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人は何歳になっても自己ベストを更新できるのかチャレンジしてみた⑲

走りはじめて20年余り。ずっとのんびりゆっくり走ってきて、もう一生それでいいと思っていました。が、コロナ禍をきっかけに何でもやってみようと、齢50を前にフルマラソンのタイム更新(サブ4目標)に真面目に取り組んでいる記録です。今回は距離走のお話。いつも2000字目安に書いていたのですが、走った距離同様にロングな文章となってしまい、5000字超えてしまいました。。

次の目標

表参道ウィメンズ10キロを走った後、ぽっかりと次の具体的な目標がなくなるのんびり期間となりました。オンラインマラソン部は新たな期が始まり、ちょうど目標設定という宿題が出たりしていました。
東京の練習会で坂道ダッシュ×10とか、翌日に山で裸足でぬかるみを歩くとか、思いつくまま予定を入れて楽しんでいた頃、昨年当初目指していた横浜マラソン(2021年10月31日開催予定で中止)の優先枠エントリーのお知らせがきました。2022年は10月30日の開催とのこと。まだ7ヶ月近くあります。次のシーズンまでには、この1年試行錯誤してきたことをもう1回繰り返せば、結構いけるところまでいけるのでは?と表参道の自己ベストで気が大きくなっている自分もいて、このnoteの1回目にも書いたPBを持つつくばマラソン(11月開催)で、どこまで過去の自分に迫れるかというドラマも選択肢の一つとして考えていました。
どうしようかなぁ、、とランネット(大会ガイド・エントリーをするサイト)を見ていると、「柴又100kmレイトエントリー」というポップアップが目にとまりました。

https://tokyo100k.jp/

柴又60kmの部エントリー

つくばの開催がいつか見ようとしていたら、完全に別のものに目がいってしまいました。その昔、今よりもっと自由に時間が取れた頃に初めて走ったウルトラは、当時8月開催だった真夏の奥武蔵ウルトラマラソン75km。当時もまさか自分がそんな距離を走るとは想像すらしていませんでしたが、おしゃべりしながら長い距離を走る力がついていった視覚障害伴走のおかげで完走できました。その後も宮古島の100kmなど完走していますが、既にあれから16年くらい経ってます。
ウルトラかぁ、、スピードを追い求める練習を積んでいこうと思っていたけど、この時期に長いのってどうなんだろう、、せっかくキロ5分40が出るようになってきたのに、またキロ7分台で走るのってどうなんだろう、、そもそも今の私に走りきれるだろうか・・。あの頃に比べればよほど今の方が日々の身体作りはしているかも?第10回記念大会か、、日帰りできるな、、いやでも100はさすがにハードル高いな、、60の部もあるのか・・・ とグルグル考えていたとき、毎週月曜日配信される「しいたけ占い」にこんなことが書かれていました。「今のあなたは「突き破っていく」という言葉がキーワード。〇〇をやってみたい、とパッと思いついたことは、できればやってみてください」(中略)あなたの馬力はすごいから、疲れることがあってもやってみて!」なるほど。疲れるけどやってみること。まさに、その時じゃない?

えぃっ。
しいたけさんに背中を押されてポチっとしてしまいました。

LTビルドアップ走の土曜日

レイトエントリーしただけあって、気づくともう1ヶ月後はすぐそこ。その昔、対策に付き合ってもらった伴走の師匠に「昔皇居でやっていた60km走、いつくらいにやってましたっけ?」とメッセージを送ってみると、「本番1ヶ月前。60kmを8時間以内が合格だったと思います」と返事がきました。
5月22日が本番ですが、その返事をもらったのは4月20日(水)。その週末の土曜日は、オンラインマラソン部のビルドアップLT走の練習会を以前から申し込んでいました。この練習会の目的は、自分のLT(乳酸性作業閾地内で走る)ペース感覚をつかむこと。体調によってレベルを調整できるので、一番遅いペースの7分チームに入りました。気温は25度まで上がる夏日。いつもよりゆっくりながらも、目標の心拍数を超えてしまいましたが、メニューをこなし、最後1kmだけペースを上げてみると5分4秒で走れました。


練習後、監督や部長に、LTペースの心拍数の考え方を改めて確認し、明日のロング走決行を決めました。

60km走の日曜日

天気予報は曇りのち雨。ガーミンでは生理周期も表示され、2,3日前から「そろそろ生理です」と書かれているのを気にしていました。でも今のところまだ来ていない、ラッキー。7時半から走りはじめる想定で、4時半頃にしっかり朝食を食べ、自給自足用の小さめのおむすびを梅干しを入れて握ってリュックに詰めました。

午後から70%の雨模様。雨対策のカバーやゴミ袋も入れていこう。なるべく早く走り始めて、雨に打たれる時間を少なく、無事走り終えますように。

Start→20km  ~Sunday Morning /マルーン5

馴染みのJOGLISに荷物を預け、水と梅ソルティの500mlのペットボトルと食べ物はエコバックに入れて公園ベンチの下にいれ、準備運動をすませて7:50に半蔵門をスタートしました。
貴重品とラムネなど最低限のものを軽量リュックに入れていますが、リュックの揺れは気になりません。走りはじめて間もなく、聴いていたラジオから流れ始めたのは、マルーン5のSunday Morning。ぴったりです。若干昨日の筋肉痛が腿裏にあるのを感じながら、三宅坂を下りきって最初の1kmは7分4秒。想定は7分半前後、とにかくゆっくりだったので、若干早い入りです。心拍数は135と低めでしたが、まあそのうち上がるだろう、ゆっくり、ゆっくり、を心がけつつ淡々と進みました。
走り始めはまだ他のランナーも少なかったですが、2周終えた頃、おそらく9時集合の団体がちらほら増えてきました。なんだかお腹すいてきたかも・・。朝ご飯食べ終わってから今何時間経過してる?最初の1周目を終えたときは12分の1、って考えるとうんざりしたけど、6分の1終えたって思うとなんだか急に進んだ感じがしない?と一人会話しながら、3周目の竹橋をのぼりきったところで、絶対お腹空き始めてる、ジェル状のアミノバイタルを口にしました。普段ゼリー飲料はほとんど使わないので、試供品で配られて家に転がっていた物を入れてきただけだったのですが、確か表参道の時に配られたもの。パッケージを見ると「運動前に飲む!30分前が効果的です」と書かれています。あ、そうなのね・・もう運動中だけど。。「運動前効果」は効いたようで、無事最初の4周を終えました。

20km→40km ~We are all alone /Boz Scaggs

10時半を過ぎると、皇居はまさにランナーのパラダイス。次々と元気なランナーたちが背中には誇らしげな完走Tシャツのロゴが飛び込んできます。東京、名古屋、湘南、横浜、山形、東北、隠岐の島・・・走友会や、おもしろキャッチフレーズを背中に乗せたTシャツが否応なく目に入るので、バーチャルでランネットをサーフィンしている気分にもしてくれます。
20キロの給水のとき、半蔵門のベンチの下に入れていたおむすびをリュックにいれました。当初はそのベンチをエイド代わりにしようと思っていましたが、トイレなどいくとどうしても時間を食います。雨模様が心配だったので、足を温存するためにも時間を節約するためにも、止まることなく、ただし竹橋の登りはすべて歩きながら、そこをエイド代わりに使うことにしました。竹橋まできたら、リュックから小分けにしたおにぎりなどを、よくよく噛みながら、歩いて登り切ります。すると登り切ったところにある交番横の水飲み場があるので水を飲む、ということを繰り返しました。5キロに1回の竹橋のぼりあるきエイドを楽しみに、それ以外はすべて走り、を繰り返すと、35キロくらいまでは心拍数も140台より上にいくことはなく、いいペースで進みました。そのラジオはIMF国際通貨基金の人がコロナ下でも日本の倒産企業は少なかった、むしろ歴史的には低い水準だった、それには政府の対応が世界相対的に考えると良かったというようなことを喋っていて、へぇーそうだったんだー、、と聞き入っているうちに30kmまできました。6分の1で喜んでいたけど、2分の1まできたぞ!と思ったそのとき。ポツ、とひとつぶ。あれ?もしかして・・ついに雨?そのとき、耳からはOutside the rain begins・・・という歌が流れてきました。

この歌はラブソングかもしれませんが、この時のWe are all aloneは、走ってるときはみんな一人、でもみんなゴールに向かって頑張ってる。というメッセージソングにしか聞こえず、顔に当たる雨を拭こうと手をやると、ザラッと塩が吹き出していることに初めて気がつきました。

40km→60km ~Matsuri / Kaze Fujii

竹橋エイドで補給しながらも、あと残っている補食はおにぎり1個とプロテイン。パウダーとシェイカーは面倒くさくて結局後回しでいいや、とひたすら糖質のみの補給で繋ぎつつ、相変わらず心拍数は150はいかずに淡々と刻んでいました。雨はだんだんとしっかり降ってきましたが、あくまでも小降り。もう甘い物は口に入れたくない、さっきの塩のざらつきを感じたせいか、ものすごく塩分が恋しい。干し梅もってくればよかったなぁ・・。次の竹橋で、おにぎりを少しだけ、梅干しのところを味わって食べよう、と思いながら進みます。あれだけ賑やかだったランナーパラダイスも、午後の雨予報を皆知ってか、サークル活動も一段落したのか、午後1時にはすっかり閑散としてきました。もうすぐ42キロにさしかかろうとしたそのとき。
「時刻は午後1時を回りました、現在の気温は19.9度、悪くないよね?・・」「ここでLaset week Top10、CMのあとは1位の曲オンエア」とクリペプさんの声が聞こえた時点でペースアップしてしまいます。CM明け聞こえてきたのは

Hello, this is Kaze. I’m in Los Angels now and just heard that Matsuri is No.1 on TOKIO HOT 100 … 毎日愛しき何かのまつりっちゅうことで、俺らはわしらは皆んなは既に何もかも持ってるんだってことを思い出してくれたら嬉しいです Always you got everything you need. Peace.

二重橋前の直線、前にも後ろにもランナーの姿がいない真っ直ぐな道、しかも雨の中、一人で走ってる私にこのメッセージ。ランニングハイになる条件が全部そろってしまいました。よっしゃ、いったる。私は走りきる力を既にもってる。こんなに満たされてる。どんなエイドフードよりも効く栄養剤をつぎ込まれた気持ちで、雨に打たれながらも残り4周への力をもらいました。

そして50kmを過ぎたとき、Battery low と耳元のAnkerイヤホンがささやきます。経験上、もう1度これを聞くと、急に音が落ちることが判っていたので、予めイヤホンを外しました。携帯も残り1%とこちらも瀕死です。あろうことか、モバイルバッテリーもケーブルも持ってきたのにジョグリスに置きっぱなしでした。よし、残りは、周りの音と自分の息づかいと足音をきながら進もうと、気持ちを切り替えました。
11周目の三宅坂。雨のおかげもあって、むせかえる新緑の匂いを嗅ぐと、脳内には勝手にBGMが。口をついて出てくる”ガーデン”という曲を歌いながら進みます。”鳥は春を告げて 私は恋をして・・・” 歌えるくらいだから、足は痛いけど、大丈夫、まだ元気。 
12周目。最後の1周の前に半蔵門から眼下の景色を撮りたかったけど、既に携帯は完落ちしていました。ラストは竹橋も走ろう。泣いても笑ってもあと1周。ここでようやく持ってきたプロテインを半蔵門のベンチで飲み、すでにずぶ濡れ手重くなったリュックはベンチ下に入れて、身軽になって最後の1周を走りました。ラストは竹橋も。苦しいときはピッチぎみに、頭から糸で前方から引っ張られて、腕を真後ろに引いて、肩甲骨と連動させれば足は出る、着地はフラット、骨盤起こす!昨日のLT走で6キロ走ったあとに1kmどれだけ上げられるか見たように、59km走ったあとにラスト1kmどれだけ上げられるか実験してみようとしましたが、7分17が精一杯でした。本当に足を引きずるようなゴールではありましたが、頭は最後まで冷静だったと思います。

走り終えて

ゴールは16:40。トータル7時間49分22秒。目標の8時間以内の合格圏に入れました。ジョグリスでシャワーを浴び、家へ連絡して子ども達と夫に、「すみませんが今夜はママは夕飯は作れません宣言」をし、駅の近くの韓国料理屋さんに現地集合として娘を呼び出し、保冷剤とベルトを持ってきてもらい、股関節ぐるぐるまきにして食べた参鶏湯は五臓六腑に染み渡りました。

雨はまだまだ降り続いていましたが、テイクアウトで持って帰ったチヂミと冷麺を息子が食べている間に、傘さして自転車漕いででも行きたい場所がありました。待っていたのは近所の銭湯。温冷交互浴を繰り返しながら、改めて今日の長い1日を振り返るのでした。(つづく)

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