『バンドエイド剥がすような別れ方』から捉える乃木坂5期生の特質
はじめに
本稿は乃木坂46の30thシングル『好きというのはロックだぜ!』に収録されている5期生楽曲『バンドエイド剥がすような別れ方』の楽曲やMVの感想、およびそこから見えてきた5期生という集団について、デビューから約半年ほど経った足跡も踏まえて描き出していこうという試みになります。わたしは以前『絶望の一秒前』および第2回お見立て会に関するnoteを4/30に書いていましたが、そこからは日産や全国ツアー、TIFといった現場、またスター誕生での経験や乃木坂工事中への出演などによって彼女ら自身の加速度的な成長があり、かつ雑誌を中心としたメディア出演やミーグリなどによる情報発信も増えてきているので(ブログも相変わらず素晴らしい)、前回よりは踏み込んで、あるいはより瑞々しく書けるのではないかなと思います。それではどうぞ。
↑『絶望の一秒前』note
『バンドエイド剥がすような別れ方』
楽曲面
・歌詞
夏という季節はその賑やかでカラフルでハッピーなイメージもありますが同時に「一瞬で過ぎるもの」「過去」「終わり」を想起させる季節でもあるので、個人的に「明るい曲調で暗い内容の歌詞を歌う」だとか光の中の闇(またはその逆も然り)みたいな二面性を併せ持った表現が大好きなので、タイトルが発表された瞬間から結構期待値は高かったです。『絶望の一秒前』は「漆黒の闇が来るよ」だけど「結局は君自身どうしたいか聞こう」とともに井上和さんの希望に満ちた表情で締めくくられるように、今回でもそんな部分があるのだろうか、と思いながら聴いていました。
そんな視点から今作の歌詞を読み込んでいくと、今作を貫くのは「終わってしまった恋に対する後悔と未練の感情」だったのかなと思います。これをザ・夏!なサウンドで鳴らすという。メロディーと歌詞とを無理やり乃木坂の既存曲で例えるなら、 メロディー:ガールズルール × 歌詞:ひと夏の長さより・・・ 的な印象でした。以下歌詞について順を追って見ていくと、まず冒頭は「砂浜の白い貝殻は〜」で始まり夏を予感させるものの、「寄せる海に流されない」ことで微かに終わりの予感を提示しているように感じます。また「探したあの星座」は『君の知らない物語』における「あれがデネブ・アルタイル・ベガ」のように二人で見上げていた星座を、いまは一人で探す「僕」という構図になっているなと。時系列としても1サビにおいて海の家が壊されているのは夏休みが終わったからであって、2サビ前では「September あっという間のあの満月 ほら 泣き出した虫の声」で時間の経過=もう戻らないあの時間、といった効果を増幅させているように思います。(なんとなく聴いてるといきなり海の家壊されてるけど何?となりましたけど、歌詞を読むと案外整合性は取れている)
1サビでは「三日おきになって 知らず知らずに 一ヶ月会ってなかった」二人が2サビでは「これからはドアを閉めて 他人の二人でいよう」と別れようとするも、結局の所「恋なんて制御不能」で自分にはどうにもできなくて、「今になって君をこんな好きだなんて 季節は過ぎてるのに」からのラスサビに走り抜けていきます。最終的には「バンドエイド剥がせない このままずっと」で締めくくられています。この歌詞の主人公である「僕」は厳密には別れてはいない状態だけれども会う頻度も少なくなり自ら終わりにすることもできず、かといって気持ちは募るばかり、という状態ではないかと。久々にこんな湿っぽい(?)主人公だったなと思いますが、個人的にはとても日本的で好きです。のちほど触れるMVとは全然方向性が違うのも印象的でした。
・タイトルと「バンドエイド」
タイトルは17音なので5・7・5のリズムが身体的に染み付いている我々にとっては音として気持ちいいというのも狙っているのかな…?とか思ったりもしています。タイトル全体としては直喩というかストレートな言い回しではありながら「バンドエイド」というワードチョイスは非常に康的で、フックとなる印象強いワードを配置することでリスナーの興味関心を喚起するとともに、サビにおいてはバンドエイドを剥がすこと=「君」との別れを、その剥がし方(〜よりそっと優しく、一気には剥がせない、剥がせない このままずっと)でもって描き分けるのは好きな康でした。
あと余談ですけど「バンドエイド」はそもそも英国のJohnson & Johnson社の商品名および登録商標なので本来は®がついて然るべき単語なのですが、たぶん話を通しているわけでもないでしょうし、バンドエイド®公式もこんな感じなので、まあある程度フワッとさせているのかなと。笑 歌詞における存在感が良い方向に作用しているので個人的には成功の部類だなと思ってます。
・サウンド面
『絶望の一秒前』が冒頭から歌唱(かつ英語詞)でピアノフレーズのリフレインから始まったのに対し、『バンドエイド剥がれたような別れ方』ではザ・アイドルソング的なギターフレーズからのイントロ約20秒で何故か『真夏のSounds good!』だとか『ガールズルール』を想起させる、おそらく所謂王道なコード進行とか構成なのだろうなと思われます。なんか初めて聴くのに懐かしさを個人的に感じるのは気の所為ではないんじゃないかと。アウトロも同様に長めかつダダダッ!で終わるというのも身体的に蓄積されたリズム。拍が取りやすいよね。現時点(8月13日現在)では作曲・編曲のクレジットは公表されていないのと「〇〇さんっぽい!」というのもわたしには予想がつかないのでそのあたりの予想は他の方に任せるとして、全体的なトーンで言うならば「原点回帰」的といいますか、「WE ARE THE IDOL」ってこういうこと?みたいな感覚です。
また乃木坂的にはやはり29thの攻めに攻めたクリエイティブに対しての揺り戻しというか、ファン側の受容のされ方を鑑みてのこの路線なのかと邪推してしまいますが真相はわかりません。ともあれ、「アイドル」王道の楽曲を出してきたな、というのが初めて聴いてから一貫して抱いている感想です。まあでも王道ができてから色々やるのが実は一番近道だったりするので個人的に「乃木坂が」というよりは「5期生が」この楽曲を身につけることに意味が大きくあると思っています。
MV
このMVを最初に見たとき、眩しすぎて気付いたら泣いてましたね、、、個人的に裸足でSummerに匹敵するくらい自分の中でのスイッチが押される楽曲とMVになりました。何がそんなに刺さっているのかだとか、この部分のここが好き!みたいなことを以下に書いていきます。なお、監督は5期生お披露目のVTRなどを作成された林希監督です。全体的に5期生個々人の人間性や関係性への解像度を高いレベルで反映しているMVなのではないかと思っています。
・設定
上記のナタリー記事によると本作MVの設定は「勉強に厳しい進学校に通う高校生がクラスメイト同士で徐々に仲良くなっていく姿が描かれている」ということで、消しゴム落としシーンの15テイクは演技そのものよりも消しゴムの落とし方の話だったんだ、ということはさておいても、5期生の”ナチュラルボーンエリート感”がこの「進学校」イメージに反映されているのかなと思われます。
またセンターの菅原咲月さんは29thシングルの特典における個人ドキュメンタリーにおいても語っていたようにもともとアイドルが好きで、アイドルをずっと観てきた人が今こうしてアイドルになってセンターを飾っているというバックグラウンドも含めると、ピリついた薄暗い教室の中で携帯を見つめて色鮮やかな「アイドル」の世界に誘われるというシークエンスはより説得力を増すというか演出の奥行きも感じられます。
加えてMVの登場人物としては役名が当てられているのではなくあくまで本人の名前(さくたんは川﨑ではなく名簿上は川崎になっていたけれども)で登場していることからは、『絶望の一秒前』では主に歌詞において自分たち自身の現在地点と葛藤や希望を歌い上げたのに対し、『バンドエイド剥がすような別れ方』でのそれはMV内のストーリーで5期生の物語を駆動させている(黒沢清版Actually…のMVもどちらかというとこちら側)形で、今作の歌詞との対応度合いでいうと必ずしも高くはないけれども、正直ダンスパートで11人が全員揃って笑顔で踊っているのが個人的にそれだけでグッときてしまっているので、構図としての新しさとか批評的意味とかを置いといてめちゃんこ好きなMVになりました。
※個人的な学校を使用したMVで作品として屹立しているのは欅坂46の『エキセントリック』だとは思っています。どちらかというと本作は『4番目の光』の正当な系譜だと思います立ち位置的にも楽曲的にも。2番目の期別曲で「5番目の〜」じゃなかったのは5期生の異質性をより感じさせます。
・構成
MVと歌詞の連関性を考えると、上記の4番目の光はそのまま彼女ら自身の歌であるのに対し、今作は以下のような構造になっているのかなと思います。
-歌詞の主人公:ひと夏を経て別れ・喪失を体験する
-MVの主人公(菅原咲月):ひと夏を経て仲間との連帯を獲得する
-MV内で咲月ちゃんが携帯で見ているアイドル:乃木坂46 5期生
この整合性という意味ではまた歌詞が直前に来たんだろうか、と邪推してしまう部分はあるものの、本節で注目したいのはMV内部での物語の構成です。
冒頭は進学校で真面目に授業を受け(得点の順位表も張り出されている!)、気もそぞろな咲月ちゃんは数学の授業で先生に指されても回答できず、代わりに隣の和ちゃんが回答するという所在なさ、また桜ちゃん側に消しゴムを落としても桜ちゃんは一瞥をくれるだけで拾ってはくれない、という居心地の悪さ、そうした描写の後授業が終わると再び携帯を取り出して大好きなアイドルに没入していく流れから、11人全員でのダンス歌唱パートに入っていきます。途中楽しそうに画面を見つめる咲月ちゃんに興味を持った様子の和ちゃんのカット、また咲月アルノの廊下シーンでアルノちゃんに目を合わせてもらえない咲月ちゃんパート(知らず知らずに1ヶ月会ってなかった)が入りながらも、第1ダンス歌唱パートが終わった段階ではまだ皆とは打ち解けられていない様子が、登校シーンで冨里五百城の2人が追い抜いていく部分と咲月ちゃんの表情などから読み取れます。
その後2番頭から再び教室パートですが、英語の授業中もどこか咲月ちゃんを意識している和ちゃんが授業終了後以前と同じく動画を見ている咲月ちゃんに話しかけたことで11人の輪が一気に生まれ距離が縮まる描写があります。ここは今作でめちゃくちゃ好きな場面なので後で詳しく触れます。以降はダンス歌唱パートが中心で、各メンバーが学校の階段等で佇むカットをはさみながら、登校時に冨里五百城の2人と談笑するシーン、咲月アルノですれ違っていた廊下を並んで話しながら歩くシーン、小川奥田の2人と机を囲んで一緒に勉強するシーン、落とした消しゴムを桜ちゃんに拾ってもらったシーンなど、1番において打ち解けられていなかった咲月ちゃんが「アイドル」を通してクラスメイトとの仲を深めるという、共通項・媒介としての「アイドル」を通した関係性の構築がここに描かれていたように思います。
現実の5期生たちもまたオーディションからは約1年、デビューしてからは約半年ほど経ったこの期間において、”まだ何者でもなかった11人”が”乃木坂46”を媒介にして結束していく過程を見てきているので、MV最後の教室うしろでワチャついている姿はおそらく素に近いものであるだろうなと思われますし(さくさくぱんだの突き指ハイタッチ然り)、最後のメッセージ自体がそれこそ直球で「And the eleven of them became friends little by little.」なので、 前節で述べた内容と繰り返しにはなるものの、やはりこれは5期生の歩みの記録と決意という意味合いにおいての『4番目の光』の系譜であるなと私の中では位置づけられた作品でした。
・好きな場面
以下スクショとともにコメントを添える形式で挙げていきます。
5期生という集団
ここまでMVについて見てきましたが、以降はこれまでデビューして約半年経った現時点での各メンバーに対するイメージや5期生という群体そのものについて書いていければなと。以前よりも情報と各メンバーに対する感情だったりが深まっているので前回からは結構更新されるんじゃないかと思います。
各メンバー
・五百城茉央
乃木坂スター誕生でより一層実感しているんですが、彼女の歌声は宝だと思います。優しくて澄んでいるのに芯があって、技術的には発展途上だとしても声質という天性の武器で戦っていける素質があると感じています。adieuみたいな形で楽曲提供を受けながらソロ歌唱めちゃくちゃ聞きたい。あとスター誕生では『テルーの唄』を聞きたいです後生ですから……
コンビとしてはツインタワーの2人である「なおまお」が印象的ですが、基本皆と仲が良いイメージです。というか5期生は全員が全員そうかもしれない。時折出る関西弁もすき。スター誕生のSmashでアルノちゃんが親知らずを一気に4本抜いてほっぺたが腫れている状態を「中西マルノ」といじりまわしてるのも良かった。
楽曲面ではお見立て会やTIFで披露していたように『君の名は希望』でセンターとして立っている機会を目撃していますが、すでにこの楽曲に対してのひとつの解を体現しているかのようなパフォーマンスがわたしはとても好きです。
・池田瑛紗
スタートが他のメンバーとは揃わなかった分、ミーグリには一足先に参加して定点カメラの主になってファンとのコミュニケーションを積極的に取ろうとする部分であったり、毎回1万字近くの文字数を誇るリレーブログでの内面の吐露や趣味について、その文体や情報量もさることながら構成として読ませるものになっていることだとか、「アイドル」という活動や在り方に対して自分の中での理想像を設定して、そこに向かって邁進していく(様にわたしは読み取っている)姿勢にわたしは心ぐっと掴まれています。
ビジュアルが強いというのももちろんストロングポイントなんですけど、楽曲中に見せる一瞬の表情とか(今作の「恋は制御不能」の部分とか)の魔力が凄まじくて。なんだか存在として気になるし好きになっているのはてれぱんでした。5期生の中でてれぱんが最年長というのも何かとても良い。
・一ノ瀬美空
くぅちゃん。松村沙友理さんリスペクトの感覚は日産でのバックヤードでの話が証明していたので解釈の一致でした。この子は笑顔がデフォルトで、しかもそれに無理がないというか自然なのである意味ナチュラルボーンアイドルなのかもしれない。メンバー間だと結構おちゃらけというか常に面白いことをしているという情報が各所から出てきているので、一ノ瀬さんがそういった意味でも5期生のハブになっているんじゃないかなと思います。年上組でもあるし。ダンス、表情管理、歌唱、アイドル力としての平均戦闘力がバランスよく備わっている印象です。『2度目のキスから』いつかやってほしい。
・井上和
もはや説明不要の域だと思いますけど、最近だと雑誌への出演ラッシュでもう全部の女性ファッション誌に登場しているんじゃないかという勢いでした。どの雑誌でも専属として欲しい逸材だよな〜と納得してます。
パフォーマンスにおいても歌声、ダンス、表情管理のレベルは総合力として乃木坂全体においてもかなり高い水準にあると思っていますし、あとは経験だけ状態というか。BLEACHで言うならまだ始解もしていない浅打での戦いでこの戦闘力なのか、という。和ちゃんが剣八だよ…(?)
また乃木坂工事中の運動会企画だったりでも最近表れていたように負けず嫌いの一面があったり、かと思えば青チームなのに赤にしていっちゃったりという天然な部分も持ち合わせていたりと魅力が無限に出てくるわけですが、それでいて本人は非常に地に足ついているような印象もあり、本当にこの子はどこまでいってしまうのか、とめちゃくちゃワクワクします。和桜コンビが今作ではフォーカスされていましたけど、和アル、和咲月もまた注目すべきケミなので、そこも追っていきたいですね。
・岡本姫奈
第2回お見立て会のころからTIFだったり今作のMVでの表情を比較すると、やっぱりパフォーマンスする際の感情が「自責の念」がその多くを占めていた当初よりも今はパフォーマンス、ダンスすることの歓びを純粋に表すことができていて、なんというか「良かった…!!」の感情になります。バレエ歴12年は伊達じゃなくて、ダンスにおける指先の所作一つとっても乗っている感情の純度が高いし、さらには喜怒哀楽を文字通り顔の表情に乗せることや動きでの表現がやっぱりずば抜けているので、動きの質的な意味で自然と目が彼女を追っている瞬間があります。あと5期生内での推しメンはさくたんと冨里ちゃんのようで、Smashを見ていると時折その関係性が見て取れます。体育会系のガッツがあり、真っ直ぐな子なんだなあと思うと最近どんどん好きになっています個人的にも。応援したいですね。
・小川彩
あーやはあだ名センスもさることながらダンススキルにおいては5期生内トップクラスだと思っていて、それはスター誕生におけるレッドソックスことダンスメンバー選抜(一ノ瀬井上岡本小川)のメンツに入っていることからも周知の事実なのではないかと思います。15歳になったばかりというのが俄には信じがたいその舞台度胸とスキルなんですけど、最年少特権を自由に使いながら、乃木坂としての活動を楽しんでもらえたらわたしはうれしいです。
・奥田いろは
当初のイメージからかなりわたしの中で更新された子です。優しくてポジティブで、それこそ個人ドキュメンタリーで恩師に『歳月の轍』を弾き語っていたところでも素敵な子だなあというのは感じていたんですが、スター誕生における登板回数はたぶん5期生イチで、歌唱・演奏だけでなくダンススキルの高さを小川奥田コンビで見せつけていたのがかなり自分の中で刺さっています。8月8日放送回で初めて番組でのソロ歌唱を果たしたいろはちゃんですけど、アルノちゃんがいろはちゃんのことを「天才」と評していたのはめちゃくちゃわかるぜ…!となっていました。『絶望の一秒前』フロントが大正解すぎる。パフォーマンス総合力の五角形が全部80%以上みたいな感覚です。すでに何度か触れてきましたけど、『バンドエイド剥がすような別れ方』のフォーメーションで奥田岡本が両翼を努めていることの働きは大きくて、運営からのダンス面における信頼の厚さを感じています。
・川﨑桜
「川﨑…お前が青学の柱になれ…!」的な。ブログのヤバさ(褒めている)とかホワっとした話し方とかで不思議なキャラクターなのかと思いきやステージではカメラあるいは観客に対して目線をロックして離さないというスキルで一瞬にして虜にしてしまうので、ボア・ハンコックなのかもしれない。
ダンススキルはフィギュアスケートの経験に裏打ちされたその体幹や筋力によって安定感をもたらしているとともに、やはり氷上での演技のスポーツでもあるので表情管理がとんでもないです。和桜のシンメは初代プリキュアなんですよ。乃木坂工事中の体力テストでリレーでぶち抜いていく所めちゃくちゃすきです。30thミーグリで幸いにも券を取れたので何話そうかなといまからワクワクしています。11人が同じスタートラインに立っての初めてのシングル(ミーグリなどの諸活動のスタートが29thは異なっていたので)なので、羽ばたいていってほしいですね…!
・菅原咲月
主人公。アイドル好きだった子がアイドルになるという物語を備えている咲月ちゃんですけど、パフォーマンス自体の地力は高くて、お見立て会でのSO!だったり今作でのセンター、またスター誕生では往年のレジェンドとのコンビネーションを何度も経ることで歌声面でのスキルもどんどん伸びている印象があります。意外にも歌声はカッコいい方面もいけるんだよな咲月ちゃん。どこか自信なさげで周りには才能の塊がたくさんいて、という中でも彼女は目の前の課題に対してひたすら愚直にぶつかってコツコツレベルアップしていくタイプの子だと思うので(なのでわたしは日向坂の金村さんを想起する)、期別曲でのセンターをこのタイミングで経験したことは後々きっと大きな財産になると思います。改めて『バンドエイド剥がすような別れ方』センターおめでとうございます!!!!
・冨里奈央
癒やしと笑顔が唯一無二で、あの笑顔の屈託のなさといったら何なんでしょう。FFの方のこのツイートめちゃくちゃわかる!!!となったので引用させていただきます。
パフォーマンス面ではお見立て会でシンクロニシティのセンターをやっていたように、実のところシリアスな表情もうまかったりするのでその振れ幅も面白いです。『絶望の一秒前』と『バンドエイド剥がすような別れ方』のフォーメーションを比較するとシンメが継続しているのは五百城冨里のツインタワー(なおまお)だけなので、この2人は運営からしてもかなりコンビとして重要視されている感があるなと。
あとはそのピュアさ故に無意識のうちにルールをひっくり返す、またその磁場に皆を巻き込むことができる人だとも思うので(乃木坂工事中のリレーで勝利した際の「100ポイントですか?」とか「これ(苦いジュース)飲むのでさくらんぼください」とか)、そういう意味ではめちゃくちゃ革命的な人なのかもしれないです。ルフィっぽさもある。このまままっすぐアイドルとして駆け抜けていってほしいなあと思います。
・中西アルノ
その歌声はもう説明不要の凄まじさがありますけども、結構何ていうんだろう、めちゃくちゃ人間味があって僕はアルノさん好きです。芯も強いし。たぶんアルノさんはてれぱんと同じくらい「アイドル」を俯瞰していて、ただ戦い方としてはその中での「私」を貫くという点ではやっぱりZOC的で、好きな人はとことん好きなタイプだと思います。ブログも彼女自身から発せられる言葉に強度があるし、そこに横たわる価値観の輪郭に触れたいという欲求が喚起されます。たぶんメッセージ始まったら普通に取ります。
5期生の中だと結構いじられている場面もSmashだったりで見られますけど、それもまた5期生の特殊性というか、アルノさんをも巻き込む11人の個性の方向性の違いとバランスで、『バンドエイド剥がすような別れ方』ではめちゃくちゃ11人11様煌めきを放っているんですよね…。あと最近和アルが俄に一部で話題になっている霊圧を感じています。アルノさんが乃木坂に加入したことによる相互作用が29thではあまりうまく行かなかった(と断言してしまう)けれども、まあ今後それはやっていけばいいことなので、なんというか伸び伸びといい影響を与えあう関係としてこれからも乃木坂という存在と歩んでいってほしいなあと思っています。
群体としての5期生
5期生メンバーの一人ずつのYouTube公開されたのが2月2日でしたかね、和ちゃんのプロフィール動画がアップされた瞬間から5期生はなにかフェーズの異なる集団になるぞという予感がしていました。そのまま現在もこの「乃木坂46」というアイドルグループにおける5期生という集団のその異質さについてめちゃくちゃ面白がっているので、そのあたりの雑な思考をここに書いていければと思います。
まず2021年時点での乃木坂46はすでに国民的アイドルといいますか、少なくとも国民の広くにはその名前は伝わっているとは思っていて、日本の女性アイドル界においてもトップオブトップであるという点は疑いようのない事実です。そうしたグループにおいて、内部事情的には世代交代が進んでいく最中にあり、まさしく「新世代」を希求していたのが5期生を募集したオーディションだったのだと思います。集まったメンバーを見渡すならそれはONE PIECEでいえば(誤解なき様にいうとすげえ奴ら的な意味での)「最悪の世代」だし、BLEACHでいえば零番隊だし、というある程度の秩序と歴史を重ねてきたところに突如現れる巨大な力みたいな感じというか。あとは肌感でいうと期での結束はやっぱり強くて、11人が5期生として乃木坂に加入した、というよりは「5期生としての11人」が軍団としてチームに併合された感覚といいますか。同じ乃木坂というチームではあるものの、人数の関係もあるでしょうけど、より一層5期生の「国」が出来上がっている感じがするんですよね…(あくまで個人の感想)
その5期生内でも各人の個性が全部方向性が違うのが面白くて、アルノちゃんの歌声、和ちゃんの存在感、岡本さんのダンス、といったとんでもねえ才能でさえも5期生という集団の中では異質にならないという面白さが5期生にはあります。そして舞台度胸が異常なまでに余裕がある。パフォーマンスすることが怖くないの…?という。結構乃木坂のパフォーマンス自体がステージ上で完結する瞬間がある、観客を隔絶する空間が生じる時がある、という感覚はある程度共有できると思っているんですけど、5期生はそのステージ上での聖域と観客との交歓を同時に実施しているバランスが面白いなと感じています。
※上記は弊アカウントのTweet。
乃木坂の魅力は個人的にはフロンティア精神だと思っているので、行ったことのない場所、やったことの無い事、会ったことのない人との出会いがグループを強くしてきたと思っています(『錆びたコンパス』の精神)。そして上記のような5期生という集団をも包含する「乃木坂46」という概念と人々をわたしは心から信じていますし、どうか末永く発展していってほしいなあ、と願うばかりです。
おわりに
というわけで、『バンドエイド剥がすような別れ方』に感動したあまり気づいたら文字を打ち込んでいました。わたし自身は5期生に非常に希望を持っているので、11人全員での正式なスタートが本作で切れたことはとても喜ばしいと思っていますし、また1シングル分活動してきた中で5期生が「乃木坂46」に溶け合っていく過程もまた興味深く観測しています。4期生が先輩しているところとかね、そこでしか得られない栄養素があるんですよ(わたしは4期生のオタクでもあります)。前途、めっちゃ多難だったけど、ここからどんどん躍進していってほしいなあ、といちオタクとして思いました。これからも楽しみです。
余談
・TIFに6時間並んで見れた5期生、Zepp DCで観るライブはマジで「情報量」だった。近すぎると認識のキャパを超える。
・30thミーグリは5期生だと池田井上川﨑という布陣です
・トークが始まったら取りたいのは池田井上中西
・『絶望の一秒前』はお見立て会→日産→TIFでそのギアを何段階も上げていてとんでもない事になっている
・個人的には「「乃木坂らしさ」って概念をオタクがグループ/メンバーに対して適用している構図」が好きじゃないんですけど、それって「自分の考える乃木坂」像に対してどうこうという評価を下しているわけであって、実態はメンバーとの相互関係や歴史から紡ぎ出されるアイデンティティであり、それは中にいる人にしか感じ取れないもので、またメンバーによっても抱くそれは異なると思うので、そんな乱暴に規定できるわけねえだろという感情が根底にあるからなのだなと自分で書いていて思いました。
・全然乃木坂も関係ないんですけどTIFで最後に見たfishbowlが良すぎたので何個かMV貼っておきます
※しきじの駐車場でワンカット撮影してるの好き過ぎる
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