11㍉㌘に。短時間で量を食べると確実に数値に反映された。
 東山の場合、食べ終わりから数値がゼロになったのは奈良漬が10分後、ウイスキーボンボンは15分後だった。

アルコール分解までの時間は

 酒を飲んだ後、体内でアルコールが分解されるまで目安の時間はある。NPO法人アルコール薬物問題全国市民協会(ASK、東京)によると、ビール500㍉㍑を飲んだ場合、目安は4~5時間。しかし、個人差もあり十分な注意が必要だ。「運転する予定がある時は、適度な酒量と余裕を持った時間設定を」。アルコール依存症について研究する県立広島大の岡田ゆみ教授(公衆衛生看護学)は求める。

 また、飲んだ翌朝などに酔いの程度を自己判断するのは危険だ。「酔い具合と、呼気検査で検出されるアルコール分の数値は比例しない」と県警交通指導課の松本啓司次席。さらに「基準値を下回っていてもブレーキの踏み遅れなどは十分起こり得る」と指摘する。

なくならない飲酒運転

 2021年の道交法違反(酒気帯び運転)容疑など飲酒運転に絡む摘発は2021年11月末現在、365件。死者数は7人に上り、ここ5年で最多だった2019年に並んだ。松本次席は「ハンドルを握ることは人の命を握ること。自身を含め、多くの人の人生を狂わせる飲酒運転は絶対やめて」と訴える。

 酒に強い、弱いという体質を問わず、アルコール分は数値に表れ、判断力は鈍る。たとえ基準値に達していなくても、その影響は翌日も体に残る恐れがある。東山と佐藤の2人は今年から県警担当として飲酒運転による事件、事故に接してきた。「一滴でも飲んだら絶対に乗らない」。悲惨な事故を引き起こす飲酒運転の怖さに、あらためて向き合っていくつもりでいる。


voicy中国新聞社チャンネル「聞いてみんさい!広島」

佐藤記者と東山記者が、試してみた感想などを語っています。ぜひ聞いてみてください。⇩⇩⇩