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無関係な連想#2 自浄作用

「腐った朝」って、こういうものなんだな。
葉月になってから六日目の朝を、腐らせてしまった。朝と言っても、怒りや不安や恐怖が頭を占拠してしまって一晩中眠りにつけなかったせいで、気持ち的にまだ暗い時刻にいる気がした。でも、カーテン越しに入ってきた胡散臭いと思うほど蒼白な朝日は、早くどこかへ逃げたいと焦っていた私にとっては、この上ない救いだった。

「清算が必要だ。」
頭の中にずっと音をせずに囁いてくれる透明な声が、今回はかなり強い口調になってこだまする。断ち切るタイミングはいくらでもあったのに、見て見ぬふりをする先延ばし症候群があまりにもひどかっからこんな目に遭うんだと、怒られた気持ち。

去年12月から途切れ途切れに続けていたあることについて、書き留めるためにパソコンのメモ帳にずらりと記録を並べてみた。会社のパソコンで。見えないとこかで監視ソフトを通して、私の取るに足りない記録を誰かがニヤニヤしながら見ているんじゃないかと、微かなスリルを覚えながら。

何を求めてそうしていたのか、「何をしてるのなんて、口が裂けても言えないや」。いつもこういう気分だ。書きながら笑いそうになってくる。嘲笑いの、笑い。“誰も分からない秘密の冒険”と美化するのはもはや嘘の類。ちっぽけでくだらない”微かなスリル”を求めていただけという単純で愚かな事実。その渣滓が体内をどんどん侵食していく。誰にも言わずとも、喉に詰まらせる嘘すらなっていない虚しい澱みは、すりガラス越しにでもすでに気付かれたんだろう。残渣はそのまま放置すると、悪臭を放つようになるから。

ずいぶん前からわかっているつもりじゃないか?流しそうめん器のレールみたいなもの。自分が流すものは、何回も何回もくるくる回って、結局自分のところに水流でボロボロになって返ってくるだけ。どうでもよかった軽率な気持ちで流しただけなのに、誰かに取ってもらいたいのはあんまりにも身勝手なこと。そもそもこんなにも歯がゆく感じるのは、本当に誰かに取って欲しかったからなのか、それともただ目の前に無惨な姿になったそうめんを見て寂しくなっただけなのか。

いずれにせよ、こんな生活をやめにするのだ。
ボロボロになるそうめんはもう作らない。作りたくないのだ。

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