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『月刊非言語情報マガジン』 vol.1 (2021年1月編) by コーチングクリニックPRO

皆さま、こんにちは。
プロのコーチをより上手くするスクール「コーチングクリニックPRO」の非言語情報マガジンの編集長を務める張孜翔です。

月刊非言語情報マガジンとは?

このマガジンでは、コーチングクリニックPROで毎週実施しているコーチングセッションから非言語情報のみを抜粋し、それに対する分析および考察を掲載していきます。今回が創刊号の2021年1月号です。

「非言語情報」の他にも「スキル」「感情」を取り扱うnoteマガジンも分科会的に立ち上げられています。それらは各々、別の編集長から投稿されますので、そちらもぜひ併せてお楽しみくださいませ。(このマガジンの立ち位置は、下図のようにケーススタディの内容を横串で詳察するイメージとなっています。)

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コーチングクリニックPROとは?

コーチングクリニックPROは、2020年7月に開校した新しいスクールです。これまでにないコンセプトで「プロのコーチが必要な情報やスキルを入手し、自分のコーチング品質を向上させることを目的」にしているオンラインスクールです。
毎週、主宰の林健太郎コーチが実際に受講生の方に提供したコーチングセッション動画を教材として、そこで使われているスキルなどについて質疑応答を受けながら、実際のセッションで何が起きていたかを分析していくことで学びを深めています。
現在50名ほどの受講生が在籍していますが、どんな人が学んでいるか、動画で見たい方はこちらをご覧ください。


非言語情報とは?

言葉ではなく、表情やしぐさ、身体の動きなどの態度に現れる情報のことです。言葉によらないコミュニケーションを、非言語コミュニケーションと呼びますが、企業内でも業務を円滑に進める上で、非言語コミュニケーションへの理解が求められています。このマガジンでは、セッション内で起こる非言語情報について扱っていきます。

非言語情報の種類として通常5つの要素に分けられます。

①視覚的要素
表情、顔色、口角、目の動き、まばたき、眉間のしわ、視線の方向など
②聴覚的要素
声のトーン、高低、テンポ、リズム、音質(滑らか、ハスキーなど)、言葉(相手がよく使う言い回しやクセ、感情がこもっている/いないなど)
③臭覚的要素
香り
④味覚的要素
⑤身体感覚的要素
身体の動き(うなずき、貧乏ゆすりなど)、ジェスチャー(身振り手振り)、しぐさ(腕組み、足組み、鼻の頭をさわる、髪をなでるなど)、呼吸(ピッチ、深さなど)

この分析は、実際の対面セッションを録画した動画を基に分析しているため、①視覚的要素、②聴覚的要素、⑤身体感覚的要素を扱っていきます。

1月のセッションにおける非言語情報の特徴

総評
1月の3セッションで明確になったことは、セッション中ではクライアントやコーチに関わらず、常に非言語情報を活発に使用しています。その表情や動作が果たして何を意味しているのかを理解することは、今クライアントがどういう状態にあるのかというの観察する重要な手かがりになり得ます。逆にその表情や動作のもたらす意味をしっかりと理解し利用できれば、コーチ側が場の空気感を作るのにも役立ちます。

1月の3セッションで観察された非言語情報の特徴は大きく3つです。

特徴1:高頻度で使用する手のジェスチャー

セッション中では、クライアント・コーチに関係なく手のジェスチャーを多く使用することが確認できました。また手のジェスチャーを使用するタイミングも、クライアントとコーチで共通点がありました。観察されたジェスチャーの使用タイミング大きく分けて以下4つです。

​①自分のイメージをビジュアライズして説明する際に使用
 例)複数選択肢を示す時、物事の構造化を表現する時
②気持ちや経験などを口頭でうまく説明できない時
③自分を指すとき
④深い思考するとき。(手を体の一部に当てて考える)

特徴2:大きな気付きが起きた時に、それに合わせて身体も大きく揺れ動く

人は大きな気付きが起こった際に、体が大きく動くことが観察されました。気づきがあった場合には主に前後ですが、気分が晴れやかになった時、気持ちが軽くなったときは左右に揺れることあります。通常時にあんまり動かない方が、体を揺らし始めた際には、なにか気づきが得られたり、思考が進んだことを意味するので、思考が終わるのをじっくり待ち、タイミングを見計らって今クライアントの中になにが起きたのかを確認してみましょう。

特徴3:聴覚優位の識別方法

特徴の3つ目は、聴覚優位の判別方法を知ることができました。
聴覚優位とは、人間の情報の受け取り方で耳から入る情報を優先して受け取ることを言います。聴覚優位の他に、視覚優位、身体感覚優位があります。

聴覚優位の特徴は主に目に現れます。よく思考時に瞬きをする、目の方向性が定まらず左右に動く、この2つの特徴が現れた際には聴覚優位の方の可能性が高いです。仮に、聴覚優位だった場合は、情景描写や事実説明もなるべく言葉にして耳に入れてあげることをおすすめします。その方が聴覚優位の方により伝わりやすく理解されやすくなります。

ここまでが全体的な考察です。これ以降は各セッションの細かい特徴を見ていきます。

以降は詳細の分析になりますので、もし良かったらお読みください

ケース1個別考察

クライアントの非言語情報の特徴

■視覚的要素
●表情
・冒頭の10分は表情が固く、話し言葉が丁寧
 これは初対面だからということもあり緊張していることの現れ
・取り扱う話が大きすぎて、
 どうしょうもないと感じる際は苦笑いをする癖がある
・課題解決後は終始表示に笑顔が伴っていた
●視線
・事を思い出しながら吐き出すときは上を見る
・しっかりと目を見ながら話す
・思考をするときは下を見る
●うなずき
・話しながら同意や共感を求めるうなずきが多い
■聴覚的要素
・基本は強い語気、トーン
・言葉尻は言い切ることが多い
■身体的要素
しぐさ
・基本は動かない
・手を使用したジェスチャーが多い
 -複数選択肢を示す時
 -気持ちや経験などでもがく時
 -自分を指すとき
 -ビジュアライズする際に使用
 -心に手を当てる
 -思考時に額に手を当てる
・深く考える時orためらうときに手を口に当てる
・思考が深くなるときは、腕組みをする癖があり

コーチの非言語情報の特徴

■視覚的要素
 ●表情
 ・基本笑顔、微笑み
 ・「なるほど」や「この話はどこにいくんだろう」と
   感じるときは目を見開き、口を尖らす癖がある。
 ●視線
 ・コーチが考える際は一度クライアントから目線を外すが、
  基本クライアントに目線を置いている
 ●うなずき
 ・話の流れに応じてうなずきを入れている
■聴覚的要素
 ・特になし
■身体的要素
 手のジェスチャーを比較的に使用する
 -メタファーや気持ち、感情を抑揚の表現
 -考えることを示す時に腕組みして、考えるポーズを取る
 -驚きを感じる時に、腕組みをして片手は顎に当てる癖がある
 -選択肢の数を示す時に指でカウントする癖がある
 -こめかみに指を当てるくせがある

考察

クライアント・コーチに関わらず、手を使用したジェスチャーが多数見られました。手のジェスチャーの使用タイミングも複数ありますが、共通点としてメタファーやイメージのビジュアライズを説明する際や深い思考をする際によく使われることが観察されました。また特徴的な点として、クライアントの思考する際の目線の方向性を確認することで思考の深さを判別する手かがりとしては有効でした。このクライアントの場合、すでに一度考えてあることを思い出す際は上や左上を見る癖がありました。しかし、深い思考の場合は、頭を少し落として、目線も同時にしたに落ちていました。上記のことから、目線によって現状の思考の深さを測ることが可能だと思われます。別途観察要素として、クライアントとコーチの動作に連動性があるかという部分ですが、通常の会話時にはあまり見られませんでした。
例)コーチが腕組みすれば、クライアントも腕組みする(ミラーリング)


ケース2個別考察

クライアントの非言語情報の特徴

■視覚的要素
●表情
・基本笑顔が多い
・ただ陰りのある笑顔が前半多い
・問題解決した40分以降から自然な笑顔増える
●視線
・上や左右によく動く
・瞬きが多い
・目線が左右に揺れる
■聴覚的要素
・直近のテーマや達成困難に思える部分については、
 声がどんどん小さくなり、かすれていく
・テーマが解決の兆しを見せるのにつれて声も大きくなる
■身体的要素
しぐさ
・基本は動かない
・手を使用したジェスチャーが多い
 -ビジュアライズする際に使用
 -選択肢が複数あるときに表現する際に使用
・驚く時に体を横にずらす
・痛いところを突かれると顔に手を当てて目を隠す
・座り直す
・深く考えるときにも顔に手を当てて目を隠す
・ちょっといいづらい時に顔に手を当てる
・感情が揺れるときに、体も前後に揺れる

コーチの非言語情報の特徴

■視覚的要素
●表情
・笑顔やうなずきが常時ある
・クライアントが困る時に、一緒に考える演出は腕組み
●視線
・基本的にはクライアントに目線を置いている
・考える意識表示をするときは、目線を上げてからクライアントを観察する■聴覚的要素
とくになし
■身体的要素
手のジェスチャーを比較的に使用する
-メタファーや気持ち、感情を抑揚の表現
-考えることを示す時に腕組みして、考えるポーズを取る
-驚きを感じる際に、腕組みをして片手は顎に当てる癖がある
-選択肢の数を示す時に指でカウントする癖がある
-こめかみに指を当てるくせがある
褒められたときにガッツポーズをする
安心した際には深く座る

考察

クライアントについては、動画中に解説でもありましたように、今回のクライアントの特徴としては聴覚優位な方でした。聴覚優位の判断軸は、思考時に目線の左右の動きや高頻度で瞬きする特徴を基に判断できます。聴覚優位の方は自分で考えて想像するよりも、言葉で耳に入れられたほうがイメージしやすく、ビジュアライズしやすいという特徴があります。更に聴覚優位の方はイメージをビジュアライズする際に、視覚優位の方と同様手をジェスチャーに多用することもわかりました。

コーチについては、基本常に笑顔やうなずきや笑顔を使用しています。またメタファーを使用する時に、手をジェスチャーとして使用して説明しています。考えている、悩んでいるという演出をする際は、腕を組み、目線を上げています。これは前回のセッションと概ね同じです。またコーチとクライアントの動きに連動性は見られませんでした。


ケース3個別考察

クライアントの非言語情報の特徴

■視覚的要素
●表情
・緊張をされているのか、最初の6分は表情が硬い
・現状の自分について満足しておらず、自分の状況に対して苦笑いしながら話をする
・セッション後半42分から笑顔が見られる
・最後に目頭が熱くなる
●視線
・考えを吐き出す際は画面をしっかり見る
・考える際は上を向いて考える
■聴覚的要素
終始声の声量が小さい
最後の15分で覚悟が決まりようやく声量が大きくなった
■身体的要素
しぐさ
手を使ったしぐさが目立つ
・テーマが話しにくい関係で、常に頬に手を当てている状態が続く
・常時腕組みをしている
・顎に手を当てる
・頭を掻く
・鼻を擦る
・体を上下に揺らす

コーチの非言語情報の特徴

■視覚的要素
●表情
・笑顔やうなずきがを常時行っている
・厳しい表情をするときがあった
・一緒に考えて悩む表情
●視線
・常にクライアントに目線を置いている
■聴覚的要素
とくになし
■身体的要素
・体の揺れ
・腰に手を当てる
・目を擦る
・手のジェスチャーを比較的に使用する
 -メタファーや気持ち、感情を抑揚の表現
 -考えることを示す時に腕組みして、考えるポーズを取る
 -安堵する際は手をぶらぶらさせる。手から力が抜ける。
・緊張を緩和させるために手を広げる
・厳しい表情で腕組みをする
・画面から離れることが数回
・座った状態から立ってコーチングをし始める

考察

クライアントについては、課題解決までは身体動作で大きく揺れ動くことは基本しませんでした。その代わりに、手を顔に当てる、腕組みをする、苦笑いをすると言った動作や表情をよく見られました。また課題が解決された際には、体が上下に揺れ、客観的にて体が軽くなった印象を受けました。
今回注目のポイントはコーチです。基本常に笑顔やうなずきを使用しているのはいつも通りですが、今回はいくつか特徴的な行動を取っています。画面から離れる。時間を気にする。座った状態から立った状態でコーチングする。ここで見られてたのは、コーチ側の緊張、そしてそれに対して身体的な動きでそれを解消&あえて演出使用としている場面が複数見られます。またいつも同様メタファーを使用する時に、手をジェスチャーとして使用して説明しています。

今回のケースでの学びとして、場の空気感を変化させたい場合は、言葉だけではなく動作でも雰囲気の変化が可能であり、コーチはそれを意識的に使用することでより醸し出したい空気を作ることができます。


『月刊非言語情報マガジン』創刊号の内容は以上になります。これからもっとコンテンツをブラッシュアップしていきますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします!

最後に

コーチングクリニックPROでは一緒に学ぶ仲間を随時募集しています。質の高い継続学習を一緒にやっていきましょう。

それではまた2月号でお会いしましょう!

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