見出し画像

坂の上のアパート

美大生時代、学バスの出ている八王子市に住んでいた。

駅の裏側、徒歩15分、坂の上の和室のワンルームアパート。6.3万円だったかなぁ。

アパートはなかなかの激坂の途中にあった。
駅からの遠さもあって後にリトルカブを買ったのだが、最初うまく坂を登れなくて遠回りして坂の上から帰宅した記憶がある。

駅から吉野家のある方に出て、少しお高いスーパーマルショウを通り過ぎ、斜めにサンクスに向かう。トラックが猛烈なスピードで通り過ぎていく国道16号線が見えてくる。通り沿いのマクドナルドの近くから坂に入る。

坂のてっぺんまでもう少しのところに大家さんの家があり、その奥に8室あるアパートがある。203号室。ドアを開けるとガラクタがたくさんひしめいている。リカちゃん人形(後にブライスへ移行)、課題や漫画の道具、大きなMac(パフォーマ)、ALPSのプリンター、洗濯物、CDラジカセ、FAX、aiwaのテレビデオ。CDやビデオが散乱してて洋服も押し入れから溢れている。

ここで私は人生で初めてピザを宅配してもらったり、NHKの集金に怯えたり、ツキイチ大家さんに家賃を手渡しに行ったり、チャリで駅まで行って吉野家と松屋を初体験したり、一人でゲーセン「トマト」に通ったり、駅近の本屋をハシゴしたり、都まんじゅう買ってアストリアで3000円くらいの服を買ったりしていた。自分名義の通帳も角の「さくら銀行」ではじめて作った。未だに私のメインバンクはこの時の通帳で、支店名は八王子である。

八王子のこの部屋に住んだ時は「はじめて」が渋滞してた。
そのうえ大学もあって、3回生あたりからはクリーニング工場でバイトもしてて、恋愛もしてて、夜は変なバイトもしてて、なかなかにはちゃめちゃな時期だった。

その後人生の節々でたくさん引っ越しをしたけれど、やっぱりこの時の部屋の思い出が一番強い。

ところでこの時の部屋が畳のワンルームだったせいか、その後もずーっと畳の古めのアパートを点々とした。畳のアパートは比較的安いので、一旦それでいいや、となると抜け出せないのだ。畳ループ。

とはいえ、今や日本もなかなか危ない国になりつつある。フローリングでしっかりしたセキュリティのある部屋にこしたことはない。これから一人暮らしをはじめる人には特別苦しい事情がないならば洋室のフローリングをお勧めします。
(レトロ趣味の人には古アパートも良きですが圧倒的なセキュリティの差があります)
最初に住んだ部屋のランクってその後に影響する気がします。

坂の上のあのアパートはもう改装されたりしてるのかなぁ…そのうち行ってみたいな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?