三菱商事の2019年3月期通期決算(2018年Q4決算)を読む~実質的に石炭次第?
今回は総合商社の三菱商事についてみていきます。
三菱商事についてはもはや説明不要でしょう。
日本を代表する大企業であり、大手商社の中でも抜きんでたブランド力を持っている企業です。
しかし、その事業内容をしっかり理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。
今回は、三菱商事の2019年3月期の決算内容を見ていくとともに、同社の事業内容や関連企業とのつながりなどを、各種統計や会社側資料をもとに見ていきたいと思います。
まずはいつものように、お手元に三菱商事のサイトから以下の決算資料を落としてきてご用意ください。
今回は以下のものを中心にみていきます。
※なお、以下に載せる画像の多くは特別な表記がないかぎり同社の決算資料より引用しております。
※過去の同社の決算に関しては以下をごらんください。
⇒三菱商事 2018年3月期決算短評 ~やっぱり資源価格次第の商社決算~
三菱商事 2019年3月期通期決算(2018年Q4決算) 概略
まずはざっくりと決算数字を確認していきます。
まず最初に、収益が112.8%増となっていますが、これは三菱商事が採用している国際会計基準IFRS第15号の適用によるものであって、いきなり三菱商事の事業が2倍に増えたというわけではありません。
現実の事業規模としては税引き前利益でみるのがよろしいかと思います。(その方が、対価ビジネスとしての商社の業容がみえてきやすいと思われます。)
税引き前利益でみると三菱商事の昨年度業績は4.8%増、当期利益は5.8%増、包括利益は2.7%増となっています。
総じて、昨年度の三菱商事の業績は渋く推移したと言えると思います。
なお、商社を見る時には、業容の規模の推移に関しては税引き前利益をみるべきで、
事業が健全に推移しているかを見る時には、包括利益を見るべきと個人的には思っております。
それは、昨今の商社はかつての商社と異なり、トレーディングや仲介ビジネスで稼ぐだけでなく、投資行動によって行われるビジネスも増えてきているから。
しかもそのうちの幾つかは、IFRSで投資損益が純損益に反映されないFVTOCI(Financial assets at fair value through other comprehensive income)となっていることも多いからです。
日本の投資家の多くは純損益で見る癖がついていますから、あまり包括利益は見ない傾向にあるかと思います。
しかし、商社などのような会計センスのいい人達が作った決算報告書は、ちゃんと見た方がいいです。
思わぬ陥穽が存在する可能性もありますので。
とりあえず、三菱商事の今期決算ではそういったものはありません。
以下に損益計算書と包括利益計算書をのせておきます。
というわけで、次に三菱商事の業績推移をみていきましょう。
以下のようになっています。
三菱商事の業績推移 2007年~2018年
三菱商事の業績は以下のように推移しています。
(会社資料より筆者作成)
国内市場ではイキっている三菱商事ですが、その実、業容はここ10年あまり拡大していません。
というか、利益レベルに関していえばほぼ横ばいを推移しています。
一般的な印象では三菱商事は優良企業というイメージでしょうが、こと経営成績という点ではあまり芳しい成果を上げていないことがわかります。
次に、この低迷の理由について、各セグメントごとの事業推移から見ていきたいと思います。
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