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下剋上独身婚活戦記【第1話】 準備

【第0話】プロローグ

吾輩は独身男性である。交際経験はまだ無い。どこで人生を間違えたのかとんと見当がつかぬ。心当たりが多すぎるからだ。

これまで異性関係で良い思いを一切したことのない人間に最も欠けているものは何だろうか。それは自信である。しかも、根拠に満ちあふれた自信のなさだ。

今回は婚活とかそれ以前に「どうやって自信をつけるか」という話をやっていく。自尊心がボロボロの人間がどうやって自尊心を回復していくか、という話として単発でも役立つだろう。

自信をつけるにはどうすれば良いか:理論編

「自信のなさ」にはどう対処すれば良いだろうか。おそらく、多くの人は「とにかくやってみろ」と言うだろう。それは一面の真実だが、一面しか照らし出していない。量が質に転化するのは、大まかに道筋が合っている時だけである。生育環境に恵まれず、全く見当違いの道を歩いてきた人はまず道を知る必要がある。

そして落ち着いて考えてほしい。自信がない人の雰囲気はわかりやすい。相手の目を見られない、喋るときに間を怖がる。そういった部分を全部努力で何とかしようとすると、逆に不自然になる。だから失敗する。余計自信がなくなる。以下悪循環。

幸か不幸か、最低限の自信すらなくすような人生を歩んでいない人にはこの惨めさは分からない。だから、まずは認知行動療法などを駆使して最低限の自信をつけよう。これはマイナス2億の状態をマイナス100くらいまでもっていく技術だ。

『自信をもてない人のための心理学』を読め

心理学素人の役に立たないアドバイスを真に受けて落ち込むな。信頼できる書籍や論文や専門家を信じろ。

自信のなさについては様々な本を読んできたが、最近読んだ『自信をもてない人のための心理学』を紹介したい。心理系について言えば、紀伊國屋書店がこんな感じの装丁で出している翻訳物はとても役立つ。『他人がこわい』もなかなか良かった。

具体的な手法はだいたい認知行動療法なので類書と大差がないし、フランスの事例なので日本人には馴染みにくい部分もあるのだが、本書の良いところは自信の構造化が巧みなところである。第1章の冒頭がなかなかに良い。自信がないことで起こる問題を端的に言い表している。

自分に自信がないと、毎日の生活のなかで、どんなことが起こるでしょうか? まず自分のしたいことができません。また、できることも結局はしないまま終わってしまいます。その結果、「自分には何もできない」と考え、更に自信を失ってしまいます。そうすると、自分はダメな人間だという思いが強まり、何かに挑戦しようという気持ちが起こりません。そうして、このような<悪いサイクル>にはまってしまった結果、ますます自信を失っていくことになります。これが<自信を失うメカニズム>——悪い形で物事が進んでいく時のメカニズムです。(p.13)

ではこのサイクルはどう切れば良いだろうか。自己評価を高めること、行動すること、自己主張することが大事だと説かれている。

普通の人は自己評価に深刻な問題を抱えていないので行動すれば何とかなる。しかし自己評価が壊滅しているとそうではない。

あなたが自分に悪いイメージを抱いていると、他人もまた、あなたに悪いイメージを持つことになるからです。あなたがあまりにも自分を卑下すると、まわりの人々も、あなたのことを取るに足らない人間だと思ってしまいます。(p.24)

この自己成就予言的な卑下を止めなければ、行動はむしろ悪循環を呼んでしまう。

ではどうすれば良いかというと、結局は行動するしかないのだ——ただし、簡単なことから始めることが大事だ。本書の面白いところは、自信をシャンパンタワーになぞらえて説明している点だ。根底に自己評価があり、その上に行動と自己主張が積まれている。自己主張の器に十分なシャンパンを注げば、行動や自己評価にも波及するというわけだ。自信はピラミッドではなく相互依存的であるという説明は本書のオリジナリティであり、行動のイメージが湧いてくる良いたとえだと思う。

自己評価には3つの側面が存在するという。

  1. 自分がほかの人と同じように、かけがえのない人間であること

  2. 自分にはそれなりに能力があること、あるいは努力次第で能力が身につくはずだということ

  3. 自分はほかの人から愛され、必要とされているということ。ひとりの人間として認められ、尊重されているということ

私には2の「能力に対する自信」しかない。そのため、技術的なところでは行動も自己主張もできる。しかし1と3の「人格に対する自信」が壊滅しているため、愛されようとすると途端に何もできなくなるのだ、ということが理解できた。

悪いのはあなたの人格ではなく、神経系である

自信の無い人の一部は、自分に課しているハードルがものすごく高い。というか、これまでの人生で、高いハードルを越さないと認めてもらえなかったので、「当然の」課題をこなしたところで満足感は絶対に得られない。だから自分の中でのハードルを満たしていない事柄を褒められてもよくわからない。

そして、人によってはそういう固い認知しかできないことに若干嫌気がさしている。あるいは、常に自分の中にある基準を満たせていなくて自己嫌悪に陥っている。

それは内面化してしまった誰かのジャッジによって起こっている苦しみなので、ここを深掘りしていっても行き止まりになりやすい。

そこでポリヴェーガル理論を持ち出そう。あなたの苦しみは生育環境のせいで神経がバグっているだけだ。生育環境でストレスを受け続けたことで神経が闘争・逃走反応の状態に入りやすく、安心できないだけなのだ。要するに、意志が弱いとか、出来が悪いというわけではなく、環境に適応するために変な発達をしてしまっただけなのだ。

神経もたかが臓器の一部である。胃が弱いとか、鼻が詰まりやすいとか、そういったのと同じように、神経が痛みやすいだけだと考えると気が楽になるはずだ。

もう一つ提案したいのが、自分のネガティブな感情については子供をあやすように取り組むことだ。この辺りの話はアダルトチルドレン関係の書籍が役に立つ可能性がある。保護者があなたの感情を保護してくれなかったのなら、自分自身が保護者になるしかない。

覚えておいてほしいのは、「あなたが」悪いわけではなく、「あなたの神経が」悪いだけだということだ。あなたが差別主義者ではない限り、この考え方は自分を免責するきっかけになるはずだと思う。たとえば遺伝的に糖尿病になりやすく、節制していても糖尿病になってしまう人は「悪い」のだろうか。あるいは乱雑な食生活でも身体を壊さない人は「良い」のだろうか。そうではないだろう。今後、しんどい気持ちになったら自分を責めるのではなく、「また神経が痛んでるなぁ」くらいに思おう。胃が痛いときには消化の良い食べ物を食べるように、神経もいたわれば良いのだ。

自信をつけるための行動

さて、自信をつけるための行動に移ろう。目的は以下の2点だ。

  • 自分がほかの人と同じように、かけがえのない人間であると信じられるようになる

  • 自分はほかの人から愛され、必要とされているということ。ひとりの人間として認められ、尊重されていると信じられるようになる

はじめに断っておくが、常にストレスを受け続ける環境にいるなら、まずはそこから出よう。デバフがかかっている状態は避けるに越したことはない。デバフ環境にずっといる人は気付かないだろうが、普通の人はデバフを受けずに育っている。実際、私のメンタル改善に一番効いたのは「実家を出ること」だった。メンタルを崩しやすい人は我慢しがちだから、さっさと逃げるほうが良い。

デバフから離れたら次に、身なりを整えよう。

  • 髪型を整える

  • ヘアケア、スキンケアをする

  • 服に気を遣う

  • ボディメイクを少しでもやる

の4つをまず実行すべきだ。

いや、言いたいことは分かる。自分を低く評価していると、「自分なんかが……」と思ってしまう。かつての私もそうだった。だから、認知を書き換えよう。

他人から気に入られるために身なりを整えるのではなく、自分を大切にする練習のために身なりを整えるのだ。

自己評価の低い人間はしばしば、自分を粗末に扱っている。セルフネグレクトの状態だ。かつての自分もそうだったから気持ちはよく分かる。しかし、まず自分を大切にしなければ、他人を大切にすることはできない。残念ながらあなたを大切に扱ってくれる人がこれまでいなかったのならば、自分で自分を大切に扱うしかない。上掲の『自信をもてない人のための心理学』では、自分に対して親友に接するように接しようと書かれている。私は過去にこの友人メソッドを自力で編み出しているが、確かに相当メンタルが改善したのでぜひ勧めたいメソッドだ。

疲れてそこまで手が回らない……めんどくさい……という気持ちも分かる。私もキャリアの初期は労働で疲弊していたので共感できる話だ。とはいえ良くも悪くも、面倒さが勝るときの疲れは肉体的な疲労ではなく精神的な疲労であることが多い。

良いところなんてあるだろうか。実はある。良いところは、精神的に疲れている状態では肉体的には余裕がある場合が多いことだ。対して悪いところは、精神的な疲労が溜まると家が汚くなるので家で休んでいても回復が難しいことだ。疲れているところ申し訳ないが外に出て回復できる行動をとってほしい。映画、ライブ、運転、運動、温泉など、人それぞれの方法があるだろう。金のかからない方法としては自然のなかを歩くというものもある。

自分を大切にする4つに取り組む順番はどれでも良いが、ここでは認知行動療法のテクニックを使うのがオススメだ。たとえば髪型であれば、美容院を予約する前の気分をメモしておこう。行く前は「自分みたいなブサイクが行って笑われないだろうか」という気持ちが強いと思う。しかし、行った後は純粋に髪がすっきりしたりとか、笑わずにきちんと応対してくれたとか、色々とプラスの発見があるはずだ。それをメモしよう。

そして、これは認知行動療法の本ではあまり語られないことだと思うのだが、セルフネグレクトしている人間は身体性を軽視している。不快感がデフォルトにあるので、あまり自分の身体の感覚に気を払わない。なので、身体感覚に注目する、というのは一つのポイントだと思う。何を隠そう、私自身が「歯磨きをすると口の中がさっぱりする」レベルのことに気付いたのはほんの3〜4年前のことだ。自分を粗末に扱っていると、それくらい感覚は鈍磨する。

他にも、ちょっと良い生地の服を着ると肌触りが良いとか、その程度で良いので「自分を大切にしてみたらちょっと良いことがあった」という細かい変化を書き連ねよう。

そうやって自分を大切にしていると、少しずつ自分への否定的な目線が薄れてくるはずだ。人間嫌いも発症している人は、ここで DEATH STRANDING をやるのも良いだろう。

そうしたら次は、誘いやすい友人を自分から食事や飲みに誘ってみよう。服が好きな友人がいれば、服を買いに行くのでも良い。

自己評価の低い人間は「自分なんかが誘ったら迷惑なのではないか……」と思っているが、逆の立場になって考えてほしい。自分が友人から誘われたら嫌だろうか。たまたま別の予定があって断る時も、嫌いだから断っているわけではないはずだ。だから安心して人を誘おう。予定が合わなくてダメな時もあるが、「冬期谷川岳を一ノ倉沢ルートで行こう」レベルの無茶な提案をしていない限りは割と誘いに乗ってくれるはずだ。

これくらいまでやれば、

  • 自分が「かけがえのない人間」かどうかはともかく、粗末に扱うほどではないだろう

  • 自分が「ほかの人から愛される」かはともかく、最低限尊重される権利はあるだろう

と思えるようになっているだろう。

自己評価がズタボロの人間はこの過程に数年かかるかもしれない。私は10年くらいかかっている。上でも述べたが、外から見えないだけで神経系はボロボロなのだ。脚の骨が折れている人間を無理に走らせることがないように、神経がボロボロになっている人間はまず回復に専念すべきである。脚の手術をした人が歩行訓練を徐々にやっていくように、神経も徐々に慣らしていくべきなのは言うまでもないだろう。たかが臓器なのだ。神経は見えないから骨折レベルの重傷でも無理させようとする人が多いが、まずはリハビリできる状態まで回復させなければならない。

私の背中を押してくれた友人の一人もだいぶ不適切な生育環境にいて、30歳近くになってようやく「人生の自由度ができてきた」と感じたという。私もそのクチだ。

ひょっとすると、あまり書かれないし、解決もされないだけで、実はこういう自己評価ズタボロ人間はけっこういるのではないだろうか。本稿が参考になれば幸いである。

次は自己評価の低い人間がどうやってマッチングアプリのプロフィールを作るかの話をしていく。有料部分はDM用にインスタのリンクのみ貼っている。TwitterのDM機能に制限がつく可能性を考えてインスタをDM先にしたら案の定のことが起こったので、この意思決定は正解だったと思う。

【第2話】プロフィール作成

補足: 「自分を大切にする練習」としてのセルフケアについて

「自分を大切にする練習」として、4つのセルフケアを紹介した。順番はどれでも良いが、強いて挙げるならボディメイクから始めると良いだろう。ボディメイクは一人でも、部屋の中で始められるため、一番手をつけやすい。体力もつく。ジムに行くお金がなかったり、人の目が気になったりする人は手始めにプリズナートレーニングをやると良いだろう。

お金に余裕があり、近くにジムがあるなら格闘技もオススメだ。競技者になると若干ヤンチャな人は増えるが、大抵は気の良い人々なので安心して良い。女性歓迎のところは治安も良いだろう。たぶん。私は最近柔術を始めたが、起床時間が早くなり、体力がついているのを感じている。これはランニングや筋トレでは得られなかった効果だ。

体質改善には時間がかかるので、始められるならボディメイクをしつつヘアケアとスキンケアを始めると良い。髪がボサボサになりにくかったり、肌荒れが減ったりと、常時地味に感じていた不快感が減るはずだ。というより、セルフケアを始めることで「これまで地味な不快感をずっと感じていたのだな」と気付ける。

服を整えるのは難しいが、ファッションが好きな友人がいれば一緒に買い物に行くと良い。ファッション好きはどこを見ているのかが分かるから、自然と見方が分かってくる。一つ好きなジャンルがあると、なぜか他のジャンルでもなんとなく自分に似合うものが分かってくるので、他人の目付けを見習うことを推奨したい。大事なのは「オシャレになる」ことではなく、「好きな服を見つける」ことだ。コーディネートのサービスだと目的がオシャレになることになりそうなので、好きの軸を見つけた後に補完的に使う方が効果的だと思う。

また、この手のアドバイスでは「おすすめのアイテムはこれ!」と紹介されることが多いが、自信を持ちたい人にはあまり合わないのではないかと思っている。

なぜなら、ファッションは主張でもあるからだ。確かに誰でも着られるオススメアイテムは無難ではある。とりあえずの評価軸としてスタンダードを着ることは否定しない。しかし、それでは何も主張していない。『自信をもてない人のための心理学』の紹介でも述べたが、自身を持てない人に足りないのは自己主張だ。ファッションは言葉を発さずともできる自己主張なのだから、敢えて少し冒険しても良いのではないかと思う。最低限のコードは守るべきではあるが。

もちろん買った服はきちんと洗って、ヨレヨレになったら外では着ないこと。柔軟剤も使って、時折はオキシクリーンなどで皮脂汚れを落とそう。柔軟剤の香りが苦手な人には無印良品の香りの付かない柔軟剤がオススメだ。

服に比べれば髪は簡単で、髪質に合う髪型を美容院でオーダーすれば良い。そこそこ良い値段するところなら、髪質の悩みを伝えて、そこから自分でセットのしやすいように切ってくださいとお願いすれば大抵いい感じになる。

イケメンマッチョならばどんな服装、髪型でもだいたい似合うが、大抵の人間は体型や髪質や顔のクセから逆算して「似合う」を意図的に作っていくしかない。イケメンの友人は「ある時期まではストリート系って誰でも似合うじゃんと思っていた」と言っていたが、思わず「は?」と食い気味に返してしまった。それくらい「似合う」の間口は人によって異なる。ボディメイクやヘアケア、スキンケアは「似合う」の間口を広げる営みでもある。頑張っていこう。

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