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語れば語るほど自由で奥深い「住む」─004号発刊記念イベント@尾道

2023年12月17日(日)に広島県尾道市で開催されたトークイベントについて、百年会議会員の河原和也さんがレポートを書いてくださいました!

会員の港の編集室・中尾圭さん主催で、尾道でのイベントが開催されました。尾道で古民家リノベーションによる場づくりをしている人たちに話を聞き、町を歩きながら実際の現場を見ていく体験ツアーです。

午前中は尾道の町なかにあるソーシャルキッチンオノミチに集合。ちなみに私はここに併設されているゲストハウスヤドカーリに宿泊していました。古民家をリノベーションしたとても自由な建物です。私の宿泊したのは秘密基地のような屋根裏部屋で、非日常感のある空間でした。


商店街にあった唯一のスーパー

イベントの前半は、福山市立大学講師/まちづくり活動家の大谷悠さんの案内で尾道の町歩きをするというもの。商店街をスタートし、山手の方に上がっていきます。坂の上の狭い路地を歩いていくと、古い家が密集していて迷路のよう。しばらく上がったところに、大谷さんが手掛けた「迷宮堂」があります。二棟の古民家が並んでいて、奥の方はまだ改修の真っ最中。中を見学させて頂きながらこれまでのお話をお聞きしました。ほとんど素人の状態からスタートしたリノベーション。仲間を募り、経験者のアドバイスを受けながら手探りで改修を進めてきたといいます。


大谷さんの拠点・迷宮堂で改修ヒストリーを伺う


迷宮堂の裏手にある現在改修中の物件(撮影:守本桂子さん)

階段室が吹き抜けになっていたり、アイランドキッチンを自作したりなど、見ているだけでわくわくするような空間です。天井の材は近所の材木屋さんで格安で手に入れ、100均の墨汁で塗装するなど、お金をかけない工夫も随所に見られます。

大谷さんの元に集まってきた仲間たちもまた、ほとんどが素人でした。そんな中、例えば料理のスキルがある人がごはん担当をするなど、それぞれが得意分野を活かしながら役割分担をして、楽しみながら、意見を交わしながら作っていったそうです。プロの指導を受けながらとはいえ、かなり難しい工事もされているように見えます。これだけのことをほとんど素人しかいないチームでやってのけたのは本当にすごい。仲間たちとコミュニケーションをとり、楽しみながらやっていく。簡単なようで、施主には様々な工夫が必要です。

それぞれの得意、不得意を見極め、きちんと交流する場も設けながらチームのモチベーションを維持していくというのは、なかなか高度なマネジメント能力です。もちろん大谷さんの人柄もあるでしょう。それらはお金では代替できないし、また仲間たちで作り上げた場所とそこに付随する思い出は、自分たちでやったからこそ得難いものとして残るのかもしれません。

ヒロさんのドーナツとコーヒーを味わいながら(撮影:瀬戸房子さん)

イベント後半はソーシャルキッチンオノミチに戻り、ゲストハウスヤドカーリの2階スペースでトークイベントが開かれました。大谷さんとソーシャルキッチンオノミチのオーナー村上さん、そして森田さんをスピーカーに、004号を出発点としてそれぞれの「家」について語り合います。開始時刻までにお客さんがどんどん増えていき、そう広くない部屋に20人くらいがひしめく賑やかなイベントとなりました。村上さんがお店で作っているドーナツも頂きました。

トークの口火を切ったのは森田さん。「みんなでつくる中国山地」のこれまでの話から、地域としての中国山地の歴史へと広がっていきます。中国山地の物資と人の流れは尾道から北前船に乗って全国各地に運ばれて行きました。尾道は「道の尾」、つまり終着点だったというわけです。不思議な縁を感じます。

大谷さんからはドイツ・ライプツィヒでの経験をお聞きしました。詳細は本誌にもあるので触れませんが、「日本の家」での、自分たちで場を作って様々な人たちと交流してきた経験は迷宮堂などの取り組みに直接繋がっているのだろうと感じました。

村上さんはご自身のライフヒストリーから話して下さいました。やりたいことを探し、海外で音楽活動をするなどした後、尾道に移住した村上さん。そこで空き家を借りて自らリノベーションし、場を作ってきました。そこでは様々な交流が生まれ、仲間もどんどん増えていきました。自分のやりたいことをやりつつ、仲間を作ってどんどん広げていく。

尾道はそうやって中心になる人がいて、それを面白がる人が集まって作られてきた街なのだと改めて思いました。

集まったお客さんは大谷さん、村上さんの仲間たちを中心に、尾道で形成されてきたコミュニティの人たち。不動産業に関わる人、ジャーナリスト、隣町の議員、地域づくり活動に関わる高校生など、本当に多彩です。様々な立場からのお話をお聞きし、地域や家についての意見や悩みを共有し、とても刺激的な時間となりました。

「住む」は難しいけれど、語れば語るほど自由で奥深いテーマです。改めてそれぞれの「住む」とは何かを問い直せば、そこから広がるものが沢山ある。そんな実感を得た二日間でした。

大谷さんのご近所さんにたくさんの柚子をいただきました

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