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自由帳11頁目「熱量」

10月4日、日曜日。
私の日常と大分かけ離れた空間に
出向いてみた。
Msmile BOX渋谷という劇場。
STARMARIEというファンタジーを表現する
パフォーマンス集団、だそうな。
そのSTARMARIEの
ライブを鑑賞するのが目的。

このSTARMARIEのメンバーの一人、
中根もにゃさんという方と
今月からラジオを始めることになった。
番組名『もにゃと朝橘
そういうわけで一度観てみようと。

アイドルの方のライブに行くのは初めて。
パブリックビューイングで
モー娘。のライブ観たのが一度だけ。
そういうものに縁が無かったのは
そこまで興味がなかったのもあるけど
一番は客席でどうしていたら良いか
分からんという。
アイドルの方に限らずライブが苦手なのは
人前でノリノリになれないから。
恥ずかしくて。
クラシックみたいにむしろ静聴でというのは
本当に助かる。
ブラボーとか言う度胸は全く無い。

今回もラジオ局の方に誘われた時
「いや僕、客席でじっと腕組んで聴くような
ノリの悪い客になっちゃいますよ」
と言ったら
「あ、大丈夫です。コロナのせいで
客席で声出しちゃいけませんから」
コロナに助けられるようになったらおしまいだ。

一応自分も人前に出る商売なので
お客様の様子をすごく見てしまう。
この日はメンバーの方の生誕祭だったが
客席で他のお客様にカード配ってる人が。
何かなと思ったらバースデーメッセージを
お客様が書いて、それを渡すんだと。
誰に言われるでもなく、お客様が
有志でそれをやってるらしい。
しかもオリジナルのカードちゃんと作って。
余談だが私の誕生日、10月8日だから。

公演中の私語は厳禁と言われたら
全員当たり前のようにそれを守る。
入場時もきちんと並んで検温・消毒して
マスクもちゃんとつけてる。
ホリエモンに彼らの爪の垢を煎じて飲ませたい。

ライブが始まると、みんな座って
じっくり観て聴いてる。
こういう感じだとお地蔵さん状態の私も
安心して固まっていられる。
客席全体ではなく、何故か私の周りの
3人くらいの方がサイリウム振ってたので
ここだけ夜間工事中みたいになってたけど。

これもSTARMARIEの特徴らしいけど
ライブ中にMCが一切無いので、
何曲かやって暗転、間をあけて再開、
の繰り返し。
次から次へと出される料理を
無言で頬張るような客席。
曲によっては一緒に腕だけ振り付けを
真似る常連の方も多数。
手拍子も皆一糸乱れぬ統一感。
声も出せず立ちもせずの中、
出来る限りの方法で楽しんでる。
凄いなみんな。
皮肉でもなんでもなく、本当によく
訓練された方たちだ。

90分のライブ終了。
尺も丁度いい。
地蔵は腰痛持ちなもので。

観終わっての感想としては、
凄くポジティブな気持ちになれた、
元気になった。
恐ろしく月並みな物言いだが
他に言いようがない。
何でそういう気持ちになれるのかなと。
それは多分、STARMARIEの皆さんから
伝わる熱量の凄さによるものだと思う。

自分がまだ二ッ目の頃
一門の大看板、六代目三遊亭円楽師に
自分はどう落語をやったらいいか
楽屋で質問したことがある。
二人きりであまりに暇そうな師匠を見て
軽く質問したつもりだけど一言
「熱演しろ」
と。
「落語ってこんな面白いんですよ、
落語大好きなんですよという気持ちで
熱演しろ。そうすりゃ好きは伝わるから」
あの時、楽屋に誰か挨拶に来たり
凄い枚数の色紙を頼まれたりしてなくて
本当に良かったと思う。

以来、それを自分の指針として
生きてきたつもりではある。
でも最近の高座はどうだったろうか。
コロナのせいにしちゃいかんけど
まあ影響はある。
にしても熱量足りてなかったんじゃないか。
楽しく落語出来たなって時は
本当に疲れる。
それだけ気を入れられたからだと
解釈してるんだけど。
最近どっと疲れた高座、あったかね自分。
7月にやった死神くらいかなあ…。

うろ覚えだったり不安があったりすると
落語に集中できない、当たり前だけど。
何故稽古するかってそういう事。
当たり前に次ぐ当たり前で情けない。

それ以上に、自分は周りの目とか
何か色々考え過ぎてたという反省も。
自信がないから客席の様子を伺う。
で、勝手に不安になって更にドツボにはまる。
それに引き換えSTARMARIEの皆さんは
ライブ始まったらもう揺るぎないというか
自分を信じてやってる感が凄かった。
この日は特別に公演中の写真撮影が
許可されていたらしく、始まったら
みんな撮影してたが
自分だったらもうそっちが気になって
集中できない。
STARMARIEはそういう些末なことに
一々気を取られる人達じゃなかった。
それは十分な練習をして
自信を持って舞台に上がれる準備が
なされているから。
そして自分たちの仕事が大好きだから。

人の振り見て我が振り直せ。
良い時間を与えられた。
これだけ言って次の高座、
何かそうでもない感じになったら
凄い恥ずかしいな。
とにかく勉強になったというか
色々忘れてた事思い出した。

上で触れたお客様の練度。
それは正にSTARMARIEの練度。
色々合点がいった。
演者の熱量を受け取ってはじめて、
お客様もそれだけの熱量を
返すものだということなんだろう。
客は芸人の鏡ってのはよく言ったもんで。
そういうお客様は自分たちが
STARMARIEを大好きだということに
揺るぎない自信があるから
人前でノリノリ恥ずかしいとか
そんな人の目なんざ気にしてない。
もう色々納得できた。
そもそも客席は暗いから
舞台からそんな見えないわな。

色々教えられたライブ終演後、
楽屋へ挨拶に。
お疲れのところをそんな様子も見せず
対応してくれた中根もにゃさん。
「朝橘さんすごい見えてましたよ」
終わった後も地蔵状態にさせられた。






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