少し加えるだけで華やかな気分 エディブルフラワー 中国地方に専門カフェや農家
黄や紫、赤といった色鮮やかな「エディブルフラワー(食用花)」をあしらった料理やお菓子を飲食店などで目にすることが増えてきました。料理を華やかにするだけでなく、味や香りを楽しめるものもあります。自宅で育てることもできて、暮らしを豊かに彩ってくれそうです。(馬上稔子)
バラやビオラ、チェリーセージ…。みずみずしい花が、防府市のエディブルフラワーカフェ「れんげハウス」の店先に咲き誇っていた。店主の福田美由紀さん(65)はカフェや自宅の庭で約40種類を栽培。花をサラダにあしらったり、お茶やジャムに使ったりしている。
食用のため無農薬で栽培している。虫に食べられることがないよう手作業で虫を駆除したり葉を摘み取って風通しをよくしたり小まめな手入れが必要だ。それでも、「自分で育てた花を、生活にどう取り入れるのか考えるのが面白い」と福田さんは話す。
収穫した花は水を張ったボウルなどで優しく洗い、水気を切って使う。ビオラは黄や紫など鮮やかな色が映える一方、味や香りが少なく料理の邪魔をしないのでサラダや前菜、スイーツなどの飾りに最適。ハーブ類は基本的に花も葉も味わえるが、バラは花びらを食べる。
花は刻んで調理するほか、塩に混ぜて調味料として使ってもおいしい。福田さんは「少し加えるだけでも華やかな気分になる。手軽に育てられる食用ハーブの花から始めるといいですよ」とほほ笑む。
関東や静岡県を拠点に活動するエディブルフラワー研究家の小松美枝子さんによると、野菜やハーブの花なども含め、エディブルフラワーは少なくとも100種類以上ある。「それぞれ味や香りに強弱があるなど個性的。ビタミンが豊富な花もあれば、疲れを取るといわれるものもある」と説明する。
家庭で育てる場合、花は観賞用として売られているものではなく、農薬などが使われていないエディブルフラワー専用の種や苗を購入して育てるといい。スズランなど毒性があり食べられない花もあるため、注意が必要だ。
需要の高まりを受けて中国地方では、エディブルフラワーを栽培する農家もある。安芸高田市の「あちゅらむ農園」では2020年から、ハウス7棟で野菜やハーブの若芽であるマイクログリーンとともに季節に応じて年間15~20種類の花を育てる。通年で収穫できるため安定した収益が得られ、東京や大阪など県外の飲食店に出荷している。
インスタグラムなどを通じて個人からも注文を受け付ける。代表の栗栖伸明さん(43)は「料理を主役級の存在感にしてくれ、味の違いも楽しめる。料理を引き立てる可能性に満ちています」と話している。