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2022年に買ってよかったもの

今年はあまりものを買っていないので、「モノ」「本」「エンタメ」の三部門で見ていく。去年はこちら。

モノ部門からはGRⅢxを除くと安いものしか出てこない

GRⅢxは旅カメラに最適な一台

スマートフォンで写真の撮れる時代になぜカメラを持つのか。人それぞれ理由はあるだろうが、スマートフォンの写真は光学的な正しさよりも補正による映えを重視するから、というのが私の答えになる。

どう現像するかを機械に委ねっきりになるのは良くないというのが私の信念だ。Lightroomの自動補正は参考にするけれど、絶対ではに。そういう人間にとって、大きなセンサーで光学的に正しい画が撮れることは利便性よりも大事なことなのだ。

RX1も良かったが、GRのほうが携帯性は高い。センサーサイズはそのぶんマイナスなのだが、歩留まり的にはGRのほうが良いので個人的にはトータルでGRのほうが好きだ。今後も使い続けたい。

アナログタイマーはポモドーロ・テクニックと相性抜群

ポモドーロ・テクニックの本を買って、時折ポモドーロで仕事や作業をしている。これまではデジタルタイマーを使っていたが、アナログにすることでけっこう捗っている。類似品はどれを買っても同じだと思うが、アナログタイマーを使うことで頭のスイッチを切り替えられて良い。

ブリタの浄水ポットで精神の安寧を手に入れた

別にブリタではなく無印でも良いと思うのだが、浄水ポットがあると精神が安定する。プラシーボかもしれないが、コーヒーや紅茶を浄水した水で淹れると若干おいしく感じる。もしもに備えてミネラルウォーターは常備しているが、普段飲みの水はコレでいい。

Creative Pebbleは良コスパのスピーカー

机の上を整理するついでにスピーカーをCreative Pebbleにしたのだが、2000円クラスのスピーカーとしては抜群に音が良い。この価格帯のスピーカーだとすぐにガビガビの音になる印象があるのだが、割ときちんと鳴る。4000円で買ったら「ちょっと損したなぁ」と感じるくらいの音質だろうか。2000円クラスの製品としては文句なし。

ダイソーの多目的スタンドはタブレット置き場に最適

スマートフォンやタブレットの置き場所に困ってはいないだろうか。

そんな人におすすめしたいのがダイソーのいろいろ使える多目的スタンド。「ダイソーで買ってよかったもの in 2022」堂々の一位である。

お皿やまな板、鍋蓋なんかを置くのに使えるのは言うまでもないのだが、iPadを置くのに重宝している。何より良いのは安さだ。たとえばサンワサプライの専用品であれば、7個収納可能なのは嬉しい一方で2000円以上する。中国メーカーの類似廉価品であっても1000円程度だ。

しかし、ダイソースタンドであれば3枚しか収納できない代わりに100円だ。スチール素材だからiPad ProやMacBook Proを雑に置いてもびくともしないのも嬉しい。これがキッチン用品専用となるともうちょっと大きくなってしまうので、小さいことが逆に有利に働いている。

収納枚数だけはマイナスだが、よく考えてほしい。ガジェットマニアでなければそんな多数のタブレットやスマートフォンを持っていないはずだ。たとえば我が家ではMacBook Pro, iPad Pro, iPad Miniの3枚を収納しているが、これ以上増やす必要性は感じない。

専用品を必要とするほどガジェットがあるわけではない、けれどタブレットやノートPCの置き場所は欲しい。それでいて価格は抑えたい、という人にはぜひオススメしたい一品である。なんせ100円だし。あと、製品によっては無線充電が反応してしまうかもしれないので注意。

本は今年発売のものから選ぶ

12/11現在、2022年は74冊読んでいる。とはいえ今更『21世紀の資本』を紹介するのも遅いだろうし、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の邦訳は2021年だ。というわけで今年発売のものに限って紹介する。

『NSA』は現代インターネットの負の面を炙り出す歴史改変SF

記事に書きたいことはだいたい書いたのだが、歴史改変SFが好きなのかもしれないと思って先日『パヴァーヌ』を買った。年末年始で読めればいいな…

『ポストモーテム』はIT運用に関わる人なら必読の一冊

『ポストモーテム』を読んだ話をしたらSREチームの人からも「いいよね〜」と言ってもらえたので、自信を持ってオススメしたい。詳しい感想は上掲記事から。

他に今年発売のものだと『屈辱の数学史』も良かった。これもプログラマー必読の一冊。

映画は洋画から2作品を選びたい

映画は1月の『ライダーズ・オブ・ジャスティス』に始まり11月の『すずめの戸締まり』まで17本を劇場で見ていたらしい。『ボイリング・ポイント/沸騰』も良かったのだが、『ライダーズ・オブ・ジャスティス』と『ペルシャン・レッスン』の二作を今年の良かった映画として挙げたい。今年は後味悪い系映画の当たり年だったのかもしれない。え、トップガン? みんな見てるでしょ。

ライダーズ・オブ・ジャスティスは2020年制作のデンマーク映画。マッツ・ミケルセンが元特殊部隊員を演じているのだが、妖しい魅力のある役が上手すぎる。ル・シッフルもそうだったし、レクターもそうだった。今作のミケルセンは妻を喪った特殊部隊員という役柄で、顔色一つ変えずにギャングを射殺する殺人マシンである。

話の筋としては、ミケルセン演じるマークスの妻が列車事故で亡くなるのだが、乗り合わせていた統計学者(ポンコツ)が「これは偶然ではない!ギャングが仕組んだんだ!」と言い出し、勘違いでギャングの死体の山が築かれる、というものである。表層的に見れば復讐劇やコメディの要素もあるのだが、全編にわたって描かれるのは理不尽な喪失体験と、そこからどう立ち直るか、という普遍的なテーマだ。その上で、苦しむ人は見たいように事実を解釈してしまう、という皮肉を描いている。

全てを出し切り、一見すると爽快にも見えるラストは不吉な引きで終わるし、だいいち理不尽に殺されたギャングにも家族がいるわけで、これが単純な復讐劇やコメディなら良くない評価となるのだが、物事を多面的に描くこの脚本ならば納得がいく。

面白いけど、後味はあまり良くない。だが、映画というものはこれ位でないといけないだろう、という気概を感じるのだ。そういう北欧の作品のノリが好きなら損はしないだろう。

ペルシャン・レッスンは2020年制作のロシア・ドイツ・ベラルーシ合作映画。実話をベースにしているらしい。

SSに捕まり処刑されそうになるも、「自分はペルシャ人だ」と嘘をついたことで辛くも一命をとりとめた主人公ジル。もちろんペルシャ人ではなくユダヤ人で、ペルシャ語はわからない。しかし、たまたま終戦後にテヘランでレストランを開くのが夢のクラウス親衛隊大尉がおり、ペルシャ語を教えるという条件で生き延びることになる。

その場その場で単語を捏造し、記憶していくという荒唐無稽な戦術は破綻を予感させ、常に観客を極度の緊張においていく。そのなかで緩和要素となっているのがクラウスがどんどん心を開いていく様子であるのが皮肉めいている。

ジルは収容所にいる囚人たちの名前をもじることで単語を捏造していくのだが、出てくる名前はユダヤ系の名前だけではなくロシア系、イタリア系、フランス系など多岐にわたる。よく知られているように、たとえ当人がカトリックであろうと当局から「ユダヤ人」と判断されればナチに捕まるわけである。日本人からすると名前の羅列にしか見えないところだが、欧州の人には深く意味を持ち、恐怖を掻き立てる描写である。

ジルに心を開き、便宜をはかるクラウスは「良いやつ」なのかというとそうではない。むしろ近年ナチスを描くときによく見られる「悪に従いながら『私は直接殺していない』と思考停止している大衆」として描かれている。近年の研究でアドルフ・アイヒマンは結構熱心な反ユダヤ主義者だったことが明らかにされているものの、『エルサレムのアイヒマン』が作り出したナチス像はアーレントの読者以外にもかなり浸透しているのではないだろうか。

悪とされながらも、ある種「悪の格好良さ」も出しながらナチスが描かれていた時代から、「全体主義は体制側の人間も幸せにしない」という方向に最近はシフトしつつあるように感じる。上で紹介した『NSA』でも似たような描かれ方をされている。こういうトーンになるのはやはり世界が権威主義化しつつあることと無関係ではないだろうし、表現というのはアクチュアルな課題意識と離れられないのだろうな、とも感じる一作だった。

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