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ゆめにっき 情けない私達

  1. 寝起きでメモした後、その日の内に誤字等をチェックして記録しています

  2. 空気感が印象的な夢のみ、読む際にそれを思い出せそうな文に書き換えることがあります(内容はそのまま)

  3. そもそもメモの精度にムラがあります

  4. 暫くはスマホに残っているストックを載せます


それでもきっと

どんくさくって、些細なこともまともに出来ないキョロちゃんと私

私は離島で生まれ育ち、高校生になった今もそこで暮らしている
私の通う学校は島の端にある
島の子は殆どがそこに通うのだ

キョロちゃんとは同じ学年だけれど、全く喋ったことがない
でも、彼が電車にだってうまく乗れないことを私は知っていた
私もいつだって同じように躓き、遅刻していたから

時間を確かめるとか、電車が止まるたびに駅を確認するとか
そういった皆が出来る当たり前がどうしても出来なかった

(私達2人が行き詰まった人生を送っていることなんて、誰が見たって明白だ)

渡り廊下や食堂、下駄箱
キョロちゃんはいつどこで見かけても愚鈍だ
彼は孤独ではなかったもの、彼の側に居る誰もが彼を舐めているように見えた

私はそれを遠くから眺めるだけ
彼に対して 浮いてるなあ、似てるなあって ずっと思っていた
いつだって足りない上に孤独な私は、彼を勝手に心の拠り所にしていたのだ

夏休み明けの始業式の日、私は久しぶりに学園前の駅で降りることに成功した
(やった!出来た!)
ホームで1人、静かに感動する
少しだけ特別な日に、少しだけ特別なことが起きた
それがこんなにも嬉しい

満ち足りた気持ちで、普段は見送れない電車に視線を向ける
すると閉まるドア越しに、座席に取り残されている彼が目に留まった

キョロちゃん!

(また降りれなかったんだ!)
急いで改札を抜け、思わず電車を追って駈け出してしまう
足で追いつける訳はなく、車体はみるみるうちに小さくなっていく
それでも私はがむしゃらに走った

(何でこんなに必死になってるんだろ…キョロちゃんのこと何も知らないのに)
どうしたいかなんて自分でも分からなかった

かなり遅れて隣の駅に到着した
もう息も絶え絶えだ
この駅は終点で、この先は海になっている

(反対車線の電車とはすれ違ってないし、入れ違ってはないはず…)
きっとまだここに居ると信じてホームをさまよう

居た!
キラキラとした海の光に当てられ、逆光で真っ暗なキョロちゃん
表情はよく見えないが、彼の肩は小刻みに震えている
自分のどうしようもなさに絶望し続け、情けない気持ちでいっぱいになる苦しさは痛いほど分かった

私は彼に駆け寄り、はじめましてもなく矢継ぎ早に話してしまう
「どうして出来ないんだろうって自分に失望することは沢山あるけれど、絶対じゃないでしょう?」
「したかったことが上手くいったことも、電車にちゃんと乗れたことだってあるでしょう?きっとどうしようもなくたって大丈夫だよ、私達」

我ながら声が震えすぎている
思わず俯いてしまう
どうすべきか分からないのままこんなに沢山喋るなんて、自分が自分じゃないようだ
傷つけたかもしれない、間違えたかもしれない

不安に襲われたまま、おそるおそる顔をあげる
キョロちゃんは目にいっぱい涙をためたまま、めいっぱい笑ってくれた

手を繋ぎ、一緒にゆっくり学校へ向かう

「僕ら、投げ出したり諦めたりしなかったらさ」
「きっといつかは愛されたりとか、素敵な人になれるよね」
「全部辞めちゃったらきっと悲しいもんね」
キョロちゃんは優しい眼差しでそう呟いた

私は気の効いた返事も出来ずに、ただ微笑み返した

朝のような優しい色の草花で溢れた、海の綺麗な私達の島

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